第29話
遅くなってすみませんでした!!
ホムラ視点です。
「じゃあこれが、魔装加工したカタナで――。」
カレンさんから説明を受けながら、武器と防具を受け取る。
ちなみに魔術師団長はいない。講義中なのを見計らってこちらへ来てくれたらしい。
8月ももうすぐ終わる、という時期。
上旬にあった遠征もなんとか全員無事に帰ってこれたところで、私はカレンさんに預けていたカタナを取りに行った。
今回の遠征もずっと見張りだった。
けど、日々続けてるトレーニングのお陰か、魔物相手ならなんとか戦えるようになってきたと思う。
団長から言わせればまだまだらしいけど。
8月だからどこも暑いのかな、なんて考えていたけど、この世界は四季がないのか茹だる様な夏の暑さは存在しなかった。
だからといって涼しくてすごしやすい、ってわけでもないんだけど。
それはともかく。
カレンさんは防具も作ってくれると言っていたけど、持っていたのは丈の長いトレンチコートのようだった。
「こちらが防具、といっても羽織るだけなのですけれど。もちろんこちらも魔装加工してあります。武器、防具ともに魔力伝導率と魔力含有率を上げて魔装鍛錬が出来るように改良しました。はい、このベルトを使ってください。」
とカタナとアウター、カタナを腰につけるためのベルトを渡された。
「ありがとうございます。この防具だと鎧を身につけるときは着られないですね…。」
いずれは自分もみんなと同じように鎧を身に着けようと思っている。もちろん男性陣と全く同じとはいかないが。
団員の中で私以外のたった一人の女性であるハズキさんは、両腕と両足に鉄製の防具をつけていて、胴の部分には硬い皮の鎧を身につけるのが遠征時の装備だ。
ハズキさんは、攻撃を見切るのがすごく早い。例え避けきれない攻撃も上手くいなしてかわす。
だから、特に腕の装備に力を入れてて、足の装備は鉄を使ってるけど軽い素材だ。
カレンさんは首を小さく傾げて、私の爪先から頭の天辺を見た。…ちょっとムっとしたのは内緒だ。
「ホムラさんの身長だと、おそらく鎧は支給されませんよ?鎧を着るには背が少々…いえ結構足りないんじゃないかしら…?」
やっぱりか。
…なんとなく気づいていたさ!
私の身長は160センチある。
まあ高校3年でその身長は、日本人なら平均的なはず。
だが、この世界の人間は何かおかしいのか皆背が高いのだ。
ハズキさんも私より頭一つ分くらい大きい。というか騎士団員は皆背が高い。
体そのものが大きい者もいるが、団長は細いくせに180センチ近くあるっぽい。私とは結構身長差がある。くぅっ。
だから私が小さいわけではない、と思う。
そもそも鎧なんて男が着るように出来てるんだから、女の私にとっては大きいに決まってるよね!
「そうなんですね…。じゃあ今度の遠征からこれを着て行きますね。」
どっちみち今まで着ていた布の服よりはいいはずだ。
「ええ。厚めの布もつかっていますし、魔装加工によって物理攻撃にも強くなっていますから、そこらの鎧よりはダメージは受けないですよ。」
カレンさんは得意げな顔をしている。
それならありがたい。
皮より軽くてその上強いなら、足重視で用意してもらったカタナが生きるというものだ。
「それから、これは室長から。」
そう言って渡されたのは、真紅の宝石がついたペンダントだった。
「これは…。」
この色、どこかで見たことあるような…。
「室長が、揃いのピアスにしようとしていましたが、それは止めました。これは室長がつけているピアスと同じで、魔力増幅の効果があります。これにより、多くの魔力を引き出すことが出来るでしょう。」
やっぱり魔術師団長つけているものと同じあの石だった。
「はは…。ありがとうございます。…でも、いいんですか?」
とりあえずペンダントは受け取ったが、彼女の態度があまりにも変わらないのでなんだか気になる。
初対面のときから、カレンさんは魔術師団長に想いを寄せていることを隠さず、堂々と私との間に割って入ってきた。
食堂で聞いた、調子に乗るな、と言う言葉は今でも覚えている。
そのくらい好きなんだと思ったし、様子を見ていると婚約者候補にはいるみたいだけど婚約も結婚もしていない。カレンさんが一方的に魔術師団長を好きなんだってすぐにわかった。
そんな彼女が、私と魔術師団長がお揃いの物をつけることを許す、なんて明日は空から槍が降るんじゃないだろうか。
「なんだか失礼なことを考えているようですわね…。本当に降らせますよ?」
彼女はいたずらっぽく笑った。
ば、ばれてる…!
あわわわわ。ほんとに槍降らせるかもしれないよこの人!
彼女は、私が慌てて視線をさまよわせている様子に堪え切れないという風に笑って、こほんっと咳払いをした。
「まあ冗談は置いといて。…いいのです。それはホムラさんにとって必要なもののはず。むしろ体の小さいあなたが遠征に向かう度に無事帰ってこられるか心配しているのですよ?だから、彼のが嫌というのならわたくしが作り直しますから、これは持って行ってくださいな。」
そう言って微笑む彼女の微笑みは聖母のようだった。
「…はい!ありがとうございます!大切にしますね。」
私は今もらった武具を抱きしめた。
「今度の遠征はどちらに行かれるのですか?」
私が胸に抱いている武具を見て、カレンさんは眉を寄せた。
また、危険な目に遭うのではないかという心配か、はたまたせっかく作った武具が傷つくという心配か。
「今度は北にある山間の集落だそうです。最近魔物が増えてきたそうで…。」
すでに9月の中旬に遠征が入ることが決まっている。
今度は今までとは違い登山になるらしい。
今回の遠征は北にある山間の集落を魔物から守るという内容だ。
なんでも最近魔物が活性化していて、度々集落が襲われているらしい。
特に農作物の被害が酷いらしく、作っても作っても魔物に持っていかれて困っているということだった。
集落は人口も少ないため、元の世界への手がかりはあまり望めなさそうだが、魔獣は出ないだろうという話を聞いてほっとしていた。
「あの集落ですね。確か“ディーオク”という名前だったかと。」
彼女は視線を上方に向け、かの場所を思い浮かべている。
「はい。そんな名前だったと思います。」
「あの場所なら大丈夫そうですね。ただ、天気が変わりやすい場所らしいですから、体調にはお気をつけ下さいね。」
山の天気は変わりやすいというが、この世界も同じらしい。
気候条件というのか、そういったものは一緒のようだ。
そのあと、2人だけの女子会は魔術師団長の介入によって中断するまで続けられた。
カレンはだいぶ印象ついたでしょうか…?




