74 君達がお友達?
ここ光星学園は不思議な学校だ。
初等科は1年生から4年生、中等科5年生から8年生、高等科は9年生から12年生となっていた。海外の学校をモデルにしているらしかった。
前世庶民の私には目にするもの全てが新しくて驚くばかり。室内プールにテニスコート、ジムに音楽ホール、総合運動場。なんと大学の施設の方にはゴルフ場まであるらしい……
残念な事に初等科は限られた敷地内しか使えないそう。初等科専用の図書室に多目的ホール、音楽室など。
初等科の校舎は中庭を囲むように4つあって学年事に1つのコテージになっていた。4年生のコテージには雪二郎君がいる事になる。知り合いが上級生にいるのはとても心強かった。
カフェテリアや食堂は中等科から使えるようになっていて、初等科の私達はお教室で定食を食べている。
お昼にはワゴンで飲み物をサービス?してくれるから好きな飲み物が選べるの。
うふっ!
いくつでもいいんだって!
何だか飛行機の機内食みたい。配ってくれるのは専用の人達で黒の制服に蝶ネクタイまでしていた。
凄い!給食係なんてダサイものは存在していなかった。
ちゃんとデザートまでついていて幸せ!
ただ気になるのがクラスメイト達。青空葵さんがクラス委員のせいか、女子は誰も話しかけてこなかった。もともと付属の幼稚園からはほぼ全員上がってきている。私が覚えていなくても皆の印象は悪かったんだと思う。
クラスの3分の1が同じ幼稚園出身だったみたいで、特に女子達は私の方を見てはコソコソと話していた。
おとなしい女の子に見えるせいか、あたりが強いのかも知れない。
誰かをターゲットにして仲間意識を高めたいって言う感じなのかな?
悪意のない意地悪。そんな感じ?別に良いんだけどね……
前世の記憶がある私は中身32歳なんで1人はどうって言う事はなかった。逆に1人の方が過ごしやすかったりもする。仕事でも家に帰っても1人で何でもこなしていた。好きなときに食べて好きなときに起きる。自分1人で完結してしまう。誰に気を遣うこともなかったから。
ふう~~~っ。
今私は、大きなため息をついてランチを食べている。私の目の前には、学級委員の御園君、その友人で私のおさげを引っ張った、神馬君が2人で並んで座っていた。
問題はこの二人だ。何故ここにいる?
席が近いわけではない。昼休みの鐘が鳴ると同時に私の所に来たの。
「お前、1人なんだな。一緒にいてやってもいいぞ」
いや、一緒にいない方がありがたいんですけれど、と心中で思いながらも知らんぷりをしていた。
「月光院さんごめんね。こいつは神馬 駿、本当は、謝りたいんだ。素直じゃないから」
品行方正そうな学級委員が言う。
学級委員の御園君は勉強も出来てスポーツもこなしそうな男の子で神馬君よりは少し背が高い。翔君や虎太郎君よりは低い感じかな。神馬君は御園君よりもさらに背が低いけどすばしっこくてやんちゃそう。きっといつも御園君が振り回されていそうな気がする。
「別に気にしていないから大丈夫です」
2人を見るとニッコリと愛想笑いも付けてあげた。
「じゃあ、そう言うことで一緒にランチだね」
「はっ?」
御園君はそう言うと神馬君と2人で、私の怪訝な顔をよそにサッサと机を並べてランチのトレイを持ってきた。そうして何故か3人でのランチタイムとなった。クラスメイトからはチラチラと視線が来ている。青空さんは明らかに私を睨んでいた。私の平穏な小学校生活が危ぶまれる。
え~~っ!イヤなんだけれど。目立たず1人静かに過ごしたい。それにお友達は女の子がいいの。恋バナしたりパジャマパーティーとかしたいもの。
この状況を見たら、忠犬虎太郎君がいつ殴り込んでくるかわからない。穏便な小学校生活を送りたいの。
そんな私の懸念をよそにいつの間にか3人でのランチタイムが定着していった。1日だけじゃなかった。
翔君もすみれちゃんもそれぞれのクラスでお友達も出来て仲良くやっているみたいだ。虎太郎君はいつも帰りにお教室の前で待っていてくれた。
初等科のエントランスまで一緒に帰っている。手をつなぎたがるのを3回に2回はかわしている。3分ぐらいの距離なんだから手は繋がなくても良いよね。私達はもう小学生だからね。つくづく、幼稚園の先生も余計な教育を……と思う。
すみれちゃんは杏奈ちゃんや他の知り合いの子と同じクラスになったみたいで最近はご無沙汰。クラス違うとやっぱり今までと同じようにはいかない。
翔君は青空さんが取り巻きをしていた南條さんと学級委員になったらしい。相変わらず女の子の人気が高い。卒園旅行で一緒だった柊 葉子ちゃんは翔君と同じ2組になったと虎太郎君が教えてくれた。
2組にはなるべく近づかない様にしよう。南條さんは虎太郎君と翔君がお気に入りだったから。
皆クラスが違ってしまった。幼稚園が一緒だったとは言え、私が仲良くしだしたのは去年の11月からなので、まだ5ヶ月にも満たなかった。小さい頃の5ヶ月なんてあってないようなもの。
そのうち私の事なんて忘れてしまうんだろうな~~
そう思いながら隣を歩いている虎太郎君を見た。どうしてこんなにも気を遣ってくれるのだろうか?クラスでは上手くやっているのだろうかと。
「虎太郎君はお友達出来たの?」
「友達作りに学校へ来たわけじゃないからな。それに仲の良い友達ならもういるじゃないか」
そう言うと握っていた手を上に上げた。
虎太郎君の言葉に、ついさっきまでお友達は女の子がいい、なんて言っていた自分が恥ずかしくなってきた。もうすでにお友達はいたんだ。大事な友達が……
「うん、虎太郎君は大切なお友達だよ」
私が言うと自分から言い出したくせに、照れて赤くなっていた。可愛い所もあるんだね。ふふ……
手を繋ぐぐらい我慢しよう。
私はクラスでは相変わらずのボッチだ。でもランチは3人で取っている。純粋なボッチではない。幸いなことに取りあえず皆見て見ぬ振りをしてくれた。
最近はお隣の北川さんが時々話しかけてくれるようになって来た。青空さんとご友人では?と思うのだけれどお友達になれるのなら良いなと思う。知的な雰囲気の美人さんだ。
それに男の子達はランチを食べ終わるのも速くて、食べ終わると中庭で遊び始める。一緒にドッジボールやろうと言われたときには引いた。笑顔が引きつっていたみたいで御園君が神馬君を有無を言わせないで引っ張っていった。ありがとう、御園君。
前世も含めて運動は苦手だ。何故か走ると転ぶから。
昼休みは図書室で過ごす事にしている。渡り廊下から中庭を見渡せた。虎太郎君達も元気に走り回っているのが見えた。
「愛梨花ちゃ~~ん」
向こう側から呼ばれて見れば雪二郎君が手を振っていた。お友達と一緒みたいだ。
「そこで、待ってて」
2人でこちらに駆けてくるのが見えた。2人とも走るのが速い。ここまであっという間。良いなぁ~~
「図書室に行くの?」
雪二郎君に聞かれて私が頷くと隣の友人と目が合った。すらりとしたスポーツマンタイプの男の子だ。日に焼けているからサッカーとかしていそう。
「友人の神馬、弟君が1年生にいるよ」
「えっ?神馬君のお兄さんですか?」
「へぇ~、もしかして君が月光院さん?最近弟がよく話しているから気になっていたんだ。弟は迷惑かけていないかな?」
かけられているけど、かけられているなんて言いづらいよね。いいつけるみたいだし。
「あ、あの~ランチをいつもご一緒していて……」
「えっ!まさか2人でランチ?」
そこに雪二郎君が食い付いた。
「あっ、2人じゃなくて御園君もいるから3人です」
「女の子はいないの?」
雪二郎君は痛いところを突いてくる、まだいないというか、もしかしたらずっといないかも知れないというか……
「まだお友達出来なくて、でも神馬君達が仲良くしてくれる……から……」
「そうか、駿の友人なんだね。今度家に遊びにおいで、駿に言っておくから」
えっ、と思って、助けを求めて雪二郎君の顔を見た。
「神馬、勝手に誘うなよ。愛梨花ちゃんは忙しいんだから困っているだろう」
何だかとんでもないことになってるぞ。神馬君の家に行きたくない。嫌いじゃないけどそれ以前の関係だし。
「お前には聞いてないよ。なっ、月光院さん」
「雪二郎様がご一緒の時になら」
「そうだよね、兄様も行きたがるし」
「お前達兄弟は仲が良いな。アニキまで来るのか?いいね。母様が喜びそうだ」
「じゃ、またね」
雪二郎君はまだ話したそうな神馬君を引っ張っていった。2人してこちらに手を振ってくれている。
お友達って良いな。でも自由な人だったな。
名前にルビ入れました。神馬 駿




