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「雪村と古代エジプトの神々」(セーラー服と雪女 第25巻)  作者: サナダムシオ


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㉙ 一応の決着

 すると、すっかり炭化した首の中から、何やら黒いモヤモヤしたモノが、フワリと出て行った。

「アレが本体ですね。」

 伯爵が呟く。


「アレは……見逃すのかしら?」

「抹殺する事が目的ではないので……今後の悪魔的な活動を、自粛して頂けると幸いなんですがね。」


「伯爵は、お優しいのね。」

「そうですよ。今まで、どう思われていたんですか?」

「……もちろん、知ってたけど。」

 京子はそう言って、静かに笑った。


「まあ、アレを"悪魔"と呼んでいるのは、ニンゲンだけなので……実際にはこの三次元世界での、四次元人の存在の仕方の、一例に過ぎないのですよ。」


「……でも、魂を取られるのはイヤだわ。」

「そうですね。その点は私も同感です……さあ、そろそろ帰りましょうか?」


 やがて二人は、黄色いビートルに乗り込むと、速やかに、帰路に就いたのだった。

 帰りの道すがら、助手席のサン・ジェルマンが、京子に語リ掛ける。


「先程の、如何にも悪魔っぽい、異形の姿を見て、京子さんは何か、思い当たる事はありませんでしたか?」


「それは……何かしら歴史上の、有名なモノって事かしら?」

「そうです、そうです。」


「……頭に角が有り、足には蹄を持った人物……ミノタウロスね?」

「そう、古代ギリシアのクレタ島……クノッソス迷宮に居たと言われている……。」 


「確か、食料として、9年ごとに各7人ずつ、若い男女の生贄を、捧げられていたのよね?」


「はい。恐らくそれは、精神体のエネルギーを、得るためだったのでしょう。最後は、知恵と戦略の女神、アテナの使いの、テセウスに退治された事になっています。」


「ああ、あの、"テセウスの船のパラドックス"で有名な……。」


「……はい。"全ての部品を入れ替えて、修繕した船は、果たして、元の船と同じと言えるのか"という……そのテセウスです。まるで"我々三次元の存在"の事を、指しているかのようですよね?」


「成る程……確かに。"ニンゲンの細胞も、5年もしたら、すっかり新しいモノに、入れ替わる"らしいもね。」


「実は彼の正体を、タイムトラベラーだと睨んでいるのですよ。そしてその船はタイムマシン。まるで悪魔の成り損ないのような、ミノタウロスは、四次元人の成れの果てではないかと。」


「有りそうな話ね。まさか今から、確かめるつもりなの?」

「まあ、それも無粋な話です。やめておきましょう。」

 サン・ジェルマンはそう言って、薄く笑ったのだった。


挿絵(By みてみん)

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