きゃりぱーよぷよぷ
日本人にして現代の冒険家サトーは数々の苦難を乗り越え、秘境という秘境を踏破した。
霊峰を知り、ジャングルを知り、果ては潜水艇による水深500m近くの海溝の洞窟探検や、火山口に住むといわれた伝説の部族「カルマパット族」との接触にも成功するなど、冒険家としての彼の功績は大きい。
そしてある日、ついに彼はサハラ砂漠に埋もれて風化していた自然洞窟の奥底から、長く"あるはずもない"と言われた伝説の物体を持ち帰るに至る。それは多くの文献に散見され、理論的には存在すると言われながら、長くその存在を確認できなかったものだ。
名を、きゃりぱーよぷよぷという。
直径にして50センチほどの塊である。表面は柔らかく弾力性があり一見ゴムのようだが、ゴムというには軽すぎるし、そもそもざらざらしている表面のわりに、顔が映るほどに光沢がある。なお、同じ名前の方向性の日本の某アーティストがいるが、この造語自体は15年以上前からあるものなので、パクリではない。
強度は高く、ナイフなどでは傷もつかない。色はエメラルドにちかい緑だが、宝石のような透明感はない。そして形状はわかりやすく言えば、巨大なマーブルチョコのようであった。
サトーがそれを持ち帰ったとき世界はもちろん半信半疑だったが、その道のどの専門家が検分しても、これが伝説のきゃりぱーよぷよぷであることは間違いないという。
数ヵ月後、ついに学会はそれを認め、大々的に喧伝した。少し滑稽だがそれが"ホンモノ"であることを認定されると、とたんに彼の元には連日メディアが押し寄せ、科学誌のトップページには彼の顔写真が並び出した。国民栄誉賞をはじめ数々の場所でさまざまな表彰をされ、ついでに彼が発した言葉「これが伝説だ」はその年の日本の流行語大賞に輝き、多くの人が功績を称え一躍時の人になっている。
なにせ「もし見つかることがあれば人類が鉄を見つけて以来の大発見だ」とまで言われた代物である。まさに"伝説"という名にふさわしい、このきゃりぱーよぷよぷを手に入れることができたことは地球にとっての財産であり、サトーにとって冒険家冥利に尽きるものであっただろう。
しかしサトーにはひとつ疑問がある。
(使い方がわからない……)
専門家の誰も、それを教えてくれなかった。というか、答えられなかった。
今まで連綿とつづられてきた古文書や文献の数々にも具体的な使用法が書いてあるわけではないのだ。いわく、"神の所有物"。いわく、"世界の摂理を詰め込んだもの"。いわく、"地球上のすべての知識と生命と文化が凝縮されている"。
……古代文字から現代でも読める文字まで、そのような仰々しい表現が踊ってはいるが、具体的には何も記されていない。
というか、いわく通りの大それたなにかがこのマーブルチョコから発掘できるのなら、サトーの手に戻ることはなかっただろうし、場合によっては殺され奪われていたかもしれない。
なににせよ、地球の誰も使い方がわからない。
……仕方がないので伝説のアイテム、きゃりぱーよぷよぷは今、サトーの枕に使われている。




