㉚ フルカネルリ卿再び
京子とサンジェルマンが、名護屋テレビ塔の、亜空間レストランに戻ると、そこにはまた、招かれざる客人が、まるで我が家に居るような顔で、寛いでいた。
フルカネルリ卿だ。今日もグリーンのスリーピースをオシャレに着こなしている。
「おや、サン・ジェルマン伯爵、それに雪女の奥方も、お帰りなさい。首尾は如何でしたかな?」
「フルカネルリ卿も、余程暇だと見える。それとも何か、この私に執着する理由でも有るのかな?」
伯爵はそんな答え方をした。
「どうやらキミは、私からの忠告を真摯に受け止め、悪魔捜しを始めたようだね?感心、感心。」
「そうかい。私はてっきり、貴君の悪魔コレクションの邪魔をしていないか、心配していたのだが……。」
「とんでもない。私はただ、キミの視野を、広げたかっただけなのだよ。来るべき決戦の日に備えてね?」
「それは……1999年の7月の事を言っているのかな?」
「さあ、どうかな?……ああ、そうそう、ミノタウロスの件は、私の方で既に解決済みだから、キミはタッチする必要は無いからね。」
「……成る程。そういう事ですか。」
二人の間に、目に見えない火花が散っている感じがする。バーカウンターの後ろで控えていた、由理子と鷹志は、ソレを見ながらヒヤヒヤしていた。
「まあ、いいさ。キミの元気な顔を見られて、私も安心したよ。これからも引き続き、悪魔の調査に励んでくれたまえ。」
そう言うと、フルカネルリ卿は立ち上がり、また煙のように消えてしまった。
「アイツ、全く意味不明ね?一体何しに来たのかしら。」
吐き捨てるように、京子が言った。
「お二人が帰還されるまでは、当たり障りの無い、お天気の話をしてましたよ。最近の気候をどう思うとか、今後の日本からは、春と秋が無くなるかもしれないよ、とかね。」
鷹志がそう言うと、伯爵の表情が少し曇った。
「彼がそんな事を……。」
「あと、ユリちゃんが、彼に会った事がある気がして、しょうがないって……。」
「鷹志、それは……勘違いかもしれないから。」
由理子が慌てて訂正しようとする。
「いや、その感覚は大事ですね……覚えておくとしましょう。」
伯爵はそう言って考え込んだ。
まだまだ"悪魔"の追跡は、続けなければなるまい。
それに、"旧友"のフルカネルリ卿の動向にも、要注意だ。
こうして、チーム・サンジェルマンの冒険は、いよいよ混迷を極めるのであった。
以上で第25巻は完結です。
引き続き第26巻も、よろしくお願いいたします(>ω<)




