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帰還


彼らが出発したあとは、私は侍女達にからかわれながら大広間を後にした。


大聖堂を出ようとして、ドーリス様に引き止められた。


「先程は泣いてしまい申し訳ありませんでした」


ドーリス様は再会して号泣していた2人に拭くものや飲み物を用意してくれた。


「詳しい事情は全て終えたら聞きます。私が呼び止めたのは、聖女様より伝言を預かりましたので。」

「聖女様から?」

「何もしないで、とだけ仰っていました」

「何もしないで、ですか?…分かりました」




*****


ーー何もしなくて大丈夫かしら。もう聖女様のスキルの縛りはないのだから、皆さんに伝えるべきでは?



私は一抹の不安を抱えながら、洗濯場に行こうとすると、籠を持ったイリスとちょうど出くわした。


「ユーリ、侍女長様から伝言よ。今日は部屋で待機してください、だって。何をやらかしたのよ」


「何もしていないけれど…分かったわ。」




ーー急に待機なんて…これも聖女様の指示なのかしら



私は不思議に思いつつも自室に戻り、部屋の掃除をして過ごした。



ーー何もしないで、なんて聖女様らしくない言葉に思えるけれど、本当にただ待つだけでいいの?






*****




ーーやっぱりシュンヤ様の無事を確認するまでは安心できない


私はこっそりと外に出て転移門に向かう。

もしも、の時に備えて。まだ何も終わっていないから。



前よりも早くに到着し、私はひと心地つき、 出立間際のシュンヤ様とのやり取りを思い出す



大聖堂を出る時に、いつもは背中を向けたままの聖女様が振り向いて小さく手を振った。


手を振り返していると、シュンヤ様も振り向いた。

彼にも手を振ってよいのか迷い、動きを止めてしまう。



彼は、また声を出さず口だけ動かした。



マ ッ テ テ



多分、そう言ったのだと思う。違っていても構わない。



私は、嬉しくて、気持ちをそのまま笑顔にして返事のかわりにした。





言葉のやり取りはなかった。でも気持ちは通じた。私はやり取りを思い出して、また1人で笑みを浮かべた。







****




「……これより……転送……神殿に…」



ーーあ、神官長の声。転送ってどこかで…



どこで聞いたのか思い出そうとして、急速に覚醒した。待っている間に眠ってしまったようだ。


ーーこれは、シュンヤ様達が戻ってきた時の言葉!まずい!また繰り返している!



私は慌てて神殿に戻ろうとする神官達を止めるために立ち上がる。


その時、「ダメですよ。邪魔をしては」


背後から聞き覚えのある声、と同時にハンカチで口を押さえられ、身体も岩に押さえつけられた。


必死に後ろを振り返ろうと力を入れるが、全く身動きが取れず、私は声の主が誰かを必死に思い出す。


「ドーリスですよ。ユーリさん」


小声で囁かれ、私は肩が跳ねる。


ーーまさかドーリス様も神官長の……!


「自宅待機、と言ったのにこんな所まで来て。」




私は信じられない思いで、唸る事しか出来ない。




ーーどうしてっ!!



私を押さえつける力は、前にシュンヤ様にされた魔術に似ていた。身動きが全く取れない。



岩の向こうでは、装備を外す音が聞こえてきた。


ーーーーダメだ!もうエギが来る!!



私は目をギュッと閉じる。




「なんだ、この茶番は」



エギの呆れたような声が響く。


ーーえ?


「エギどうした。早く処分しろ」


神官長の訝しげな声。


「俺は、弱ってる人間しか焼かない」


「何を言っている」


「こいつらピンピンしてるぞ。クソ、くだらない真似しやがって」


ーーえ?え?


「あれ。すぐバレた。火ぃつけられたら返り討ちにするつもりだったのに」


ーーあ、この声!!


「シュンは調子に乗りすぎ!」


ーー聖女様!!


「ドーリスさん、もういいですよ。」


聖女様の声がして、ドーリス様は私の拘束を解いた。


私は意味がわからなくてまだ動けない。


「申し訳ありません。少し悪人役に浸りすぎました」


ドーリス様は肩をすくめる。


「悪人役?…ではドーリス様は神官長様の味方なのではないのですか?」


「あっさり敵だと思われたのは残念です」


「そっ、そういう訳では!」


私はようやくこれが作戦だった、と気づいた。


「怖がらせてしまいましたね」


ドーリス様は私の頭を撫でようと手を伸ばし…

後ろから出てきた腕に止められた。




「俺の彼女だから、気安く触るな」


ハッと顔を上げると、言葉の強さと裏腹に、少し照れたように顔を背けた彼がいた。


「シュンヤ様!」



「ただいまユーリ」


彼が両腕を広げる。私はそのまま飛び込もうとしてーー止められた。



「ハイハイ。まだやることがあるのでハグは帰ってからお願いします」









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