第7話
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サクラ視点です。
入学式の最中、ここが乙女ゲームの世界だということは、なんとなく受け入れた。なんとなくね!
でも、何でここにいるのかとか、どうやってここに来たのか、とか解らないことばかりだった。
それをすっ飛ばしたとしても、どうやったら戻れるのか、それだけでいいから知りたい。
ずっとしかめっ面をしていたせいか、隣にいたリオンが肘でつついてくる。
「(どうしたの、さっきから。大丈夫?)」
学長の話を聞きながら心配そうにこちらをちらちら見ていた。
思考の邪魔しないでよ!
…とは言えないので、こくんと頷くだけで返事をした。
彼はまだ心配そうにしていたが、私がちらりとも見ないのを見て前を向きなおした。
おそらく彼のヒロインは別人なので、私に構わなくてもいいんじゃないかと思う。
とりあえず私を思考に没頭させて欲しかった…が、ちょうど学長の話が終わり、退場する時間になってしまった。
「ずっと考え事してるけど、どうしたの?」
教室へ戻る道すがら、リオンは歩きながら器用に私の顔を覗き込んでくる。
私は近づいた距離に身を引きながら、顔を背けた。
「べ、別に…。なんでもない。」
かっこいい顔が近くにあるのに、嬉しくとも何ともなかった。
別に彼が悪いわけではない。この状況が悪いだけなのだ。
これが乙女ゲームの世界でなければ。本当に進学するはずの高校であったなら。
イケメンなんて見たら、目の保養とばかりにチェックリストをつけて、休みごとにチラ見するくらいはやるのに。
「なんだか、昔と比べて冷たくなった気がする…。」
彼が小さく呟いた。
不満そうな彼の口から呟かれた言葉に私は耳を疑った。
正直、ヒロインのような必要なとこで「え、なになに?」みたいなスキルがあればいいのに。
こんなことを言われては、最悪の想像ができてしまうではないか。
リオンは地方の出身で、尚且つ仲のいい人間もこの学院には入学していない。
彼女以外は。
つまり、この学院でリオンが昔から知っているのは、彼女――ヒロイン――だけだ。
「ど、どういう…。」
言い終わる前に教室に着いてしまった。
聞き直そうと思ったが、先に教室に着いていた担任の教師が、私が席に着くのを待っていたのでしぶしぶ席に着いた。
ちなみにこの教師もゲームに出てくる。
攻略対象として。
攻略する気はないけどね!
担任は手に持っていたファイル類をどん、と教卓に置くとキラリと白い歯を見せた。
ちなみにこの教師は熱血タイプだ。
生徒が困っていれば、自分のことなど後回しで助けるようなキャラ。
現実で言えば、思春期の高校生におせっかいをやく、ちょっとうざいタイプだ。
「これから1年間このクラスでやってくからなー!よし、自己紹介だ!」
そう言うと教室内がざわざわとした。
この自己紹介で1年が決まるといっても過言じゃないからね。
私も普通に進学してたらなぁ…。
いかんいかん、意識を飛ばしそうになってしまった。
「まず俺からだな。俺はユーゴ・エイリーだ。1年このクラスの担任をすることになった!みんなよろしく!」
担任のユーゴ――先生は付けた方がいいだろうか――は、やはり攻略キャラだ。
そして、熱血な感じもそのまま。
先生は、廊下側に座っていた私の列から順に自己紹介するように、と言って一番前の席の子を見た。
一番初めは女生徒で、少し頬を赤らめながら立ち上がり自己紹介した。
私はそこから4番目の席で、私の前2人が自己紹介したら、出番が来る。
「んじゃ次ー。立てよー。」
そういえば、私は何という名前で入学したのか知らない。
ただのモブならいいんだけど、名前知らないなぁ。
普通にサクラ・ヒヤマと答えていいものなのか?
でもこんな洋風な世界で、ヒヤマなんて苗字変じゃないだろうか?
「アルステッド?どうした?」
ヒロインの名前って確かファーストネームは自由に決められて、固定の名前ってなかったんだよねー。
だから、いつもサクラって入れてて…えーとファミリーネームは固定だった気がするな。
えーと…アルステッド、だっけ?
あれ?
なんかこの感じ、ゲームの名前入力画面に似てない?
オープニングの後にクラスで自己紹介のイベントがあって、名前入力して…。
…アルステッド??
「おーい!大丈夫か!?」
先生がこちらに近づいてくるのが見えて、私ははっと顔をあげた。
周りを見ると、みんながこちらを見ていて、思わず音を立てて立ち上がってしまった。
さらに注目度があがり、顔が熱くなる。
いつの間に私の番が来てたの!?
本物のヒロインだってこんなに注目されないよー。
なんだろ、すごく泣きそうだ。
私何も悪くないのに、なにこの羞恥プレイ
でも、先生は私をみてアルステッドって呼んだ。
つまり、私はアルステッド家の人間として入学したということ。
「サ、サクラ・アルステッド、です…。」
だから、とりあえずアルステッドって名乗ることにします。
だってヒヤマって答えて変に思われるのも嫌だし、こんなわけのわかんない世界――乙女ゲームなんだけど!――で自我を通そうと思うほど、強い人間じゃないってわかってる。
…昔から大人っぽいねって言われてたよ。
名乗ってから気づいてしまったけど、ヒロインはサクラという名前なのだろうか。
私は、ヒロインの役割ではあるが、ヒロインという存在じゃない。…めちゃくちゃややこしい!
けど、私はアルステッドという家に生まれたわけじゃないし、アルステッドの娘として生きてきた記憶なんてどこにもない。
もちろん、ゲームの記憶ってゆうのはあるけど、それは体験した記憶とは違う。
私は檜山桜で、15年間檜山家の一人として生きてきたんだから。
…もう少しで16歳だけど!
間違ってたら誤魔化せるかな…?
なんて、思って反応を待ってみたけど、特に反応はなく。
こういうときこそヒロイン補正が欲しいよ!
「サクラだな!よろしく!ほら男共、見惚れてるんじゃない!何か一言あるか?」
先生は名前について気にした様子はない。
本物――がいるかどうか定かではないが――も、サクラという名前なのかもしれない。
それはそれでなんだか嫌だけど…。
「サクラ?おーい?緊張してんのか?」
先生が私の前で手を振った。
はっ!!!
私ったら、また先生を無視しちゃった。
まあでも先生だからな…なんて。
「あー、えと、よろしく…お願いします…?」
お伺い口調だけどもういいよね!
早くこの羞恥プレイを終わらせてくれ!
私は席に座った。
数分ぶりの席が、なんだか久しぶりに心安らげる場所のような気がした。
解りにくいかもですが、転生ではないとこがミソです!!
そして何気にヒロイン補正入ってます(笑




