第7話「蒼海の兄貴!デカマラネイビー参上!!」
アナキツツキとの激戦から数日後。
デカマラマスターの秘密基地では、レッドこと殿岡がトレーニングに励んでいた。
「はぁっ! でやぁっ! うおおおおっ!」
ドゴォン!!
サンドバッグが吹っ飛び、壁に激突した。
岡部はコーヒーを吹き出した。
「おいぃぃぃ! また壁を壊したのか! 修理費がいくらかかると思ってんだ!」
「す、すみません! つい力が……!」
「ヒーローの訓練で基地を破壊するな!」
奥は壊れたサンドバッグを見ながら、冷静にメモを取っていた。
「記録更新。殿岡の一撃でサンドバッグが壁を貫通。なお、修理予算は残り12%」
「数字で追い詰めるなよぉぉぉ!」
そんな騒がしい基地に、マスターがゆっくりと入ってきた。
「殿岡。鍛錬に励むのはよいことだ。だが、力だけでは勝てない敵もいる」
「はい、マスター!」
「先日の戦いで、仲間との連携がいかに重要か分かったはずだ」
レッドは少しだけうつむいた。
通信を遮断され、一人で巨大怪人と戦ったあのとき。勝利はしたものの、あと一歩判断が遅れていれば危険だった。
「……俺、もっと仲間が必要です。誰かと一緒なら、できることも増えるはずです」
マスターは静かにうなずいた。
「ならば、会いに行くといい。お前が探している男は、海辺の町にいる」
「男?」
「名は内藤。かつて、私がその実力を認めた戦士だ」
岡部が驚いた。
「えっ、マスターの知り合いですか!?」
「うむ。ただし、少々……いや、かなり変わった男だ」
奥が顔を上げた。
「具体的には?」
マスターは少し考えた。
「普段は穏やかだ。だが、戦いになると別人のようになる」
岡部は嫌な予感を覚えた。
「それ、うちのレッドと同じタイプじゃないですか?」
「いや、殿岡よりもひどい」
「俺、そんなにひどいですか!?」
マスターは答えず、窓の外を眺めた。
「……健闘を祈る」
「なんで急に不吉なんですかぁぁぁ!」
そのころ、海辺の町では、肛門騎士団による新たな作戦が始まっていた。
海岸沿いの倉庫街に、巨大な穴が次々と開いていく。道路は陥没し、港のクレーンが傾き、船舶の出航も停止していた。
現場に現れたのは、穴掘り能力を持つ怪人――ケツアナウミウシだった。
「フハハハ! この港を地下から崩壊させてやる! 海も陸も、すべて俺の穴だらけにしてくれるわ!」
「海も陸もって、範囲が広すぎるだろ!」
怪人の前に、青い作業着を着た男が立っていた。
男は片手に持った工具箱を地面に置き、困ったように頭をかいた。
「おいおい。港を壊されると、漁師のおっちゃんたちが困るんだよ。せっかく今朝、魚を分けてもらったばかりなのに」
ケツアナウミウシは鼻で笑った。
「なんだ貴様は? 作業員ごときが、この俺に逆らうつもりか!」
「俺か? ただの通りすがりのおっさんだよ」
男はにこやかに笑った。
「だから、できれば穏便に済ませたいんだけどな」
「ならば、その場で土下座しろ!」
「うーん。それはちょっと困るな」
男の笑顔が消えた。
「ここで働いている人たちは、毎日一生懸命なんだ。お前のくだらない遊びで、その仕事場を壊させるわけにはいかない」
怪人が激昂する。
「貴様ぁぁぁ! 雑魚のくせに説教を!」
ドリル状の腕が振り下ろされた。
男は一歩も動かなかった。
次の瞬間――。
ドゴォォォン!!
怪人の腕が、男の拳によって弾き返された。
「……は?」
「悪いな。こっから先は通行止めだ」
男は首を鳴らした。
「さて。ちょっとだけ、本気を出すか」
そのころ、殿岡は海辺の町に到着していた。
「ここにマスターが言っていた人がいるのか……」
町の人々が避難する中、殿岡は遠くの爆発音に気づいた。
「怪人か!」
彼は右手の中指にはめたリングを握りしめた。
「デカマラチェンジ!!」
両手の中指を立てて交差させると、赤い光が全身を包み込む。
「燃え上がる正義! デカマラレッド!!」
レッドは戦場へ駆け出した。
だが、到着した彼が見たものは、予想外の光景だった。
ケツアナウミウシが、地面に倒れ込んでいる。
そして、その前に立っていた男が、軽く手を振っていた。
「はい、おしまい。あとは港の修理を手伝うか」
「えええええっ!? もう倒したの!?」
男はレッドを見て、目を丸くした。
「おっ。君が噂の新人ヒーローか?」
「えっ、俺のこと知ってるんですか!?」
「そりゃあ、巨大列車で怪人を轢き飛ばすヒーローなんて、そうそう忘れないだろ」
「轢き飛ばすって言い方ぁ!」
男は腹を抱えて笑った。
「ははは! いや、悪い悪い。俺は内藤。よろしくな」
「内藤さん……! 俺、殿岡です! 実はマスターにあなたを紹介されて――」
その瞬間、倒れていたケツアナウミウシの体が不気味に光り始めた。
『グオオオオオッ!!』
暗黒エネルギーが降り注ぎ、怪人が巨大化する。
「また巨大化かよぉぉぉ! 肛門騎士団、毎回そればっかりじゃないか!」
内藤は巨大化した怪人を見上げ、ため息をついた。
「せっかく片づけたのになあ。後片づけが大変だ」
レッドが慌てて叫ぶ。
「内藤さん、下がってください! 俺が巨大ロボで――」
「ロボ?」
内藤は首をかしげた。
「いや、そんな大げさなものはいらないだろ」
「え?」
内藤は海へ向かって手を振った。
「おーい、出番だぞ!」
海面が激しく波打つ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
巨大な潜水艦型マシンが海中から浮上し、豪快な水しぶきを上げた。
「な、なんだあれ!?」
内藤はいつの間にか、青いリングを右手の中指にはめていた。
「さて、と。久しぶりに暴れるか」
彼は両手の中指を立てて交差させた。
「デカマラチェンジ!!」
蒼い閃光が全身を包み込む。
「深き海の守護者! デカマラネイビー!!」
レッドは口を開けたまま固まった。
「うそだろ……! この人もヒーローだったの!?」
ネイビーは豪快に笑った。
「おう! まあ、細かい話はあとだ!」
彼が手を掲げると、巨大潜水艦が変形を開始した。
「デカサブマリン、発進!!」
海面を割って突進するデカサブマリン。巨大怪人の足元をすくい、海へ引きずり込んだ。
「な、なんだこの潜水艦は!? 俺の地中戦能力が通用しないだと!?」
「海の中じゃ、こっちのホームグラウンドだ!」
ネイビーは操縦席で豪快に笑った。
「さあ、海水浴の時間だぁぁぁ!!」
デカサブマリンは敵を旋回しながら翻弄し、巨大なプロペラで怪人を押し流した。
「うわあああっ! 回る! 回るぞぉぉぉ!」
「全員まとめてぶっ飛ばすぜぇぇ!! 蒼海轟砕・ネイビーノヴァ!!」
デカサブマリンが蒼いエネルギーをまとい、怪人へ一気に突撃する。
大爆発。
ケツアナウミウシは海上に巨大な水柱を上げて消滅した。
戦闘終了後、ネイビーは変身を解き、レッドの肩をぽんと叩いた。
「いやあ、久々にいい運動になったな!」
「いい運動!? 今のが!?」
「おう。最近、運動不足でさあ。明日は釣りにでも行こうかな」
「いや、ちょっと待ってください! あなた、すごく強いじゃないですか!」
ネイビーは照れくさそうに笑った。
「まあな。でも、一人で全部やろうとするなよ。仲間がいるなら、頼ればいい」
レッドはその言葉に、はっとした。
「……仲間」
「ああ。誰だって一人じゃ限界がある。強い奴ほど、それを忘れちゃいけないんだ」
ネイビーは海の向こうを見つめた。
「俺も昔、それで失敗したことがあってな」
一瞬だけ、彼の表情に影が差した。
しかし、すぐにいつもの穏やかな笑顔に戻る。
「ま、難しい話は飯でも食いながらだ! 腹減っただろ?」
「えっ、いいんですか!?」
「もちろん! 魚なら任せろ! 俺、魚をさばくの得意なんだ!」
「やったあああ!」
こうして、デカマラレッドに初めての仲間が加わった。
秘密基地へ戻った二人を見て、岡部と奥は歓声を上げた。
「おおっ! 新しい戦士だ!」
「これで戦力が二倍……いや、単純計算では測れないか」
マスターはネイビーを見つめ、静かにうなずいた。
「内藤。よく戻ってきてくれた」
ネイビーは少し照れたように頭をかいた。
「いやあ、マスター。呼ばれたからには来ますよ」
「これからは殿岡を頼む」
「任せてください!」
レッドは嬉しそうに拳を握った。
「よーし! これからは二人で――」
「ところでマスター。今日の夕飯、魚料理でいいですか?」
「……何?」
「俺が釣ってきた魚があるんですよ。大きなやつ!」
マスターの顔色が変わった。
「……内藤。魚料理はよい。だが、以前のような味付けはやめてくれ」
「えっ? あの海水と醤油を間違えたやつですか?」
「忘れてくれ!!」
基地に笑い声が響いた。
だが、その様子を遠く離れた場所から監視する影があった。
肛門騎士団のレーションである。
「デカマラネイビー……。なるほど、戦力が増えましたか」
隣の部下が尋ねる。
「レーション様、次はどのような作戦を?」
レーションは冷笑した。
「正面から倒す必要はありません。彼らの仲間意識を利用すればいい」
「仲間意識、ですか?」
「ええ。人間というものは、守るものが増えるほど判断が鈍る。特に、あのような単純な正義漢はね」
彼は画面を閉じた。
「次は、彼らが仲間を信じたことを後悔するような作戦を立てましょう」
部下は顔を青ざめさせた。
レーションはそれに気づくと、にっこりと笑った。
「何か言いたいことでも?」
「い、いえ!」
「そうですか。ならば、余計なことを考えず働きなさい。雑種」
冷たい笑い声が、作戦室に響いた。
第7話・完。
次回、第8話「二人じゃ足りない!?迫る陰謀と新たな影!!」
レッドとネイビーの連携訓練が始まるが、レーションの卑劣な作戦によって街は大混乱!
そして、二人の戦いを遠くから見つめる、もう一人の戦士の姿が……。
次回も、全開バリバリで行くぜ!!
読んでくれて感謝!!
評価と感想おねがいします!




