第28話
ホムラ視点です。
同日中に更新できなくてすみません!
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そういうわけで、私はカタナという名の剣をいただいた。
…気になる方は以前の話を読んでね。
「これってどうしたらいいんですか?」
騎士団では団で支給されている剣の他、貴族出身ならば家紋が入ったものを使うことは許可されている。
もちろん、市民の出の者はそのほとんどが支給されている物を使っているが、私が買っていただいた物のように自ら鍛冶を頼む者もいるらしい。
とは言っても。
いきなり与えられたからといって、それを扱えるようにはならないのだ。
そんなの、かの剣豪宮本武蔵でも、佐々木小次郎でも無理…だよね?
それに2週間後には、また遠征の準備に入らなければならない。
木刀でさえ振り回すのがやっとなのに、いきなり刀が扱えるとは思えないんだけど…。
私の問いかけに、ん?と団長は振り向いた。
「保管はホムラの自室でやれ。剣の習得は日々行うが急ぐ必要はない。とりあえず、カタナに握り慣れろ。」
私の問いが何について聞かれたのかわからなかったようで、思いつくことをそのまま答えたような返答だった。
すみません団長。私もわからなかったんです。
それにしても握り慣れるか…。
私に刀なんて扱えるようになるのかなぁ。
私の手元にある刀はそれが現実だと伝えてくるけど、そもそも刀を入手するっていう現実が非現実的すぎるわけで。
なんかもうよくわかんなくなって来た。私何言ってるんだろ。
そんなことをつらつらと考えながら歩いていたら、なぜかレイジ魔術師団長に会った。
彼がなぜこちらの――騎士団本部や学院のある――建物にいるのか、と思ったが学院の方で講義をしていたらしい。
ほんとにすごい人だったんだなぁ。師団長だもんね。
「その顔はもしかしてお困りかい?もしかして俺の出番かな?」
そんな風に声をかけられたが、彼は神出鬼没な上にエスパーだったらしい。
なぜ私が困っていることがわかるのか。ちょっと寒気がした。
「えっと、こんにちは。んーと…。」
正直に悩みを打ち明けたいけど、武器についてだしなぁ。
この人、本とは関わりがありそうでも、武器とは全く繋がらない。
全然関わりのない分野の話をされても困るだけ、かな。
「何かな何かな?」
きらきらした顔で見つめられる。目がきらっきらしている。
そんなわくわくされても、楽しい話じゃないと思いますよー。
「戦闘についてなんですが…。」
うーん。なんて言ったらいいんだろう?
遠まわしに言ってもだよね。
「あ、もしかして敵が怖~い、とかかい?そんなときは俺にお任せ。敵が全部かぼちゃに見える魔法開発中なんだ。これは水魔法が得意なカレン君の分野なんだが見える敵全てがかぼちゃに見えるから、魔物だけじゃなくて人間相手でもこれができるらしい。これで、戦うのが怖くても台所で料理の下ごしらえをする感覚で敵が倒せちゃうから便利!どうどう?」
ちなみに早口です。ええ。
まあ、おかげさまで彼が何言ってるのかだいたいわかるようになっちゃったけど。
ちょっとばかし虚しさが胸中を漂ってしまった。いかんいかん。
「いえ…それは自力で克服するしかないと思っています。…ではなくて、先日たいちょうに新しい武器をいただいたのですが、今まで使っていた模造剣や騎士団で用意されているものと勝手が違って、どう練習しようか考えていたんです。」
よくよく考えればこれこそ団長に相談すべきだったかも、と思った。
団長の前だと、早く上手くならなきゃ、ってことばっかり考えちゃって話がまとまらないんだよね…。
「ふむふむ。もしよかったら見せてもらえるかな?」
魔術師団長は自分の考えが外れたことはもうすでに忘れてしまったらしい。
ものすごい予想と魔術を提示してくれた割りにはもう忘却の彼方っていうね。
「はい。これです。」
腰に下げていた刀を渡した。
彼はふむふむ、と言いながら刀を検分する。
「これは隣国のカタナと呼ばれる剣だね。…魔力伝導率は26パーセント、魔力含有率は3パーセントか。少々扱いにくそうだな…。魔力注入は可能か。ホムラ君。この剣をしばし俺に預けてくれないか?」
彼は専門用語らしき言葉をもごもご呟くと、いきなり剣を貸して欲しいと言った。
それは困る。
ただでさえ短い訓練時間で剣がなければ意味がない。
「えっ?すみません。それはちょっと…。」
「いやだが、この剣ではせっかくのホムラ君の魔力が生かせないだろ?いくらなんでも魔力伝導率が低すぎる!最近の剣はここまで低いのはなかなかないんだ。魔力伝導率が高ければもっと剣が振りやすくなるはずだし、この剣を扱うだけで魔操鍛錬とほぼ同様の効果が得られる。それなら早い方がいいだろう?今預けてくれれば1、2週間ほどで魔力伝導率を26から75パーセントくらいに上げよう。魔力含有率は少々難しいが、40パーセントくらいまで上げて見せるぞ!これでどうだ!」
値段を大幅に下げる、と言っているセールスマンみたいだった。
ただ私には良くわかんない言葉が多く、魔力伝導率や魔力含有率といった言葉は初めて聞いた。
ちなみに魔操鍛錬は私が毎晩寝る前に行っている精神統一のことだ。
どのようにしてその効果を出すのか知らないが、2週間もかかってしまうと次の遠征までに私が刀に触れられる時間が大幅に下がってしまう。
それはさすがに困ったなぁ。
それ以降延々と説得しようとする魔術師団長に困りながらなんとか断っていたところ、ちょうどタイミングよく彼の補佐兼保護者であるカレンさんが間に入ってくれた。
「またですか団長!いい加減にしてください!ホムラさんだからいいものの、他の女性でしたらまた勘違いされますよ!」
って私はいいんかい。
しかも、また、って。
「カレン君!ちょうどいいとこに。この剣を見てくれたまえ。これは魔力伝導率が26パーセントと大変低いんだ。ホムラ君はこれからこの剣で訓練を行うということだし、魔装加工は早い方がいいと思うんだ。だが、ホムラ君は何故か断って来るんだよ。カレン君からも説得してくれないか。ホムラ君がこの剣を使って何かあってからでは遅いだろう?」
あー…。カレンさんの眉間が…。
カレンさん、なんか魔術師団長の話を聞くたびにしわを寄せてる気がする。同情します。
「ちゃんとホムラさんの事情も考えてあげてください。魔装加工には通常なら1ヶ月、あなたなら2週間ほどでできるでしょうが、抵抗装置や補助装置などの付加措置もしていたら2週間じゃできませんわ。次の遠征は約3週間後という話ですし、間に合わないでしょう。そもそもあなたもそこまで暇な身分ではないのです。それならば我が魔術師団に預けていただいた方がより効果を引き出せると思いますわ。どうでしょう、ホムラさん?」
相変わらず会話のスピードに近づけないな…、なんて思ってたらいきなり話を振られた。
「え?」
もちろん私にきちんとした返答が出来るわけもなく。
「この方の元に預ければ、返ってきたときどんな付加がついてるか不安でしょう?きっと余計なものをつけてくれますわ。ですからそれならばわたくしに預けてくだされば、武器の魔力伝導率魔力含有率と共に、さらに魔装加工した防具もご一緒にお付けいたします。」
カレンさんもなぜかセールスマンみたいだった。
だが、魔術師団長とは違って断る勇気はない。
カレンさんは怒らせちゃいけない相手の一人なので。
「お仕事も忙しそうなのにありがとうございます。しかも防具まで…。」
「いいえ。大変な仕事なんてこのバカ室長を連れ戻すくらいだから気にしなくて大丈夫よ。いつも室長の相手をしてくれてる御礼だと思って?ただ、加工に時間がかかってしまうの。だから、ホムラさんが帰ってくるときまでに加工を終わらせておくから、1ヶ月ほどお借りしてもいいかしら?」
魔術師団長連れ戻すのそんなに大変なんだ…。確かにいつも駄々こねてるもんなぁ。
「はい。よろしくお願いします。」
焦っても仕方ない。今はカレンさんに任せて、自分のことを考えるべきだよね。
「ええー。ホムラ君の武器の加工やりたいよー。カレン君!室長命令だ!その武器を渡しなさい!」
魔術師団長が駄々こねてる。
「渡しません。それより早く戻って研究の続きをしてください。」
すぱっとカレンさんは言い放った。
最初こそ、カレンさんは私に対して魔術師団長を渡してなるものか、という視線と態度だった。やっぱり魔術師団長の彼に害をなす者かどうか見極めていたんだと思う。
けど、最近は私と話しても嫌な顔はしないから、害がないって認めて貰えたんだろうな。というか魔術師団長より私と話すときの方が楽しそうだ。今まで女性の友達がなかなかできにくかったんだろうな。
カレンさんは幼い頃から魔力の量が多くて、ずっと魔術師団にいたと聞いた。
魔術師団長ももちろん同じようで、幼くして魔術師団に身を置いていたのはその2人だけだったらしい。
だから2人は幼馴染、というわけ。
カレンさんは侯爵家。対する魔術師団長は公爵家で身分さは明らか。
だけど、カレンさんが女性に嫌われてでも守らなければ、魔術師団長はいろいろな意味で危なかったらしい。
2人はまだ言い合っている。
武器の加工なら私のじゃなくてもよさそうだけど。
楽しそうなやり取りに、思わず笑ってしまった。
レイジ魔術師団長とカレン補佐の二人からの好感度が急上昇中です。




