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今はもういないリコを探し求めている。つながったと感じた瞬間に剥がされたのは、心のかさぶただろうか?それはきっと絆創膏でも、止められないほどの出血で。
高級そうなガラステーブルをドン、と叩いた。拳に爪が食い込むぐらい握りしめ、指先が白くなっていた。
なぜか笑いが込み上げる。俺は自分の馬鹿さ加減を笑ったんだ。…今となれば、どうして信じてしまったのかわからないが。一人ではもて余すほどの空間に、笑い声だけがこだました。
ひとしきり自分を笑ったあと、ふと顔をあげると…テーブルに一枚のメモが残されていた。俺は光よりも早く、それを掴み、目の前に広げた。
【唯人さんへ
臆病なあたしを許してください。
すべてを終わらせた時、もう一度会えたら…きっと
ごめんね。ありがとう。】
泣いた。声を殺して。ポロポロとこぼれ落ちる涙など、気にも止めずに泣いた。
もう二度と会えない今生の別れの予感を感じさせる。
リコ。名を呼べばまだ心のどこかに温もりはあって…なのに…もう…いない。そう、いないんだ。
一体…どうすれば、お前にもう一度会えるんだろう…。ウオッチマンもさすがに警戒はしているだろうし、いつもあそこにいるとは限らない。…他にリコとコンタクトを取れそうな人物は?
…一人だけしか、いない。