4回目の今日は明るい
戻ってきた…本当に…!
私はその場に座り込み、冷たい剣の感触を思い出して思わず首に手をやる。
「怖かった…」
鏡を見ると、涙の跡はない。
そっと目尻に触れる。湿り気もなく、乾いた肌に指を滑らせると、あんなに泣いたのが嘘のように思える。
ーー泣きの1回って……そういう事なのね。泣いて泣いて懇願しないと発動しないのだわ。
スキルの発動した瞬間を思い出し苦笑していると、扉の向こうで声が聞こえてきた。
…そうだわ。今からドーリス様と聖女様がーー
と考えていると、バンッと勢いよく扉が開き、聖女様が私の胸に飛び込んできた。
「ユーリちゃん!!マジ神!!」
「聖女様…!」
聖女様の言う、まじかみ、の意味は分からないが、涙が溢れて視界が歪んだ。 本当ならもう会えなかった。
揃って号泣してしまい、ドーリス様が「事情は分かりませんが良かったですね」と優しく笑っている顔を見て、また涙がこみ上げた。
聖女様が戻ったからといって、喜んでばかりではいられない。
まず私は彼らが死んだ後の話を伝える。
彼女は、次の勇者の話をしても驚くこともなく、黙って最後まで耳を傾けていた。
私が話し終えると、彼女は小さく何度か頷いて、「わかった。もう大丈夫」と、独り言のようにつぶやき、最後にもう1度大きく頷いた。
「それより!」と彼女は手をパンッと叩き
「恒例のアレ、始めます!」
と聖女様は、裁縫道具を広げ始めた。
「あのスキルのせいでずっと話せないし、態度悪くてごめんね」
聖女様はテキパキと道具を出しながら謝る。
私はそんな彼女を見て、最初の日に表情豊かに話をしてくれた姿を思い出し、また嬉しくて涙が溢れてしまう。
少ししんみりとした空気になったところで、聖女様に聞こうと思っていた事を思い出した。
「ずっと不思議だったのですが、聖女様だけ制限が厳しくありませんでしたか?私は普通に過ごせていたので…」
「うん。そういうスキルだった。過去を変えるって、普通ならできない事だから私は手出ししないって約束。」
「…それは、あまりにも不利な条件ではないですか?」
「不利かなぁ。誰か知っていれば未来は変わるから。現にユーリちゃんマジ神だったし」
「まじかみ、は分かりませんが…勇者様達もご存知だったのですよね?」
私は勇者様付きの侍女の話を、聖女様に説明する。
「シュンは知ってたけど…アイツのは野生の勘じゃないかな。」
ーーシュンはシュンヤ様…で、アイツ、は勇者様でしょうか…
「賢者様はご存知だったのですね」
私の言葉に、聖女様が急に表情を引き締めた。
「…あの時、誰か2人を戻せるのは分かってた。私がシュンとユーリちゃんを選んだの」
聖女様は、ゴメンね黙ってて、と悲しげに微笑んだ。
「そっ…そのおかげで聖女様にまた会えたのですから!」
聖女様はフッと息を吐き、気持ちを切り替えるように少し目を閉じた。
次に目を開いた時は、見覚えのあるあの目、
イリヤ達にからかわれる時に見る目になっていた。
「それより! あなた達じれったすぎ!!」
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「シュンはヘタレ過ぎで笑っちゃって!」
聖女様はハチマキを縫いながら笑う。
私は今回は賢者様のハチマキだけでいい、と言われチクチクと縫っている。
「へたれ、とは?」
「弱腰?臆病って感じかな。」
「そんな風には見えませんが…」
私は賢者様との交流を思い浮かべる。いつも憮然としていて、でも実は思いやりがあって…
「分かってないな〜」
彼女は大袈裟に手を広げた。
「自信がないから受け身なだけ。せっかくユーリちゃんが脈ありなのに、あれじゃあダメダメ」
「みゃ…脈ありってそんな…」
「いいのいいの。分かってるから」
聖女様は満面の笑みでウンウンと頷き、
「あのヘタレは何とかしないとね」と呟いた。




