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正体を隠して魔法の添削をしていたら、敵国の宮廷魔術師を育てていた

作者:てへろっぱ
最新エピソード掲載日:2026/10/08
国境町で修理屋を営むオルヴェン・ラグには、六年間、一度も顔を見たことのない弟子がいる。

古い魔導具《分かち帳》の向こうにいる相手。

名前も住所も知らない彼女を、オルヴェンは「すずめ」と呼んでいた。

灯火ひとつ満足に扱えなかったすずめの魔法陣へ赤を入れ、失敗の原因を教え、ときには叱りながら六年。

やがて彼女から、念願の職に就いたという報告が届く。

オルヴェンも素直に喜んだ。

――就職先を読むまでは。

『ヴァルゼン帝国、宮廷魔術院です。第三席を拝命しました』

「……先に言えよ」

オルヴェンの暮らすラーディス王国と、ヴァルゼン帝国は敵対国だった。

しかも国では、敵国への術式や魔導技術の流出が禁じられている。

知らなかったとはいえ、六年間も敵国の魔術師を育ててしまった。

さらに悪いことに、すずめが着任早々任された水防結界は、国境を流れる川に設置されるという。

その設計図には、オルヴェン自身が添削した術式が使われていた。

そして施工上の変更によって結界が暴走。

敵国側だけでなく、オルヴェンの町まで水害に巻き込まれてしまう。

顔も知らない師匠と弟子。

川を挟んだ敵国同士。

それでも二人は一冊の帳面を通じて協力し、両国の人々を救う。

事件のあと、オルヴェンは初めて知る。

弟子「すずめ」の本名は、イェスカ・ローディン。

二十三歳にして二百人を救い、帝国宮廷魔術院第三席へ抜擢された天才結界術師だった。

そして翌日。

六年間一度も会ったことのない弟子本人が、国境を越えて師匠に会いに来る。

彼女が持ってくるのは、帝国宮廷の禁庫から見つかった二十七年前の術式。

そこには、オルヴェンしか知らないはずの修正法と――彼の父と同じ「ラグ」という署名が残されていた。

敵国の天才宮廷魔術師を育ててしまった町の修理屋と、師匠の正体を知らずに育った弟子。

一冊の帳面から始まる、魔法技術と国境を巡る師弟ファンタジー。
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