第十一章
前回、河勝の友人、八雲と話した結果。
八雲に河勝の正体を知っていると結果的に知られることとなった藤若ですが。
そんな彼の元に、河勝から……。
第十一章
八雲さんと出会った、翌日の火曜日の夕方。
僕は家で、シャーリー・テンプルを作って飲みながら、夕飯のために鶏挽肉のラグーを使ったパスタと、キャベツとあさりのアンチョビ炒めを作っていた。
そして、気に入っているプログレッシブ・ロックの曲を鼻歌で歌たいながら、螺旋状のショートパスタを茹でていると、スマホに着信があった。
僕は何気なくそれの送信者を見る。
するとそれは河勝さんからのメールだった。
一体、何だろうか。僕は多少不安になりながらそのメールを読んでみることにした。
するとそこにはこういったことが書かれていた。
☆ ☆ ☆
こんばんは、藤若君。河勝です。
昨日は友人の編美が面倒見てもらったみたいですね。どうもありがとう。
で、今日、編美から藤若君に私の正体のことを話してしまったと言うことや、藤若がそれに対して驚かずに編美の言うことに応えたという話を聞きました。
編美は悪気があってばらしたわけではないし、ちゃんと謝ってきたので普通に許したから、彼女のことは心配しないでください。
それと、藤若君が今まで私の正体を知っていて黙っていたこともあまり責めたりはしないつもりです。
私の方も藤若君を試すようなことをしていたし、あの保健室での出来事以来、同じクラスになるまで藤若君の様子を探ったりしていたので、人のことを言えないからです。
勿論、藤若君に私のことを責めるなとは言いませんが、できれば藤若君が黙っていた件を私が許すということを考慮してあまり責めないでもらいたいと思っています。
で、今回メールを送ったのは、別に正体がばれたことをあれこれ言うためではありません。
藤若君、あなたが仮に今度、明石さんか私かで私の方を選ぶとして。
それは私が好きだからなのか、それとも私のラミア属としての属性が好きなのか、それが気になったからです。
藤若君がソキウスの中で特にラミア属が好きだという話は知っています。
なので、もしかしたらそれを理由に選ぶのではないかと心配になったのです。
また、同時に、私と明石さんどちらを選ぶにしても、藤若君が好きなのはその相手なのか、それともソキウスという属性なのかというのも気になっています。
私の場合、今まソキウスである特徴はほとんど出さなかったつもりなので、藤若君が私のことを気に入ってくれているならそれはソキウスとしての特徴ではなく、私自身に対してなのかもしれませんが。
一方、最初に私がお茶に誘ったとき、ついてきたのは私がソキウスだったからではないかとも、考えられるので、私としてはちょっと迷っています。
私がソキウスである正体を隠しているのは、多くのソキウスがそうであるように、偏見を持たれる可能性を考慮してのことなのですが、その偏見には良い方向でのものも含まれています。
そういう考えで正体を隠しているようなところもあるので、私はソキウスであることを理由に好かれたりするのもあまり快くは思えません。
明石さんについては知りませんが、私個人の意見としては例え本人が気にしなくても、ソキウスであることを理由に付き合うのはやっぱり問題だと思います。
と、いうわけで藤若君。
明後日はその辺りを考慮した上で、二人のうちどちらかを選んでください。よろしくお願いします。
☆ ☆ ☆
……女子のメールというものはもっと顔文字や絵文字が多いものだと思っていたが、流石に話す内容が真面目だからか、それとも河勝さんが長文でメールを書くとこうなるのか。
なんか、中々に堅い文章だ。
なんて、メールの文体について気にしている場合ではない。
河勝さんは僕がソキウス好きだから河勝さんや明石さんに惚れている可能性があるのではないかと考えていたのか。
なるほど。
確かに河勝さんとのデートはソキウスの要素がほとんど無くても楽しかったし、明石さんとのデートもおそらくそういった要素抜きにしても面白かったのだが。
もしかしたら、僕の心の中には彼女たちが自分の好きなソキウスであるということで好意を抱いている部分があったからデートも楽しく感じていたのかもしれない。
そもそも二人が普通のヒトの女子なら僕はデートに誘われても応じなかった可能性が高いわけで。そうなるとやっぱり彼女たちを選んだのはソキウスだからになるな。
すると……やっぱり問題があるのかもしれない。
これ、やっぱり普通のヒトで例えるなら「顔が好み」とか「スタイルが良かった」みたいな理由で好かれるのに似ているわけで。
そんな理由で好かれても実際あまりいい気持ちはしないのだろう。
さて、どうするか。
なんて考えているとキッチンタイマーがパスタの茹で上がりを告げた。
まあ、とりあえず、今は夕飯の準備か。
僕はそう考えて、パスタをラグーと絡めて、それを皿に盛りつける。
だが、僕の迷いが盛りつけに影響したのか。盛られた料理は何かいまいち見た目が良くなかったのだった。
さて。藤若は。
彼女達の正体を知っているから好きなのか。
それとも彼女達自身が好きなのか……果たして。




