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27 お父様に仕返し


 別荘に着くやいなや、リビングのソファー座らせられた。


 高島がコーヒーテーブルの上にバンと音を立てて手を置いた。


 手の下からハンカチとあめ玉が覗いている。


 大きな音にビックとしてしまった。


 隣に座った龍一郎君が手を握ってくれた。


 ハンカチを拾ってくれたんだ。


 目の前に座った高島は私と目を合わせる。


 目がすわっている!これはかなり怒っている。まっ、まっ、まずいかも。


 「お嬢様、そりにはGPSが着いていたんです。迷子になったら動いてはダメです。毎回毎回、自ら危ないことに飛び込んでいくのは止めて下さい!」


 普段寡黙な高島の、お説教が永遠と続いた。


 ”知らない人”発言がショックだったのか、全く解放してくれる気配が無い。


 私は頬を膨らませたまま知らんぷりしていたが、そろそろあきてきた。


 助けを求めて龍一郎君の顔を見る。


 ずっと一緒にいてくれるのはありがたい。


 龍一郎君は笑いながら立ち上がると、高島の肩をポンと叩いた。


 「夜は皆でディナーだよ。用意しておくようにね」

 「高島、ありがとう。そのハンカチあげるね。あめも食べてね」


 高島はやれやれというように、頭に手を当てた。


 私はリビングを出ると、大きなため息を1つ、ついた。


 高島は意外とねちっこい、気をつけよう。


 龍一郎君と目が合った。


 「疲れた?」


 私は首を振る。


 「おなかすいた」


 雪二郎くんがやって来て手を引っ張った。


 「ランチ行こう」

 「うん」


 皆の方が大変だったに違いない。もうお昼も大分過ぎてしまった。


 お腹はペコペコだ。一応運動もしたしね!


 虎太郎君と翔君は1度自分たちの家へ帰っている。


 夕方にはレストランで落ち合う。


 お祖父様達は警察とのやり取りで忙しいらしくてまだお会いしていなかった。


 今日のお昼は和定食。


 私はお子様ランチ。


 ハンバーグは和風おろしハンバーグになっている。


 お子様ランチなのに小さなお重が3段重ねだ。


 デザートはいちご大福、よもぎといちごのアイスが添えてある。しあわせ!!!


 突然ダイニングにお父様が飛び込んできた。


 今まさに、いちご大福を食べようと思った所なの!


 いきなり私を抱き上げると、頬を寄せてきた。おひげがジョリジョリする。


 痛いし、暑苦しい事この上ない。


 「愛梨花、掠われたと聞いて飛んできたんだ」


 イヤ掠われてはいないから、それに人間は飛べませんお父様!


 「それは誤報でしたね」


 私は冷ややかに言ってお父様の肩を叩いた。


 降ろして欲しい。アイスが溶がけるから。


 「お父様も一緒にお昼を食べましょう」


 こてんと首を傾けてお父様を見る。ふふっ。お願いポーズだ。


 お父様は空いている椅子に腰掛けると、そのまま私を膝の上にのせた。デザートが遠い……


 「デザートが食べたいの」


 お父様は笑いながらデザートのお皿を引き寄せてくれた。


 しかしこの状態では食べにくい。アイスが溶けかかっているので構ってはいられない。


 「龍一郎君達のご両親は警察に行ってるよ。用事が終われば来るから」

 「うちの敷地内に怪しい奴が潜んでいたなんて、信じられません」


 龍一郎君がお父様に話している。


 しっかり者の龍一郎君東郷寺家の未来は安泰だね。


 「愛梨花ちゃんには怖い思いをさせてしまって申し訳ありませんでした」


 龍一郎君が立ち上がってお父様に頭を下げた。


 そんな、龍一郎君は悪くないのに。

 

 ちょうどたくさん頬張った所だったから、モグモグしてしまって話せなかった。


 「ん、ん、ぐっ、む!」

 「愛梨花、黙って食べなさい」


 お父様の顔を見て首を振る。


 「大丈夫、わかっているから。龍一郎君も座りなさい」


 お父様が笑いながら手を振る。


 「誰も悪くはないから、大丈夫だ。悪いと言えば私達保護者がちゃんと愛梨花に付いていなかったからだ」


 やっと口の中の物を飲み込んだ。


 口の周りにはよもぎアイスが付いて緑になってしまった。


 お父様が笑いながらナプキンを手に持った。


 お父様の手からナプキンを奪うと、ポイッと後ろに投げた。


 お父様の胸元に飛び込むと、真っ白なワイシャツに顔を埋めて口の周りを拭いた。


 お父様のワイシャツによもぎ色がたくさん付いた。


 顔をあげると、驚いた様なお父様と目が合った。


 口角を上げる。不敵な笑いをしたつもりだ。


 ふんっ、これでどこにも行けない!


 お父様はクリスマスイブにはいなかった。


 思い知るが良い!


 隣で東郷寺の兄弟が肩をふるわせてテーブルに伏せっていた。



              ♢     ♢     ♢


 クリスマスディナーは山の上のリストランテ。


 小高い丘の上の一軒家だ。


 山小屋風の建物に入ると真ん中に大きな薪ストーブが置いてある。


 グランドピアノもあって吹き抜けの天井は太い木の梁が組まれている。


 今日はここで龍一郎君がピアノを弾いて子供達で高島に歌を披露することになった。


 もちろん高島は知らない。


 1人1人が高島の所に行ってドレミの歌を歌うの。


 そして最後には皆で聖夜を合唱することになっていた。


 喜んでもらえるといいな!


 テーブルは家ごとに、東郷寺家5人、西園寺家と花巻家5人そして月光院家に高島が加わって4人の3テーブルだ。


 しかもクリスマスに貸し切り。


 良いのか?リストランテ?


 お父様は別荘で温泉につかってしっかりと着替えてきている。


 私のよだれマーク、もとい、キスマークはどこへ行ったのかな?


 まっ良いか。


 ディナーも一通り終わると会場の照明が落ちた。


 高島にスポットライトがあたる中、子供達がキャンドルを持って1人づつ、歌いながら高島の周りに集まっていく。


 小さい順なので私が一番最初だ。


 高島は最初何のことかわからずキョトンとほうけた顔をしていた。


 モジャモジャの眉毛が下がっていておかしい。


 スポットライトが自分だけな事にようやく気がついたのか、何故か立ち上がって一緒に歌い出した。


 うける!


 最後にありがとうの文字が入ったケーキが登場して、スタッフの人達がクラッカーを鳴らしてくれた。


 何故か泣き出した高島。


 私は身の危険を感じてお父様の側へ避難した。


 絞め技をくらったらたまらない。


 誰も絞める事も無く無事に皆で聖夜を合唱できた。


 めでたし、めでたし。


 これにて、一件落着。


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