⑮ 情報共有
フルカネルリ卿の件は、翌日、亜空間レストランにやって来た、雪子や京子、ジャンヌにも伝えられた。
その場に来られないメンバーにも、もちろん、伯爵から通信で伝えておいた。
「そいつ、やっぱり"悪魔"を集めるつもりなのかしら?」
雪子が敵意剥き出しでそう言った。
今日ももちろん、セーラー服を着ている。
「分かりませんが……彼になら、出来るでしょうね。」
サン・ジェルマンが答える。
今日は水色のポロシャツに、ブルーのジャケットを羽織っている。珍しくラフな格好だ。恐らく、昨日の緊張から解放されたい気分なのだろう。
「でももし、悪魔とやらが存在するなら、今までに私たちが、一度もソレに出会っていないのは……むしろ不自然よね?」
「……そうですね。少なくとも、私と雪子さんは、相当数、時空の旅を重ねていますから……確かにオカシイですよね?」
「まあ、いずれにせよ、悪魔がいつ襲って来てもイイように、備えておかなくちゃね?」
そう言ったのは京子だった。
彼女は今日も春物の黄色いワンピースを着ている。
「京子さん、実は悪魔って、いきなり襲って来たりはしないモノなのですよ。」
伯爵が、優しくそう言って笑った。
「えっ、意外ね。」
「ニンゲンに出会った時に、彼等が先ずやる事は、相手を籠絡する事なのです。」
「ロウラク?」
そう言ったのは由理子だった。
「相手を言いくるめて、その魂を奪い、自らの操り人形にするんだよ。」
隣に居た鷹志が、彼女に説明した。
「……ああ、でも、ユリちゃんには通じないよね?相手の真意が、手に取るように判るんだから。」
「そうよ。安心してちょうだい!それに多分、弓子さんも、相手の悪意を感じるから大丈夫だわ。」
「そうですね。その点に関しては、心配無いようです。」
伯爵も穏やかにそう言った。
「……実は私、悪魔に誘惑された事が有ります。」
いきなりそんな告白をしたのは、ジャンヌ・ダルクだ。
「ええっ!?」
一堂驚愕だった。
「魂を売り渡せば、願い事を何でも叶えてやるって…でも、丁重にお断りしましたよ。私がお仕えするのは、神様と天使様だけですから。」
「……まあ、その天使も、実は私たちだったんだけどね…何だかゴメンね?」
雪子が、過去を思い出して、謝った。
「いいんてす。おかげで、私の願いは叶いましたから。」
ジャンヌは、ニッコリ笑ってそう言った。
「それより、ねえ、伯爵……。」
由理子が、あらたまった感じで呼び掛ける。
「何ですか?」
「私、あの人に会ったのは、昨日が初めてのはずなのに……以前、何処かで会った事があるような気がして、しょうがないの。」
「ああ、その感覚は大事ですね。もしかしたら、本当にそうかもしれません。いつ、何処だったか、覚えは有りませんか?」
「それが……ハッキリしないの。何だかとても、モヤモヤする気分だわ。」
「ゆっくり思い出せばイイですよ。何か気づいたら、また教えて下さい。」
しかし、この時の由理子の感覚が正しく、そして、とても重要だった事は、後になって明らかになるのだった。




