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スライムと夏の思い出



つぎは、ぼくらの番だった。


「ゼラ、です!」


ぼくはエリに名乗ったときと同じように、元気よく挨拶をした。


「ほっほっ。元気がいいなあ。それで君は……きみたちは、何を見せてくれるのか?」


「はい。わたしから発表します」


自ら進んで前に出たアリシエは、

胸を張ってぼくを指さした。


「わたしは、彼を作りました」


「――っ……んん?」


笑顔で発言したアリシエにくらべて、周囲の反応は薄かった。というか、みんなが呆然としてその発言の真意を探るように黙っていたのだ。


「……おい、じいちゃん。これってひょっとしてあれか? 彼を作りました=この年で彼ピを作っちゃいました、テヘ☆ってか? このガキいっぱつ殴っていいか?」


「お前は黙ってろイェリス」


ただひとり、大魔法使いのローズだけが深い眼差しを向けていた。


「……ゼラくんとアリシエちゃん、と言ったか」


「は、はい」


「詳しく聞かせてもらえるかな」


ローズは姿勢を正し、座りながら体を支えていた杖をにぎりなおして前のめりな体制になる。それだけ、真剣に聞いてくれるということだ。


「1から説明させていただきますと、わたしはこの夏――お散歩のとちゅうでいっぴきのスライムを拾いました。その子は、木から落ちそうになってくれたわたしを助けてくれて、お友だちになってくれました。……言葉がわからなくて、おたがいに意思そつうができなくて困ったこともあったけど」


「ふむ」


「ある日、とつぜん彼はしゃべれるようになったんです」


「……ふうむ」


アリシエの話に耳を傾けているローズは、ずっとなにかを思案するように真白のひげを触っていた。孫のローズはチンプンカンプンな顔をしながらも、お祖父ちゃんの手前あくびを噛み殺すように耳を傾けていた。


「私たちはいっしょにこの夏を過ごしました。彼はひとに変身できるようになってから、いっぱい言葉を練習して、体を動かせるようになって。今、こうしてここにいるんです。――わたしが発表したかったのは、彼といっしょに過ごした、夏の思い出なんです」


「――」


アリシエの、ひまわりのような笑顔に。

周囲からは、ワッと拍手が上がった。「ピューイッ」っと口笛を吹くものもいる。ラインは笑顔で手を鳴らし、ローズの孫は「けっ」と床につばを吐いている。


「……おほん。みな、静粛に」


大魔法使いのせきばらいで、スンと静まり返る室内。


「みな、とても個性に溢れたすばらしい研究の数々だった。今日はこんな老いぼれの元へ、来てくれてありがとうの。――すばらしい素質を持った魔法使いのひな鳥たちよ。これからもその羽ばたきを、絶やさぬことを期待する!」


夏の発表会は、ローズの力強い閉会のことばを持って終了となった。



発表会が終わったそのすぐ後は、興奮さめやらぬといった様子でざわざわとざわめく子どもたちをあやすのに、先生も必死である。アリシエとラインも手応えを感じているのか、その頬はいつもより紅潮しているように見えた。


「さっきの二人、ちょっといいかな」


そこに、声をかけたのはローズだった。


「大魔法使い様」


ラインはすぐに膝をつき、あわててアリシエもそれに習った。


「よいのだ。それよりも、さっきの話」


「……さっき? ゼラのことですか?」


こくりと、ローズはうなずいた。


「――もっと話が聞きたい。奥でお茶でも飲まないか?」



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