⑦ 京子と弓子
京子と弓子は、テレビ塔すぐ下の久屋大通公園で、ベンチに座って、お互いの伴侶の帰りを待っていた。
「こうして二人きりでお話するのも、久しぶりね?」
京子が沈黙を破る。
「昔は、色々と有りましたから……。」
弓子がそんな風に答える。
「……あの頃のアタシは、自分が一番、雪村君の事を理解しているという自負があったから……でも、ソレと愛される事とは、別モノだったわ。」
「……私は……何もしていない。知らないうちに、雪村君に愛されていた。」
「それが、未だに悔しいポイントよ。それでも貴女は、彼にそれとなく好意を伝えていたはず。」
「何となく覚えているのは、小学生の頃かな。確かに私は、彼の事が好きだった。でも中学生になって、しばらくしたら、私、入院してしまって……。」
「そうだったわね。アタシが病室に押しかけて、もう雪村君の事は諦めるように、貴女に引導を渡した。あの時は…悪かったわ。アタシも若かったのよ。」
「……もう昔の事よ。忘れましょう。今はアナタも幸せなんでしょう?」
「そうね。事実婚とはいえ、アタシの相手は"あの"サン・ジェルマン伯爵ですからね。」
「……ねえ。」
「なあに?」
「不老不死って、どんな感じなの?」
「ああ、貴女たちは、そうじゃないものね。」
「……で、どうなの?」
「なんだ。貴女がそんな事に興味が有るなんて、意外だわ。確かに私は或る日、永遠の23歳になったわ。そして彼は、永遠の35歳。そうね。概ねイイものよ。」
「どんな事が?」
「お肌にシワは寄らないし、大怪我しても、割とすぐに治るしね。」
「……そうなんだ。」
「貴女も成りたいの?不老不死に。」
「私は……雪村君と一緒にちゃんと歳を重ねて生きたい。」
「じゃあ、イイじゃない。何か問題でも?」
「私は元々、あんまりカラダが丈夫な方じゃないから……雪村君のこれからの人生にとって、足手まといになりそうで。」
「……それならいっそ、不老不死になろうかって?甘いわねえ。いつまでも歳をとらない者は、もはや人外よ。数年後に、同じ場所で観測されたら危険だし、チームのメンバー以外に、オチオチ友人も持てないわ。」
「……そうよね。」
「それに、あのバケモノじみたチカラを持つ雪村君だって、歳をとるんだから、貴女だけいつまでも若かったら、釣り合いが取れなくなるでしょ?」
「……そうなのよね。」
「まあ、これからも彼に、しっかりと守護してもらう事ね。」
「うん、そうするわ。」
「それにしても、あの人たち、遅いわね。」
「……そうね。」
そしてまた二人は、沈黙したのだった。




