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ヒトではない彼女を  作者: 窓井来足
第十章
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第十章 その1

さて、明石さんとのデートの後。

まだ河勝さんとどちらを選ぶか決めていなかった彩は。


学校にある自販機の前で、とある女子生徒を見つけるのですが……。

 【第十章 その1】


 さて、デートの翌日の放課後。

 部活動をしていた僕が、休憩を取るために自販機の設置されている玄関付近に来たときのこと。

 そこに酔っ払いがいた。

 その酔っ払いは、うちの学生服を着たかなり童顔の女子である。

 ぱっと見だと年下っぽかったが、履いている上履きの色から彼女が僕と同学年であると判断できる。

 さて、この酔っ払いどうするか。

 最初、僕は普通に飲酒しているのかと思ったが、普通に考えて仮に不良であっても校内のこんな目立つ場所で酒は飲まないだろうし、まして彼女の見た目は非常に大人しそうな感じである。

 流石に自ら進んで酒を飲んだりはしないだろう。

 そうすると、これは何か酔っているように見えるぐらいに具合が悪いと言うことなのかもしれない。

 そう推測した僕は、彼女のところに駆け寄る。


「君、大丈夫?」

「大丈夫ですー。問題ないですよー」


 そう言う女子だが、どう見ても大丈夫ではなさそうだ。今にも倒れそうだし。

 とりあえず保健室……いや、仮に彼女が何らかの理由で酒を飲んでいたとしたら、彼女に悪気があった訳でなくとも、問題になるかもしれない。

 すると保健室はまずいか……。

 なんて思いながら、僕は彼女に肩を貸す。

 少し前の僕なら女子と触れるなんて緊張してできなかっただろうが、明石(あかし)さんが何度も抱きついたり巻き付いたり吸い付いたりしてきた影響で、もうあまり抵抗がなくなっていたため、特に迷わず肩を貸すことができたのだ。

 そして、その際に気がついたのだが。

 彼女は別に酒臭くはない。つまり飲酒をしたわけではないということだ。

 しかし、具合が悪いのは間違いなさそうだ。やっぱり保健室に……。


「あ、あのぉ……保健室は駄目ですー」


 僕が保健室の方に歩こうとしているのに気がついた女子はそう言ってきた。やっぱり何かわけがあるらしい。

 仕方がない。ならば。


「じゃあ、僕が部室として使っている生物室に行くけど、それでいい?」


 僕はとりあえずそう訊ねる。


「生物室……はい、構いませんけど」

「けど?」

「他の部員さんがいると、迷惑かなって」

「ああ、今日は僕一人だから大丈夫」


 (こう)のヤツは今日は例の彼女と会いに行っているので、部室にはいない。

 まあ、いつもお茶や珈琲を淹れてくれる香がいないから、僕はこうして自販機に来たというのもあったりするのだが、それはともかく。

 僕の言葉を聞いた女子生徒は、


「一人……なんですか?」


 と訊ねてきた。


「え? あ、いやまあ……」


 ああ。そうか。見ず知らずの男と二人っきりってのはそれはそれでまずいのか。それは困ったな。

 こうなると、誰か知り合いの女子、河勝(かがち)さんか明石さんを呼んでこの生徒の面倒を見てもらう方が――。

 などと考えながら僕が応援を呼ぶためにスマホを取り出そうとしていると、女子生徒は、


「なら、大丈夫です。藤若(ふじわか)君なら信用できますから」


 と言ってきた。

 そうか、この女子生徒は僕なら信用できるのか。

 って、ん?


「何で僕のこと知っているの?」


 まだ名乗ってもいないのに僕の名前を知っていたこと、そして会ったこともないのに信用できると判断したことに疑問を持つ僕。そんな僕に、女子生徒は。


「あなたのことは(りん)ちゃんから聞いているし……信用できるかなって」


 と説明してきた。


「隣ちゃん? ……ああ、河勝さんか……ん? ってことは。もしかして、河勝さんのよく会いに行っていた友達って」

「はい、多分私のことだと思います」


 なるほど。この生徒が河勝さんの友達か。ならば僕のことを知っているのもわかる。

 しかし、河勝さんの友達ね……ん? そういえば。

 以前、河勝さんと喫茶店に行ったとき、珈琲(こーひー)で酔うソキウスの話題をしたことがあったな。そのとき、その話を河勝さんも知っていたけど……あ、まさか。


「ええと……もしかして、君ってソキウスだったりするの?」

「え、まあ……」


 周囲に人気(ひとけ)のないことを確認してから、そう返事をする女子生徒。

 なるほど、だから保健室はまずいのか。


 流石に「珈琲で酔った」と言っても普通の人は信用しないだろうし、それが分かる人がいたら逆に正体がばれてしまうわけだし。

 いや、そうなると、その前に。


「もしかして、ここで話している場合じゃなかったりする?」

「え、あ、はい……できれば早めに生物室に行きたいです」


 そうだよな。風邪を引いた河勝さんが正体をうっかり明かしてしまったように、体調が悪ければヒトへの擬態が解ける可能性があるわけで。

 そうすると人の目につかないところに早く行った方が良いのだろう。


「わかった、じゃあすぐに行こう」


 僕はそう提案して、急いで女子生徒と一緒に生物室まで向かうことにして、そのときふと訊ねたのだった、


「ところで君、名前は?」


 と。


(続く)

さて、彼女は一体何者なのか。

そして、河勝産の友人だという彼女は彩に対してどう接するのか。


それは次回に続く。

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