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されどスライムは都市を歩く

みなさん、小学校のころの自由研究の思い出はありますでしょうか。

僕は特にこれといってありませんが……強いて言うなら、粘土で目玉親父を作りました。気持ちが悪くておやに捨てられました。



ただのスライムだったぼくは、その日アリシエといっしょに空を飛んだ。

彼女はほうきの操縦が上手く、まったくゆれを感じない。


「どう、ゼラ。気持ちいい?」


ふりかえったアリシエが、満点の笑みでぼくに問うた。


「――」


「……ゼラ?」


答えないぼくに、アリシエはもう一度目を向ける。


――晴れ渡る空と、大きな入道雲。


その中心を、いま。

ぼくは飛んでいる。


ただ目の前に広がる光景に、ぼくは思わず息を飲んでいたのだ。

森で見たどんな自然よりも。どんなに大きいモンスターよりも。

その光景は美しくて、ただ言葉を失っていた。

木の上に登って空を見るだけでは得られない、

この高揚感と爽快感は――


「さい、こうだよ。――アリシエ」


自然と涙がこぼれた。

ああ、また「泣き虫」だと言われてしまうかな。


「……そっか!」


その言葉は、街についても彼女の口からは出なかった。





「あ、来ましたよ先生!」


目的の都市――バーティカルに着くと、魔法学院の生徒たちがたばになって集まっている場所があった。その近くにふわりと着地すると、なかのひとりが飛び出して先生のもとへ走っていった。


「……もう、遅いですよ。アリシエさん」


「えへへ。すみませーん」


かわいらしく舌を出してあやまるアリシエに、担任と思われる女性の先生は「まったく……」と額に手を当てて苦笑していた。


「すぐに移動です。準備してください」


「はーい」


「――皆さんも、これから行くのは『大魔法使い』ローズ様のもとです。くれぐれも失礼のないように、先生の前ではお行儀よくするのですよ」


「「「はーい」」」


元気な小学生たちの声が重なった、くだんの魔法使いのもとへの移動を開始する。



――中央都市バーティカル。

都市の近隣には自然にあふれた大地が広がり、街のいたる所に水路が広がっている。

レンガ造りの床や屋根が軒を連ね、大きなギルドが点在することから、駆け出しの冒険者たちをよく見かける。大陸航路における商業的な重要拠点でもあるとても発展した都市だ。

『大魔法使い』の家は、その中央に大きくドドン! と構えられているという。



「――めずらしいわね。アリシエが遅刻するなんて」



がやがやとした集団移動のさなか、

一人の女の子がアリシエに話しかけた。


「いやー聞いてよ、ライン。ゼラがねぼうしてね?」


「どうせあなたもでしょ?」


「むーっ! ひっどーい」


口元に手を当てて上品にほほえむ彼女の名は、ラインというらしい。


「じょうだんよ。べんきょう好きのあなたが、

今日という日を軽んずるわけがないもの」


「こんどのテストは負けないよ、ライン」


「――こっちのセリフよ。もちろん今日の発表会も、ね」


バチバチと彼女たちの視線のさきで花火が散っていた。

どうやら彼女には良きライバルが多いようだ。


「……ところで」


ラインの視線が、ちらりとこちらを向く。


「その子がうわさの『自由研究』かしら」


「そう! わたしの自慢のゼラだよ」


そういえば今日は、生徒たちが『夏の自由研究』を発表する日だった。

ぼくが彼女の研究対象とエリから聞かされたときはおどろいたが、

そのおかげで、今こうして人間としてこの地に立っているのだ。


アリシエの好奇心には、感謝しなければいけない。


「それはいいことね――私の名前はライン。よろしくね、ゼラくん」


「よ、よろしく……おねがします」


とても大人びた少女だった。魔女のローブは肩のところが透けた仕様になっているか、そもそも生地がない――の2択になっているらしいのだが、彼女は初等部の生徒でありながら十年前のエリにも負けず劣らずの色気と上品さをただよわせている。



「さて、そろそろ着くわね」


ラインとの雑談に花を咲かせるうちに、目的地に着く。

そこはひとことで言えば……


「……豪邸ね」


小さな遊園地ほどもある敷地のなかに、それはあった。






ライン――リアルでは絶対にいない大人びた上品なJS。魔法の成績はいつもトップで、次席のアリシエとはいつも火花を散らしています。友だちの中ではまとめ役で、よく他人からも頼られるような人格者。将来は人々を救えるようなすばらしい魔法使いになるこが目標。男性の好みは、普通な人。


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