第2話「初陣!燃え上がれ、デカマラレッド!」
第一章 復活の暗黒皇帝・続
「この街は、俺が守る!!」
威勢よく叫んだ殿岡だったが、変身した自分の姿を見下ろし、数秒間固まった。
赤い装甲。胸に輝くエンブレム。右手の中指にはめられた変身リング。
そして、全身からあふれる謎の力。
「……え、マジで?」
「何をぼさっとしている」
背後から中根の声が飛ぶ。
「敵が待ってくれると思うか?」
「あ、いや、だって! いきなりこんな姿になったら驚くだろ普通!」
「驚くのは後にしろ」
中根は敵の集団を指さした。
「来るぞ」
「え?」
次の瞬間、ケツノアナーの兵士が三体、殿岡めがけて突進してきた。
「うおおおおっ!?」
殿岡は反射的に腕を交差させた。
ドガッ!
一体目の攻撃を受け止める。
ガキィン!
二体目の武器を弾き飛ばす。
そして三体目が飛びかかってきた瞬間――
「うわっ、近い近い近い!!」
殿岡は思いきり腕を振った。
ドッゴォォォン!!
兵士が数メートル先まで吹き飛んだ。
「…………」
殿岡は自分の拳を見つめた。
「え、俺……今、何した?」
中根が腕を組む。
「変身者の身体能力が強化されている。だが、力の使い方はまだ素人だな」
「それ、今言う!?」
「戦場で説明を求めるな」
「厳しすぎるだろ、この師匠!!」
その間にも、敵は次々と押し寄せてくる。
殿岡は歯を食いしばり、構えを取った。
「くそっ……やるしかない!」
兵士の攻撃を避け、拳を叩き込む。
一体。
二体。
三体。
だが、数が多すぎた。
背後から迫る敵に気づかず、殿岡は地面へと叩きつけられた。
「ぐっ……!」
「レッド!」
中根が声を上げる。
殿岡は立ち上がろうとするが、足が震えていた。
怖い。
痛い。
さっきまで普通の高校生だった自分が、こんな化け物たちと戦っている。
「……俺、何やってんだろ」
思わず弱音が漏れた。
「受験もあるし……卒業だって……まだやりたいことだってあるのに……」
ケツノアナーが武器を振り上げる。
「対象を排除する」
殿岡は目を閉じかけた。
そのときだった。
「お前は、何のために立ち上がった?」
中根の声が響く。
殿岡の脳裏に、瓦礫の下で助けを求めていた人々の姿がよみがえった。
逃げることはできた。
見なかったことにもできた。
それでも、自分は足を止めた。
「……守りたいからだ」
殿岡はゆっくりと立ち上がった。
「俺は……あの人たちを守りたいから、ここにいるんだ!」
赤い装甲が輝きを増す。
指輪から、力強い電子音が鳴り始めた。
『アナイアレイト……』
「なんだ、この音!?」
中根がわずかに口元を緩めた。
「ほう。もう必殺技の待機音が鳴るか」
「待機音!? 説明してくれよ!」
『アナイアレイト……チャージ』
殿岡の右手に、赤い光が集まっていく。
目の前に立ちはだかる敵の群れ。
殿岡は拳を握り、地面を蹴った。
「よく分かんねえけど……これで決める!!」
赤い光が刃へと変わり、彼の手にデカマラカリバーが出現した。
殿岡は剣を構えた。
「燃え上がれ、正義の刃!」
一歩、踏み込む。
「紅蓮一閃・デカマラブレイカー!!」
赤い閃光が戦場を駆け抜けた。
一瞬の静寂。
次の瞬間、敵の集団を包み込むように爆炎が広がった。
ドォォォォォン!!
吹き飛ばされるケツノアナーたち。
立ち上る煙。
そして、その中心に――赤き戦士が剣を構えて立っていた。
殿岡は呆然と剣を見つめる。
「……俺、すげえ」
「油断するな」
「はいはい、分かって――」
「後ろだ」
「え?」
ドゴォッ!!
最後に残っていた一体が、殿岡の背中に突撃した。
「ぐはぁっ!?」
殿岡は勢いよく地面を転がった。
中根は深くため息をついた。
「……先は長いな」
「最初に言ってくれよおおおお!!」
一方、その頃――
街から離れた山中。
人目につかない場所に、古びた施設があった。
地下へと続く通路を抜けると、広大な格納庫が姿を現す。
そこには、巨大な機械の残骸や、整備途中の兵器が並んでいた。
「いやあ、まさか本当に復活するとはねえ……」
工具を片手に、岡部がモニターを見つめていた。
隣では、奥が黙々と端末を操作している。
画面には、街で戦う赤い戦士の映像が映し出されていた。
「変身反応、確認。適合率は……想定以上だ」
奥が淡々と告げる。
岡部は目を丸くした。
「高校生だろ? あの子」
「そうだ」
「マスターも思い切ったことするなあ……」
「だが、選択肢は多くない」
奥は画面を切り替えた。
そこには、長い間封印されていた機械の設計図が表示されていた。
巨大な列車型の機体。
その名は――デカライナー・1号。
岡部は工具を肩に担いだ。
「じゃあ、こっちも準備しないとな」
「まだ動かせる状態ではない」
「分かってるって。だから今から直すんだよ」
二人は顔を見合わせた。
そして、再び作業に取りかかった。
新たな戦士が生まれた以上、彼らにもやるべきことがある。
戦う者がいる。
支える者がいる。
その両方がそろって初めて、戦隊は前へ進めるのだ。
再び、戦場。
最後の敵を倒した殿岡は、地面に座り込んでいた。
「はあ……はあ……。もう無理……」
「まだ敵の本隊が残っている」
「うそだろ……」
中根は遠くを見つめた。
街の中心では、ケツデカイナーが悠然と立っていた。
その傍らには、異様な雰囲気を漂わせる四つの影。
敵組織を支える幹部たちだ。
そのうちの一人が、赤い戦士の映像を見ながら笑った。
「なるほど。マスターが後継者を用意していたとはね」
冷たい声。
「しかし、まだまだ未熟だ。あの程度で我らに挑むとは、実に滑稽だね」
レーションは眼鏡の位置を直し、手元の資料を閉じた。
「雑種が一人増えたところで、戦局は変わらない」
別の場所では、誰かがスマートフォンを掲げていた。
「はい、皆さん注目! 今の戦闘、実は政府が隠している巨大計画の一部なんですよ!」
ヤッタカイの配信は、すでに数千人の視聴者を集めていた。
「この怪物たちは、実は――」
「黙れ」
ケツデカイナーが一言発しただけで、ヤッタカイは口をつぐんだ。
「余計な騒ぎを起こすな。今はまだ、遊びの時間だ」
ケツデカイナーは街を見下ろした。
「マスター……」
その口元に、残忍な笑みが浮かぶ。
「次は、お前のすべてを奪ってやろう」
殿岡はまだ知らない。
この戦いが、ただの怪物退治ではないことを。
かつて世界を救った英雄と、その隣に立っていた男の間に、何があったのかを。
そして、自分が受け継いだ力の本当の意味を。
彼は立ち上がり、赤い剣を握り締めた。
「……次は、もっと上手くやってやる」
中根が静かにうなずく。
「その意気だ」
夕焼けに染まる街。
平和を取り戻すための戦いが、今、始まったばかりだった。
第2話・完。
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