㉓ 穴の出口で
二人がしばらく歩いた後、穴から出ると、そこは懐かしい地下世界だった。
いつの間にか、全ての子どもたちは、どこかへ消え去っていた。別の横穴でもあったのだろうか?そして、件の笛吹き男だけが、こちらを向いて仁王立ちになり、二人を待っていたのである。
「これはこれは……母性愛の神アセトではないか。そっちの男は、確かアヌンナキにスサノオの称号を貰ったとかいう、青年だな。」
笛吹き男の方から、話しかけて来た。
どうやら、相手のウチなる者が見えるのか、過去を読めるのか、何かしらのチカラが有るようだ。
「貴方は一体、何者なの?」由理子が男に尋ねる。
「……悪魔だと言ったら、どうするね?」男が不敵に笑いながら答える。
「子どもたちは……どこへやったんだ?」鷹志も尋ねる。
「全て供物として頂いたと言ったら、どうするかね?」
男は質問に質問で答えた。
「この地下世界の女王ウアジェットとは、知り合いなの?」
重ねて尋ねる由理子。
「さあな。知っているような、知らないような……どうだったかな?」
のらりくらりと、はぐらかす男。
「子どもたちを、返すつもりは無いのか?」鷹志がまた尋ねる。
「イヤだね。アレは対価として頂いた。そもそも、私は金貨100枚でいいと言ってやったのに、ソレを拒否したのはニンゲンの方だぞ。私に非は無かろう……愚かな奴らめ。」
「……それは、少し違うな。」鷹志が呟いた。
「なに?」少しだけ表情を変える笛吹き男。
「キミは、僕たち二人の正体に、いち早く気づいた。つまりキミには、相手の心の中を読むチカラが有るんだ。そのチカラで、市長が断る事も読めていた。だから最初からキミの狙いは、130人の子どもたちの魂だったんだ。」
「何故そんな事を?」由理子が、鷹志に尋ねる。
「決まっているさ。ニンゲン側に罪の意識を持たせ、自らの行ないに、正当性を持たせるためだよ。それこそが、悪魔の考えそうな事さ。」
「オマエは、ニンゲンにしては、少しは賢いようだな……よし、敬意を表して、全力でお相手しよう。」
男はそう言うと、笛を構えた。
「ユリちゃん、コレを!」
鷹志が、どこに隠し持っていたのか……小型のヘッドホンを取り出し、由理子の頭の後ろから、被せるように取り付けた。そして、自分も同じモノを装着する。
「私の奏でるメロディが、キミたちに向けてのモノとは、限らないぞ?」
男はニヤリと笑ってそう言うと、おもむろに笛を吹き始めたのだった。




