81 オリエンテーリング
我が家で催したガーデンパーティー以来、神馬君と御園君も虎太郎君や翔君との距離が縮まった。お友達が増えたのは良いことだと思う。
神馬君のご兄弟は空手習おうかな?なんて言っているらしい。高島の空手教室が人気だ。
1年生の1学期で1番大きなイベントはオリエンテーリング。
初等科の建物を覚えてもらう事と上級生との交流が目的だそう。2年生から4年生のお教室までそれぞれ展示やクイズがあって、そこに行くと事前に配られたカードに☆のシールを貼ってくれる。
グループでも、1人でも、自由にまわって良いそう。ただしシールは10枚以上貼ってもらわないとダメなんだって!
スタート地点は3カ所に別れていて、中庭、体育館前に校舎のエントランスだ。ちなみにゴールは視聴覚室になっていた。視聴覚室ってどこ?3年生にならないと使わないらしい……
お教室でもらったカードを片手にスタート地点にそれぞれ散っていく。事前に打ち合わせした虎太郎君と翔君の待ち合わせの体育館前に集合した。
すっかり?仲良くなった北川さんと神馬君に御園君が一緒だ。虎太郎君と翔君は誰も連れてこなかった。翔君は南條さんに誘われたみたいだけど断ったらしい。たぶん虎太郎君もそうだろう。律儀だね。嬉しいけど……
神馬君は4年生にお兄さんがいて、視聴覚室の場所を教えてもらったみたいだった。翔君もお姉さんが7年生と4年生にいるのだけど聞かなかったらしい。私もお兄様には聞いていないから、同じだね。ほとんど顔を合わせないから聞くのを忘れちゃうと言うか……
きっと、翔君の家も同じなのだと思う。
神馬君のお兄様や雪二郎君と翔君のお姉様は同じクラス?私が聞くと翔君は首を振った。違うクラスらしい。北川さんもお兄様がいて7年生だと言う。御園君は妹がいるんだって。一人っ子は虎太郎君だけだった。
皆兄弟がいて良いなぁ~~
あっ、一応我が家にも兄がいた。へへへ……
「虎太郎君は一人っ子で寂しくないの?」
私が聞くと、不思議そうな顔を私に向けた。
「生まれた時から翔がいたし、雪二郎に龍一郎も良く一緒に遊んでたから寂しくない」
「兄弟なんて、いれば良いってものでもないよ」
翔君が遠い目をしながら言う。
翔君はお姉様達に苦労している。お姉さんだと言うのもあるけれどね。可愛がってはくれるのだけれど、リボン付けたりスカートはかせたりと、着せ替え人形の様に遊ばれたはずだ。
翔君の名誉のために言うけれど、あくまでも小説情報だから。見てないよ!
でも翔君の言うことには妙に納得してしまう。前世の妹も良い思い出がない。古から兄弟の争いは多いのだ。特に親の財産や権力が絡むとろくな事はないから。
そう言うのは面倒くさいからイヤなんだ。お兄様が欲しければ何でもあげよう。そう心に決めた。両親もいらないからね。のしを付けてあげるよ。返品不可で!
体育館の中はアスレチックとお店屋さんが出来ていて、紙で作った飾りや、メダルなども用意されている。ゴールするとシールの数でチケットがもらえてそれと交換するみたいだった。ゴールした後でないと体育館の中には入れない。
入り口から覗くと、準備をしている生徒達が行き交っていた。後で行くのが楽しみ!
皆揃った所で出発だ。まずは2年生のお教室から。ここでは一年間にあった行事の写真や感想などがそれぞれのお教室に展示してあってお教室の隅に輪投げコーナーもあった。ここで輪投げが全部はいるとさらにシールがもらえる。
私以外は皆、余分にシールをゲットしていた。悔しくなんかないもん。大人だからね!
3年生のお教室では2年生のお教室でみた年間行事をあてるクイズが出されていた。ここではもちろん全員正解。シール、余分にもらったからね。
最後は4年生のお教室をまわってから、視聴覚室に行くんだ。視聴覚室は中等科の建物の中にあるらしい。
最後にまわったお教室で雪二郎君と神馬君のお兄様が待っていた。じゃんけんの勝ち抜きをやっていた。
ほほう、じゃんけんに運動神経は関係ない、関係ないはずなのに1回も勝てなかった。何故?
落ち込む私を、2人が”頑張ってね”と頭を撫でてくれた。
しかも、こっそり余分にシールも貼ってくれた。ご機嫌なんだ。それを見た虎太郎君が面白くなさそうに、”単純だね”と言っていたのは自分はシールを余分にもらえなかったからだと思う。
初等科から渡り廊下を渡って中等科の建物に入ると階段を登っていく。神馬君は走って駆け上っていった。ゴールはもうすぐだから、皆で走り出した。私は走ると転ぶから気をつけながら階段を慎重に上がって行く。
「「危ない!!!」」
突然の悲鳴に顔を上げると神馬君が階段の上から落ちて来る。
げっ!?危ない。
脳内の私は32歳。とっさに抱き留めようと両手を広げた。でも私の身体はまだ6歳。抱き留められるはずもなくそのまま二人して階段の踊り場に倒れ込んだ。
衝撃で目がチカチカする。神馬君は私の身体がクッションになったはずだ。私の上に倒れ込んでいるから。
「「愛梨花ちゃん!?」」
階段の上にいる虎太郎君と翔君に名前を呼ばれて手を上げた。
「大丈夫。だけど重い……」
「神馬、大丈夫か?」
御園君に声をかけられて神馬君が起き上がろうと顔を上げた。
「ごめん、滑った。お前大丈夫か?」
「お前早くどけ!愛梨花ちゃんが潰れるだろ!」
虎太郎君が階段の上から駆け下りてきて神馬君を引っ張った。
「うっ、痛っ。肘打った。引っ張るな」
御園君が駆け寄って神馬君を助け起こした。
「愛梨花ちゃん。痛いところはない?」
虎太郎君が手を差し伸べながら心配そうに顔を覗き込んでいる。足をひねったみたいだけど言うと心配するよね。取りあえず上半身だけ起き上がった。
「足が痛いから少しここで休んでいく。皆先に行っていいよ」
御園君が考え込んだ。
「保健室に行った方が良いね。先生はどこかわかるか?」
皆首を振った。今日のオリエンテーリングの地図に保健室は載っていなかったはずだ。つまり初等科の棟にはない?
「僕、雪二郎呼んでくる」
「神馬の兄貴の教室か?行こう」
御園君と虎太郎君が走って行く。
「あっ、おい待て」
慌てて神馬君が言うけれど、翔君と北川さんに止められた。
「神馬君も動かないで、怪我しているといけないから」
確かに神馬君は上から落ちたんだからどこを打っているかわからないものね。
「ごめん」
神馬君は神妙な顔をして私に謝った。
「私の方こそ受け止められなくてごめんなさい。痛かったでしょう?」
北川さんがあきれた顔をする。
「月光院さんは自分の実力を知った方が良いわよ。受け止めるなんて私だって無理だから」
「そうだ、お前は小っこいんだから」
「はいっ?少しは役に立てたと思うんだけど」
私はむくれて頬が膨らんだ。翔君が”まあまあまあ、落ち着いて”と肩をポンポンと叩いている。
少なくてもクッションにはなったはずだ。
ふんっ!




