私の気持ち
「どうして今回は聖女様が4人分のハチマキで私が賢者様だけなのですか?」
「ん?さすがに3回もやってたら覚えるし、いつもユーリちゃんにさせたら悪いじゃない」
それに…とまたあのからかいの目を向ける
「もう、その他大勢の男じゃなくて、俺だけのためにっていうのがポイントよ!」
「そういうものですか」
また知らない言葉が混ざっているが、賢者様だけに作れば良いという意味だろう。
「あとは…」
聖女様は紙に文字のようなものを書いた。
頭文字とは違う種類の文字に見える。
「なんと書いてあるのですか?」
「これはねー、日本語で好意を伝える言葉。これをハチマキに縫ってもらいます。」
「え!? 好意? まっ…まだそれは早いです!」
私は手をブンブン振り、拒否する。
そのまま聖女様を責めるように見ると、彼女は思いのほか、真剣な表情をしていた。
「私さぁ、ずっと見てたの。最後の日のあなた達のやり取り」
聖女様は顔を歪ませる。最後の日は死が伴う。思い出すのは本当は苦痛なのだろう。
「あれを見て私は、素直にならないと後悔するって思ったの。死ぬ間際に。おかしいでしょ」
「おかしくないですっ!私もいっぱい後悔しました!」
「だから、伝えたいでしょう?」
聖女様は首を傾け、私の顔を覗き込む
「待っててもあのへたれは動かないのよ。ユーリちゃんの気持ちを知れば、重ーい愛が返ってくるよきっと。」
「…最後は、確かに通じ合えた気もしましたが、その…それまでは嫌われてたようでしたから…」
段々と言葉の語尾が小さくなってしまったが、思っている事は言えた。
「それはない」
聖女様はキッパリ言い切る。
「あのへたれはユーリちゃんのストーカーだから」
「す…すとーか?」
「優しい言葉で言うとユーリちゃんを好きすぎる人かな。」
「あ、あの、そこまで想われる理由が思い当たらないのですが」
「本当は本人の口から言うべきだろうなぁ…」
聖女様は腕を組んでうーんと悩んでいる様子。
しばらく考えて、まあいいか、と話し始めた。
「ユーリちゃんの見た目、日本人ぽいでしょ?だからシュンは最初、私達と同じように飛ばされて来たのかもって、様子を見てたの。」
「そうなのですか!?でも1度もお見かけしませんでしたが」
「あれは変なとこに頭を使うのよ。見つからない配置でね、近くにいたの。気持ち悪いでしょ?」
聖女様は思いきり苦い顔をする。
「気持ち悪くはありませんが…見られていたなら恥ずかしいですね」
「すーぐに好きになったのバレバレなのに、アレは素直じゃないから調べてるだけだって言い張ってたのよ。馬鹿よね」
「す…好き…だと賢者様が仰っている訳ではないのなら違うのでは?」
聖女様は目を細め、またうんうんと頷いている。
「それならユーリちゃんは、シュンに気持ちを伝えないのね。じゃあこれもいらないか」
聖女様は好意の言葉を書いたという紙をしまおうと手を伸ばした。
私は思わず紙の上に手を置く。
聖女様はその様子を見て、優しげな表情をした。
「アレは今から魔王と戦うから、きっと気持ちを伝えないと思う。だから、ユーリちゃんから伝えてもらえると嬉しいな」
「迷惑じゃないでしょうか」
「ユーリちゃんと両想いだとわかれば、魔王にも勝てるくらい力がでるはずよ」
聖女様は腕を曲げて力こぶをつくる。
そしておしゃべりし過ぎて間に合わないかも、と慌ててハチマキを縫い始めた。
*****
ハチマキが出来上がり、聖女様が姿勢を正し私を呼んだ。顔を上げると真剣な眼差しを向けられていた。
「…これが最後になるから」
彼女は立ち上がり、ドアノブに手をかける
「ユーリ」
彼女が私を呼ぶ。
「私たち、日本では何の力もない、ただの高校生なの。力だけ得ても変わらない。だから、友人として送り出してくれないかな。」
ーー友人… どう言えば良いのだろう。
私はイリヤを思い浮かべる。彼女は私を気にかけて言葉をかけてくれる。
「ゆい」
私は初めて聖女様の名を敬称を抜いて呼ぶ。
「ゆい、いってらっしゃい。がんばってね」
私はこれでいいのかな、と少し不安な顔になったかもしれない。でも彼女は嬉しそうに微笑み、
「頑張ってくるからね。行ってきます!」
と、勢いよく扉を開けた。




