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そして、戻る


大広間に足を踏み入れてすぐに、儀式を始めるので賢者様の前に立つように、とドーリス様に指示された。

大広間には大神官様ほか、役職のある神官様と見た事のない少年達がいた。少年達は帯刀しているので、勇者様たちだろう。


勇者様たちの前には儀式用の服を着た少女たちがそれぞれ立っていて、これから始めるというより、儀式の途中のように整列した状態だ。



儀式用の服を着用はしていたが、参加するとは考えもしなかった。そもそも大聖堂もスキルを調べた時以来、足を踏み入れた事すらない。


混乱して固まった私の背中に聖女様がそっと手を触れる。


彼女から言葉はなかったが、大丈夫、と言われたようで、ようやく足を踏み出せた。



聖女様は黒いローブの少年の横に並び、私に教えるように小さく彼を指差した。彼が賢者様なのだろう。


私は彼女に促されるまま、少年の前に立ち頭を軽く下げる。

彼は不機嫌そうな顔で、視線は床に向けたままだ。



儀式は出立の儀と言っていたので彼らを送り出す為の儀式なのだろう。


私は何も分からないまま、大神官様の言葉に耳を傾け、勇者様たちの決意の言葉を聞く。



最後に、と神官様が先程作り終えたハチマキを私達に配り、前に立つ出立者の頭に巻きなさいと告げた。


ーーあれは頭に巻くものだったのね…てっきり腕や足に巻きつけるのかと思っていたわ。私が賢者様に触れて大丈夫かしら。ずっと怒っているようだし



私はどうしようかと逡巡していると、前から手が伸びてきて、ハチマキを奪われた。



「時間を遅れて謝罪もない。これも無駄話しながら作ったモノだろ。これから死にに行く人間だからそんな態度か」




彼は自分でハチマキを巻きながら、私にしか聞こえないくらいの声量で抑揚なく言い、無表情のままこちらに視線も向けなかった。


私は悪意しかない言葉に、一瞬息が止まる。


悪意を向けられている、と思うと次に何を言われるのか怖くなり、私は訂正もせず俯いたまま、儀式は終了した。



大神官様たちは勇者様たちと転移の門に向かうので、私は家に戻るよう言われ、彼らが歩いている姿を見たのはこれが最後となった。





****


私は使用人の居住地に戻りながら、唇を噛む



ーー私はバカだ!! 絶対にまた会える人なんていないのに! お父さんもお母さんも弟も、笑って家を出て帰って来なかったじゃない! どうして彼に誤解だとも言わなかったの!




次に会えたら謝罪しようと、先延ばしして彼にあんな言葉を言わせたまま送り出してしまった。これから命を賭けて戦う人に言葉も贈らなかった。




それから私は自己嫌悪に苛まれたまま1日を過ごした。


夕食を終えた頃に外が騒がしくなり、外の様子を見に行った者達に聞くと、勇者様達が戻られたようだと口々に言うが、喜んでいる様子ではない。


彼らは魔王から命からがら逃げてきたようだ、魔王にやられた、魔王が報復にくる、と時間が経つにつれ情報が増えてゆく。



勇者様たちは命に関わる傷なので、王都の治療院に転送した、と人づてに聞いた私はーーーー





ーーーーーーー 「ここで待つように」


ハッと気づくとハチマキを作った小部屋に立っていた。





読んでいただいた方、ありがとうございます。

長くても15話程度で終わると思います。


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