第1話「平和、崩壊。伝説の英雄と赤き継承者」
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設定考えるのって楽しいですね!
第一章 復活の暗黒皇帝
その日、世界は平和だった。
少なくとも、殿岡が通う高校の三年生の教室では、そうだった。
「なあ、今日の放課後どうする?」
「知らねえ。受験勉強でもするんじゃね?」
「お前が受験勉強? 明日は雪か?」
教室に笑い声が響く。
殿岡は机に頬杖をつき、窓の外を眺めていた。
高校三年生。進路のこと、卒業後のこと、これからの人生。考えることはいくらでもある。
それでも、今日という一日が明日も続くと、彼は疑っていなかった。
数十年前、この世界がどれほどの危機にさらされたのか。
伝説の英雄が、どれほどの犠牲と引き換えに平和を勝ち取ったのか。
そんな話は、歴史の教科書の片隅に載っている程度のものだった。
かつて世界を脅かした暗黒の支配者。
ケツデカイナー。
彼はマスターと呼ばれる英雄たちによって倒され、世界には長い平和が訪れた。
誰もが、その脅威は過去のものになったと信じていた。
――そのはずだった。
その瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
「……え?」
窓ガラスが震えた。
地面が揺れる。
遠くから、爆発音が響いた。
次の瞬間、校内放送がけたたましく鳴り響いた。
『緊急事態です! 校外で大規模な襲撃が発生しています! 生徒の皆さんは、先生の指示に従って――』
放送は途中で途切れた。
ドォォォォォン!!
校舎の向こう側で、巨大な黒煙が上がった。
殿岡は窓に駆け寄った。
街が、燃えていた。
道路には逃げ惑う人々。倒壊する建物。空を覆う不気味な暗雲。
そして、その煙の中から現れたのは、異形の兵士たちだった。
黒い鎧をまとい、奇妙な紋章を掲げた軍勢。
その名は――肛門騎士団。
「ケツノアナーだと……!?」
誰かが叫んだ。
その兵士たちを従えるように、巨大な影が街の中心に立っていた。
高圧的な笑み。周囲を見下す目。
世界が自分のために存在するとでも信じているかのような、絶対的な傲慢さ。
その男が、ゆっくりと口を開いた。
「愚かな人間どもよ」
声が、街全体に響き渡る。
「数十年もの間、つかの間の平和を享受してきたようだな」
男は笑った。
「だが、それも今日で終わりだ」
その名は。
ケツデカイナー。
かつて世界に敗れた暗黒の支配者が、再びこの世に舞い戻ったのだ。
「我が前に立ちはだかる者は、すべて滅ぼす」
ケツデカイナーが片手を上げた。
それだけで、街の一角が爆炎に包まれた。
教室の生徒たちは悲鳴を上げ、一斉に廊下へ飛び出した。
「逃げろ!」
「早く!」
殿岡も走った。
走るしかなかった。
英雄でもない。戦士でもない。
ただの高校三年生なのだから。
しかし、校舎を出た直後、彼は逃げ遅れた人々を見つけた。
崩れた瓦礫のそばで、動けなくなっている人たち。
その頭上には、今にも崩れ落ちそうな建物の一部があった。
「くそっ……!」
殿岡は足を止めた。
逃げなければならない。
分かっている。
それでも、見捨てて走ることができなかった。
「今、助けるからな!」
彼は瓦礫に手をかけた。
重い。
びくともしない。
「動け……! 動けよ!!」
必死に力を込める。
だが、背後からケツノアナーの兵士たちが迫ってきた。
「発見。生存者を処理する」
無機質な声。
殿岡は振り返った。
敵の武器が振り上げられる。
避けられない。
――ここまでか。
その瞬間だった。
「伏せろ」
低く、静かな声がした。
ズガァァァァン!!
何者かの一撃が、ケツノアナーたちをまとめて吹き飛ばした。
殿岡は呆然と顔を上げた。
そこに立っていたのは、一人の男だった。
白髪交じりの髪。
年齢は六十歳ほどだろうか。
派手な装備も、巨大な武器も持っていない。
ただ、そこに立っているだけだった。
なのに。
男の周囲には、近づくことさえためらわせるような威圧感があった。
男は殿岡を見た。
「立てるか」
「あ、ああ……。あんた、一体……」
男は答えなかった。
代わりに、遠くのケツデカイナーを見据えた。
「……戻ってきたか」
その声には、驚きがなかった。
まるで、いつかこうなることを知っていたかのようだった。
殿岡は息を呑んだ。
「もしかして……あんたが、マスターなのか?」
男はわずかに目を細めた。
「ほう。まだ私の名を知る者がいたか」
伝説の英雄。
数十年前、ケツデカイナーを打ち倒した男。
マスター――中根。
中根は殿岡の前に立ち、静かに告げた。
「少年。ここから先は、ただ逃げるだけでは守れんものがある」
「……でも、俺には何もできない!」
殿岡は拳を握り締めた。
「俺はただの高校生だ! 戦い方だって知らない! あんな化け物に勝てるわけがないだろ!」
中根はしばらく黙っていた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「最初から強い者などいない」
その目が、殿岡をまっすぐに見つめる。
「それでも、立つべき時に立つ者がいる」
中根は懐から、一つの指輪を取り出した。
赤い光を宿す、謎の変身リング。
「お前には、まだ選ぶ余地がある。逃げることもできる」
中根は指輪を差し出した。
「だが、もし立ち向かうというのなら――この力を託そう」
殿岡は指輪を見つめた。
背後から、人々の悲鳴が聞こえる。
目の前には、世界を再び闇に染めようとする敵がいる。
そして自分の手には、何もない。
いや。
今は、目の前に一つだけ道が差し出されている。
殿岡は震える手で、指輪を受け取った。
「……俺に、できるのか?」
「できるかどうかではない」
中根は静かに答えた。
「お前が、どうしたいかだ」
殿岡は目を閉じた。
そして、再び目を開いた。
恐怖は消えていない。
それでも。
「……分かった」
彼は右手の中指に指輪をはめた。
「俺がやる」
中根が小さくうなずく。
殿岡は両手の中指を立て、交差させた。
赤い光が、指輪からあふれ出す。
「デカマラチェンジ!!」
轟音。
閃光。
赤きエネルギーが殿岡の全身を包み込む。
そして光が晴れたとき――そこには、赤い戦士が立っていた。
デカマラレッド。
新たな伝説の、始まりだった。
殿岡は拳を握り、ケツデカイナーを見据えた。
「待ってろよ……!」
その声は、まだ震えていた。
だが、確かな意志が宿っていた。
「この街は、俺が守る!!」
遠くで、ケツデカイナーが笑った。
「ほう……。新たな玩具が現れたか」
暗黒の支配者は、赤い戦士を見下ろした。
「よかろう。せいぜい楽しませてみろ」
こうして、長き平和は終わりを告げた。
そして、一人の高校生が、世界の運命を背負うことになった。
つづく。
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