㉗ 悪魔のカタチ
ソレを追跡すると、隣街でも、先程と全く同じ行動をしていた。確かに不審な動きだが、ギリギリ不法侵入ではない感じだ。
「ねえ、伯爵。アレは一体、何者かしら。そして、何をしているのかしら?」
京子はとうとう我慢出来なくなり、助手席でずっと黙って見ている、サン・ジェルマンに尋ねる。
「そう言う京子さんも、実はある程度、自分で推測出来ているんでしょ?」
逆に伯爵が訊き返す。
「アレは……どう見ても"悪魔"よねえ?でも、何をしているのかまでは……分からないわ。」
京子は仕方無く、ベタな解答をした。
「……そうですね。アレは確かに、この三次元世界で、"悪魔"と呼ばれている存在です。」
伯爵が同意する。
「ただ、その実体は、タチの悪いタイプの、四次元の住人です。彼等は通常、この世界の誰かのカラダを借りて、実体化しています。」
「……そうよね。そのために、その人の精神体……つまり魂を少し頂いて、宿主の体内にスペースを作るのよね?」
「そうです。そして場合によっては、完全に相手のカラダを乗っ取ります。ただ、実体化するための裏ワザのようなモノが有るのです。」
「……それって?」
「それが……今彼がやっている、あの行動です。」
「……だから、一体何を……あっ、まさか。」
「そうです。たくさんのニンゲンから、少しずつ魂のエネルギーを集めるのです。そして、それを原動力にして、この世界に漂うデータから、三次元のカラダを構築するのです。」
「アレは……一階の住人は玄関先から、二階の住人は屋根の上から、それぞれ遠隔操作で、精神体のエネルギーを吸い取れるのね?」
「そうです。しかも、取られた方は全く気づかない……正に完全犯罪ですね。ただ、この手法で手に入れたカラダは、なかなかニンゲンの形には成りにくい。どうしても、三次元世界のノイズのようなモノが入り込んで、あのような色々な動物が混ざったような、キメラ姿に成るのです。」
「じゃあ、魂のエネルギーを、集めれば集める程、少しずつニンゲンの姿に近く成るって事?」
「まあ、そういう事です。」
「……泥棒は、犯罪よね?」
「そうですね……どうします?」
「当然、止めるわよ。」
京子はそう言うと、ビートルを町外れに降ろして、光学迷彩を透明モードから、馬車モードに切り替えた。
二人はクルマから出ると、"悪魔"を探す。
居た。どうやら最後の家の訪問を終えて、帰ろうとしているらしい。




