第7話 俺が恋愛不感症になったわけ。(7)
夏美の後ろにいたのはキラキラグループのメンバーの1人、須藤玲央だった。
今年1年、俺は須藤と同じクラスだったんだけど、バスケ部で高身長のイケメンで、オラオラ&イケイケ&ズケズケな性格が、オタクゲーマーな俺とはあまりにも合わなさ過ぎて、まともに話したことはなかった。
言うまでもないが、女子からかなりモテる。
本人いわく、モデル事務所のオーディションの3次選考まで行ったことがあるんだとかなんとか。
「あ、ううん。同じクラスのシュウ……加賀見くん」
修斗くんと言いかけたのだろう、夏美は慌てて加賀見くんと言い直した。
「なんだ加賀見かよ。悪いけど俺らデート中なんだ。またな」
言いながら須藤がまるで彼女にやるみたいに、夏美の肩にポンと気安く手を置いた。
「デートじゃないからね。須藤くんがどうしてもって言うから、買い物に付き添ってあげただけだからね」
夏美はそう言って須藤の手をペシンと軽く叩いて振り払ったのだが、
「おいおい照れてんのかよ。可愛いヤツだな。嫌いじゃないぜ」
須藤は意にも介さず、もう一回夏美の肩に手を置こうとして、夏美にまたペシンと手を振り払われる。
そんな2人のじゃれ合うようなやり取りを見て――夏美にそんなつもりはなかったのだろうが――俺は胸にドロドロとした言いようのない不快感が芽生えていた。
端的に言うとイラっとした。
……そもそも隠すからこうなるんだろ?
もういい加減、付き合ってるって言ってもいいんじゃないか?
そうしたら夏美が須藤の買い物に付き合わされることもないし、気安く肩に手を置かれることもない。
須藤だってそれくらいの分別はあるはずだ。
なにより学校で夏美と堂々と話せるようになる。
なんだ、いいことづくめじゃないか。
後から思えば、この時の俺はカッとなってしまっていた。
夏美の肩にずけずけと無遠慮に手を置いた須藤に対して、強い苛立ちを覚えていた。
自分でも信じられないくらいに、攻撃的な思考に陥っていた。
それは独占欲――いや嫉妬心だったのかもしれない。
筋トレを3カ月も毎日続けたことで、強くなった気がしていたのもあったと思う。
ともあれ。
俺は胸の中の黒い衝動に突き動かされるようにして、口を開いた。
「悪いけど、俺と夏美は付き合ってるから、そういうのはやめて欲しいんだ。夏美は俺の彼女だからさ」
――言った。
言ってしまった。
夏美と交わした隠れ恋愛のルールを破って、付き合っていることをクラスメイトに言ってしまった。
それでも俺は夏美の彼氏として、どうしても黙っていられなかったのだ。
言ってやったという満足感すら覚えていた。
須藤一人にではなくこの世界に、俺と夏美が付き合っていることを明らかにしたっていう晴れ晴れとした気分だった。
――なのに。
ここから俺の初恋が、最悪の破局へとゴロゴロと坂道を転がり落ちていくなんて。
この時の俺は、これっぽっちも想像していなかったのだ。




