92 お揃い
部屋に戻って千鶴に水着を出してもらって絶句!
幼児体型なのに、このピンクのフリフリのビキニって何!
誰が買ったの?お母様の趣味?
ま、まさか……お父様?
ありえるかも!
絶対に着たくない。
”イヤだぁ~~”
ベッドの上で叫びながら、右から左へ左から右へと転がっている私に、千鶴が困り果てていた。さっき心に誓った事はもはや崩れ去っている。
お熱が出たって言おうか?いやだめだ、いつもの先生がこの船にいる。つまり仮病は使えない。
「愛梨花どうした」
困り果てた千鶴がお祖父様を呼んだみたいだ。わがまま愛梨花ちゃんを発揮した。
「新しい水着が欲しいの。これはイヤ!」
ピンクのビキニをお祖父様に投げつけた。パシッとお祖父様にあたった水着は、そのまま、ぽとりとベッドの下に落ちた。
お祖父様はそれを拾い上げて広げるとピシッと固まった。
んっ、石化した?
抱きしめていた枕の影からお祖父様の様子をそっと伺った。
「誰がこんな破廉恥な水着を愛梨花に……」
水着を持つお祖父様の手が、心なしか震えていた。そのままゴミ箱へポイと水着を投げ捨てた。
だよね、だよね、私はスクール水着で十分なの。中身32歳なんでピンクのフリフリのビキニなんて無理!!!
「お祖父様でしょ!自分じゃ買えないもん!」
お祖父様に濡れ衣を着せると再び、”イヤだ~~”と言いながら、枕を抱きしめたまま、またベッドの上をコロコロ転げ回る。お祖父様じゃないのはわかっているけど八つ当たりしちゃった。
お祖父様の眉毛が困ったように八の字に下がっていった。
「確か下にショップがあったな。買いに行ってみるか」
「本当?」
ガバッとベッドの上で勢いよく起き上がる。今泣いたカラスがもう笑った、ってやつだ。
お祖父様の顔を見上げるとお祖父様が破顔して、頭を撫でてくれた。
機嫌を直して買い物に向かおうと廊下に出ると龍一郎君と東郷寺のお祖父様が待っていた。
んっ?待ってたの?
「愛梨花ちゃん、大丈夫?」
龍一郎君が心配そうに駆け寄って私の顔を覗き込む。
あっ、そうか、お祖父様が急に呼び出されたから心配したんだ。ただ我が儘言ってベッドの上で転がっていただけなのに。
うわっ、やってしまった。なんて言おう……穴があったら入りたい。
「愛梨花の水着が小さかったからショップに行こうと思ってな、心配せんでよい」
お祖父様が私の頭をポンポンと叩いた。
えっ?
お祖父様の顔を見上げてから、龍一郎君の顔を見た。何だか気まずい。
まっ、そう言うことで。龍一郎君に精一杯の笑顔を向けた。
「一緒に選ぼうか?」
安心したような顔の龍一郎君に言われて、ピキッと笑顔が引きつった。
そ、それは勘弁して欲しい…水着を男の子に選んでもらう趣味はないよ。
クルッと振り向いて、助けを求めてお祖父様を見ると笑っていた。
「一緒に行ってみるかな」
そうしてショップに来てみれば船オリジナルのブランドでマークが可愛いの。水平帽をかぶったクマさんのロゴだ。
ふふ……可愛い!ショーケースには大きな水平帽をかぶったクマさんが飾ってあった。
西園寺様もやるじゃないですか!
ショーケースに両手をピタッと貼り付けて、食い入るように見ていれば、お祖父様が”海外の有名なブランドとのコラボレーションでクルーズ船オリジナルなんだよ”と教えてくれた。
ショップの中はアウトドア用のスポーツ用品が、洋服からカバン、小物まで揃っていた。もちろんゴルフ用のお洋服も充実している。
虎太郎君のお父様はゴルフ好きだものね!
水着もいくつかあって、龍一郎君が持ってきてくれたのは紺色のワンピース。裾はスカートになっていて後ろにリボンがついているの。
共布作ったパーカーは白。紺色の糸でリボンの刺繍が背中についていた。パーカーのひもは紺色の太いサテンリボン。前で結べるようになっていた。胸元には可愛いクマさんの刺繍。
龍一郎君のセンスは悪くない。
「可愛い。これにする。お祖父様どう?」
「ああ、可愛いな。愛梨花、わしもジャグジーに入るかな?」
ふふふ……わかってます。これは、お祖父様も選んでもらいたいのですね。
サイズはわからなかったから、大きめの海パンを手に取った。お祖父様には焦げ茶色で東郷寺のお祖父様には濃いグレーを選んであげた。もちろん小さくクマさんのロゴは入っている。
ちなみに龍一郎君には私とお揃いの紺の海パンがあったから見せてみた。水平帽をかぶったクマさんが後ろのポケットについている。
龍一郎君は手に取るとそのまま籠に入れていた。買うの?
可愛いよね!もしかして趣味一緒?
クマさんのワッペンがついた小さなリュックもある。リュックもお揃いがいいな。紺色と水色のリュックを手に取ると龍一郎君に見せた。
「お揃いがいいな」
「ふふ、じゃあ僕はこっちで」
嬉しそうに紺色のリュックを手に取る龍一郎君。
年よりも大人っぽく見えるけど、意外に可愛い物好き?海パンにもクマさんついていたのに嬉しそうだった。小さいリュックも喜んでいるし……
ふふふ……趣味一緒!
「船の中ではこのリュック持っていようよ」
私が言うと優しく笑ってくれた。本当のお兄様みたいだ。
「メモ帳とペンも買っていれようか」
「うん!」
ワクワクしながら選んでいると、2人で一緒に冒険に出る準備をしているみたいで楽しい。お揃いのリュックにお揃いのキャップまでかぶればもう完璧!
一緒にショップのクマさんと写真も撮った。後で虎太郎君にも見せるんだ。部屋へ戻る途中で私を探してさまよっている虎太郎君を発見。
「愛梨花ちゃん~~~何処にいたの?」
駆け寄ってきた虎太郎君に早速戦利品を見せた。龍一郎君がさっき撮った写真を見せると、虎太郎君はめちゃくちゃうらやましがって、お母様の手を引っ張ってショップへ走り去っていった。
後でデッキで会ったときには私とお揃いのキャップに水色のリュックしょって、手に持っていた小さなクマのマスコットを1つくれた。
「母様が愛梨花ちゃんにもって」
見れば虎太郎君のリュックには水平帽をかぶったクマさん、私のはピンク色のリボンを付けたクマさん。可愛いw
皆へのお土産はこれで決まりね!




