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「雪村と古代エジプトの神々」(セーラー服と雪女 第25巻)  作者: サナダムシオ


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⑲ 悪魔を成敗

 次に男は、その場から一歩も動かずに、ナイフを持った右腕を振りかぶり、そのまま素早く、縦に振り下ろした。


 雪子が横っ跳びによけると、すぐ後ろの街路樹が、真っ二つになってしまった。いよいよニンゲン技ではないようだ。


「……どうやら、遠慮は要らないようね?」

雪子はそう呟くと、素早く男の後ろへ回り込み、右手で男の首を掴んだ。

 男は慌てて、顔を後ろに捻じ曲げようとしたが、もう手遅れだった。


「悪魔とともに、永遠におやすみなさい。」

 彼女がそう言うと同時に、右手にチカラを込めると、男の頭が、あっと言う間に炎に包まれ、一気に燃え上がった。


 雪子は男から少し離れて、段々黒焦げになっていく、その頭部を眺めていた。

 ニンゲンの皮膚の下から、爬虫類の鱗が出て来る気配は無い。どうやら彼は、アラハバキの一派ではなく、正真正銘のニンゲンのようだった。


 しかしよく見ていると、煙とは別の、黒いモヤモヤした塊が、男のカラダから出て来るのが分かった。

 雪子は、素早く左手から稲妻を放ち、それも蒸発させてしまった。


「これでよし、と。でもいよいよ、悪魔が実在すると、信じざるを得なくなってしまったわね。」

 倒れた男の遺体を眺めながら、彼女は呟いた。


 すると、いつの間にか、物陰に隠れていたらしい、4名の黒いスーツを着た男たちが現れ、雪子の方に拳銃を向けながら、切り裂きジャックの遺体を、暗がりに引きずって行ったのだ。


 雪子はそれを、別段、咎める事も無く眺めていた。

 やはり彼は、何処かの貴族のバカ息子なのだろう。或いは彼等は、例のメン・イン・ブラックかもしれないが……いずれにせよ、遺体は死因を偽り、秘密裏に処理されるに違いない。


 このようにして、切り裂きジャックの正体は、闇に葬られるのが、どうやら歴史の定めるところらしかった。


 スッキリしない気分のまま、雪子が、馬車に擬装したクルマまで戻ると、そこに、先程の刑事が待ち構えていた。


「やあ、お帰り。切り裂きジャックは、どうなったかな?」 

 気さくな感じで、その刑事が話し掛けて来る。

 確か名前は……アーネスト・トンプソンだったはずだ。


「何だか怪しい四人組が現れて、連れて帰ったわよ。」

「キミの名前を、訊いておいてもいいかな?」

「それは……オススメしないわ。この先も長生きしたければ、私に関わらない事ね。」


「しかしもうキミは、関係者だ。」

「……じゃあ、サン・ジェルマン伯爵の使いの者、とでも記録しておきなさい。」


 そう言いながら、雪子は彼の目の前で、ビートルの光学迷彩を解除して見せた。

 馬車だったモノが、あっと言う間に、彼の見た事も無い、銀色の乗り物に変化した。


 目を丸くして面食らっている刑事を尻目に、運転席に乗り込むと、「じゃあね。」と手を振って、雪子は時空転移装置のスイッチを入れた。

 するとビートルは、彼の目の前から、忽然と消えてしまったのである。


 アーネスト・トンプソン刑事が、後日、被害者の件だけを記録に残したのは、言うまでもない。


挿絵(By みてみん)

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