↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/25

容疑者ハンナの供述

私はハンナ。

いわゆる転生者ってやつなの!


前世ではかわいい女子高生ライフを送っていたんだけど、ある日クラスの女子に階段の踊り場に呼び出されたかと思ったら、よってたかって私をイジメてきたの。ちょっとイケメンな彼氏を奪っちゃったからってムキになりすぎじゃない?

あんた達が見た目も性格もブスだったから彼氏に愛想尽かされるんでしょうが。なのにあいつらが逆ギレしだして、階段から突き落とされちゃって私はポックリ死んじゃった。

本当最悪、あいつら地獄に落ちろっての。


でも次に眼を覚ましたら前世で大好きだった乙女ゲーの世界に転生してたから全然幸せ!

これも日頃の行いがよかったおかげね♪


この世界の親の小言はウザかったけど、ようやくゲームの舞台である学園に入学できたからよしとするわ。目指すは隠しキャラの生徒会長ルート!そのためにも攻略者達の好感度を上げないとね。


だってのに攻略者達の出会いイベント再現しても、全然好感度上がらなくてイライラしちゃってさ。

ヒロインがお願いしてるのに無視するとかなに考えてるのよ!? 本っ当に使えないわね!


あ、でもこのゲームって確か好感度アップアイテムがあったんじゃなかったっけ?

場所はゲームで何度も行ったからすぐわかったわ。学園に近い街の路地裏、ちょっと胡散臭そうな商人のお兄さんがそこにいるの。



この世界だと惚れ薬って呼ばれているみたいだけど、さすが課金アイテムは値段そこそこするわね。お小遣いギリギリだったけどなんとか買えてよかった。

おかげで好感度アップアイテムを使ってからはゲームの攻略がスムーズにいったわね。アイテムが足りなくなった時は落とした男子からお金をおねだりすればいいし、イケメンに囲まれるのもう最高!

隠しキャラの生徒会長と先生達はなかなか会えないけど、重要なイベントまであと半年はあるんだから頑張らないと!



なのに……








「あああああああああ!!」


なんで、こんなことになっているの?










確かきっかけは……モブが連れてきた犬が、私のカバンをひったくって勝手に中身を漁りだしたのが始まりだった。

人の私物を勝手に弄るなんて失礼じゃないの?

飼い犬の躾くらいちゃんとしなさいよ!


そしたら好感度アップアイテムを取り出して、それを見た途端周りが違法薬物だって騒ぎだして、私はすぐさま先生に取り押さえられた。


違法薬物ってなに? ただの好感度アップアイテムじゃない!

私はヒロインなのよ!? こんなの許されるわけないじゃない!!

そう訴えてもみんなオバケでも見るような顔で怒鳴るだけで、逃げようとすれば頬をひっぱたかれるし本当に酷いやつら!


それでなんか牢屋みたいなところに放り込まれたんだけど、臭いし埃っぽいし食事は固いパンと味の薄いスープだし、トイレは隅に置いてあるやつだけでお風呂もない。鉄格子を揺さぶって見張りのおっさんに怒鳴っても、うるさいって大声で怒鳴り返されるだけ。


なんで私がこんなところに閉じ込められるのよ!?




それから三日くらいたった頃かしら。

牢屋前にいかにも地味~なモブ顔のおっさんが現れて、そこから私の地獄がはじまった。


どうやらこのおっさんは人を拷問するのが好きなクソ野郎だったみたいで、笑顔で私にひどいことをしてくる。

「知っていることを全部話せ」っていうから、自分が転生者で乙女ゲーの隠しキャラ目当てで好感度アップアイテムを使ったことを正直に話しても、デタラメを言うなって言われる


嘘じゃない!

本当に私は転生者なの!


許してくださいと言ってもやめてくれない。

何を言っても信じてもらえない。

なんで私がこんな目に………


誰か、助けて。














かつて綺麗だったであろう白い肌は見る影もなく、痛ましい火傷が隙間なく全身に刻まれている。

それを行ったファイグは焼きごての先で床をカツカツと叩きながら笑顔で問う。


「………で、君はどうやってアムロスを入手したんだい?」


「だがらぁ………あのろじうらでっ…!」


顔の穴という穴から体液を垂れ流して必死に言葉を絞り出すハンナに対し、ファイグは焼きごてを構え直す。


「購入場所はもう聞いたよ。君は誰からアムロスの存在を聞いたんだい?」


熱が伝わるギリギリまで焼きごての先を左胸に近づければ、ハンナは恐怖から頭を振り乱す。


「だがらっ……おどめげぇでじっだんだっでばぁ……! げぇえええええええええ!!!!」


およそ年若い娘が発するものではない絶叫を上げるハンナに、またかとため息をつく。

この小娘も同じことばかり言う。しらばっくれるならまだしも、意味不明な言葉の羅列を繰り返すだけ、これ以上虚言を宣っても苦痛が長引くだけだということをなぜ理解しないのだろうか。

はっきり言って犬よりも覚えが悪いハンナに呆れはてる。


「いい加減にしなさい。死んで生まれ変わるなんて妄言が公になったら、ドゥーラ教にも目をつけられかねないよ」


我が国をはじめ、世界最大派閥を占める宗教『ドゥーラ教』。

地母神ドゥーラを崇めるその教義によれば善行をなした者は天界に導かれ、悪行をなした者は冥界で永遠に裁きを受け続けるとされている。

なのに彼女は『自分が一度死んでから新しい人間に生まれ変わった』などと頑なに主張する。しかもその妄言から透けてみえる彼女の前世とやらは、他人の恋人を略奪して悦に浸る性悪女そのものだ。

ドゥーラ教の教義を否定するに等しい暴言である。

ファイグ自身はドゥーラ教徒ではないので特に思うところがないが、もし敬虔なドゥーラ教徒が聞けば殴る蹴るの末に火炙りにされてもおかしくはない。


「ほんどに………わらしっ、転生者なの……!」


このごに及んでまだ言うか。

もうこれ以上情報を吐く様子もなく、反応がワンパターンになってきたことにいい加減ファイグは飽きてきていた。


「じゃあ君がその『テンセイシャ』という存在である証拠はあるのかい?」


別に本当に証拠を求めたわけではない。

強いて言うならば冗談のつもりの一言でしかなかった。


「し、しょうご……? えっど……えど……あ!」


しかしハンナはこれ以上苦痛を受けたくないと、必死に頭を捻ってファイグの求めに合致しそうな知識を思い出す。


「じがいざくのっ、ひろいん! いばなら、みるふぁむらに、いる! ごしゃいれ!」


「………」


ミルファ村といえば王国の辺境に位置する農村だったはず。彼女曰く転生者しか知らない情報らしく、ひろいんのプロフィールとやらを必死に紡ぐ。

ファイグ自身はさして興味は湧かないが、一応部下に内容を書き留めさせておくのだった。

実際のところ、異世界の宗教に生まれ変わりって概念はあるんだろうか…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。