㉔ 本物の動物使い
途端に、辺りの草むらがザワザワし始めた。
鷹志は咄嗟に、二人の周りに電磁防壁を出した。
由理子は、何かを必死に念じているようだった。
現れたのは、やはりネズミの大群だった。360度、すっかり取り囲まれてしまったようだ。電磁防壁は、触れると感電するはずだが、痛みを感じないのか、ヤツラはどんどんよじ登って来る。
喰い破られるのも、時間の問題かも知れない。
そんな恐怖をふと感じた時、鷹志は不意に、頭上が暗くなった事に気づいた。
鷹志と由理子の真上から、巨大な何かがやって来る。アレは……怪鳥ケツァルコアトルスだ!
その巨大な鳥は、舞い降りるのと同時に、鋭いかぎ爪で笛吹き男を文字通りワシ掴みにして、あっと言う間に舞い上がった。
そして、二人の目の前で、その男の胴体から頭を、むしり取ってしまったのである。
男の首から血が噴き出す。
構わず、ケツァルコアトルスは、それを掴んだまま、遠くの方に飛び去ってしまった。
そのあとには、二人の足元に、笛吹き男の頭だけが、転がっていたのである。
「……因果なモノさ。」突然、その頭が喋り出した。
二人は、ビクッとしてしまった。
「こんな姿になっても、なかなか死ねないんだ……何しろ、悪魔に魂を売ってしまったからねえ。ああ、でも、やっと眠くなって来た。これで漸く、ゆっくり眠れそうだ……。」
そう言ったきり、男の頭は静かになった。
どうやら、本当に死んでしまったようだった。
すると男の頭の中から、何か黒いモヤモヤしたモノが出て来た。そしてそれも、空中に舞い上がって、やがて二人の視界から、消え去ってしまった。
いつの間にか、あんなに居たネズミたちも、何処かへ去っていた。笛吹き男のコントロールから自由になったのだろう。
「……違うのよ……私、そんなつもりじゃ無かった。」
由理子が呟いた。
「大丈夫。分かっているよ。」
鷹志が彼女の肩を優しく抱きながら囁く。
「私はただ……ケツァルコアトルスに"助けて"って、お願いしただけなのに。」
「もう、いいから。気にしないで。おかげで僕らは助かったんだから。」
「まさか……こんな酷い事になるなんて。」
「相手は、笛吹き男だった。そのチカラを封じるには、コレしか方法が無かったんだよ。あの怪鳥は、ユリちゃんの危機を回避するために、最善策を選んだんだよ。」
「本当にそう……なの……かしら?」
「そう考えるようにしよう、ユリちゃん。」
鷹志は、何度も彼女を慰めた。




