2回目 確かめる
私は部屋に1人残され、無意識に部屋に置かれた大鏡に目を向ける。
先程まで使用人の服を着ていたはずなのに、今は儀式用のワンピースを着ている。
ーー違う!そういう事じゃなくて!
私は首を振り、落ち着くようにゆっくり呼吸を繰り返す。
これは今朝と同じ状況だわ。
私の最後の記憶は夜。
何が起きたの?
鏡に映る私はいつもと変わらない。誰かのスキルで操られた? 鏡の黒色の瞳と目を合わせるが、自分自身で操られているなんて分かるわけない。
それから身体をざっと見て傷や拘束された跡もないと確認する。
薬を盛られたのだろうか。でも気分は悪くない。
その時、扉がノックされて、ドーリスが顔を覗かせる。やはり聖女様を伴っていた。
私は呼吸が浅くなっているのに気づき、一度大きく息を吸った。
ドーリスは後ろに控えた聖女様の何かが気にかかるのか、表情が曇っている。
「聖女様、本当に大丈夫なのですか?」
ーーあ、やっぱり悪い夢だったのかもしれない。ドーリス様の言葉も表情も全く違うわ。私ときたら大袈裟に考えすぎたみたい…
「ユーリ、こちらは初めて会うと思うが聖女様だ。」
ドーリスは聖女様を室内に促す。
私の記憶の中の聖女様は、初めて会った時に軽く会釈したが、目の前の聖女様は無表情で目線もこちらに向けず、もちろん会釈もない。
ーーやはり違う?
「聖女様、はじめまして。ユーリです」
私の知っている聖女様ではないし、はじめましてと挨拶をする。
聖女様は無反応だった。私をチラリとも見なかった。普通に考えても態度がおかしい。
ドーリスが意を決したように1つ息を吐く。
「聖女様はつい先程から急に口を利けなくなったのだ。大神官様は、聖女様のスキルが発動したのは確かだが、自身も決して他言してはならない種のスキルだろうと仰っていた」
ーーもしかして聖女様のスキル?
「ドーリス様、私は今から何をすればよろしいでしょうか」
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魔王城にこれから向かうとドーリスが説明し始めても、聖女様の態度は変わらなかった。
ーー聖女様のスキルは決して知られてはならないものなのだわ。視線や仕草さえ制限があるのかもしれない。
私も聖女様には視線を向けず、思考する。
ーーやはり、時間が戻ったと考えるのがしっくりくる。だとしたら、私が知っている事も決して話してはならないだろう。
1つだけ、今確認しておかなければ。
ドーリスは話を終え、聖女様のお手伝いをするように、と部屋を出ようとした。
「ドーリス様、ユイ様と筆談するための紙とペンをお借りできますか?」
私は記憶にある聖女様の名前を口にする。
「ああ、忘れてた。今持って来させる。それよりユーリは聖女様のお名前を知っていたのだな」
「はい、私も使用人仲間もみな、聖女様の治療院での献身を聞いておりますから。」
ドーリスは満足げに頷きながら、部屋を後にした。
ーーやはり記憶の中の出来事は本当にあった事だ。
それがわかって聖女様に目を向けたが、彼女は変わらず無表情で視線を合わさない。
「お名前を無断で呼んでしまい申し訳ありませんでした」
私が謝罪をすると、彼女は相変わらず視線も向けないが、少しだけ口の端が上がった気がした。




