⑭ 彼からの指摘
「……ところでサン・ジェルマン伯爵よ。」
そこでフルカネルリ卿が、急に真面目な顔して、こう言った。
「キミともあろう者が、一つ大事なコトを忘れてはいないかね?」
「なにかな?」
「……分からないのかい?全ての物事には、二面性が有るのだよ。表には裏、陰には陽、明には暗……そして神々が居るのならば…。」
「……悪魔たちか?」
「分かっているではないか。この世に降臨するのは、神々しか居ない、なんてご都合主義な事が、有るわけ無かろう、と言っているのだよ。」
「まさか、きみは……。」
「さあ、どうだかな。まあ、くれぐれも忘れないでいてくれたまえ。私がキミの、永遠のライバルだという事を。それじゃあ、挨拶も済んだ事だし、コレで失礼するよ。」
彼はそう言うと、左腕のスマートウォッチのようなモノを少し触ると、次の瞬間には、その場から、煙のように消えてしまったのだった。
「……伯爵。今、彼が言っていた事って?」
由理子が、すがるような眼をして尋ねる。
「あまり想像したくありませんが、我々のところに神々が集まっているように、彼のところにも、ひょっとしたら、良くないモノたちが集まっているのかも……。」
「だいたいアイツ何なのよ。偉そうに、まるで伯爵と対等のような口をきいて!」
香子がイライラした口調で言う。
「彼の能力は高いですよ。少なくとも、錬金術と不老不死についての研究は、私と同等か、それ以上の成果を挙げています。勉強熱心な鷹志君なら、知っているのでは?」
サン・ジェルマンが、話を振って来る。
「……僕は、ただただ伯爵のファンなのですよ。だから、錬金術師全般に詳しい訳ではありません。残念ながら彼の事は存じ上げません。」
鷹志はそのように答えたし、事実そうなのだった。
「彼は主に、20世紀初頭のフランスで活躍していて、"大聖堂の秘密"と"賢者の住居"という二冊の著作も、出版されているんですよ。ただ、今世紀後半は、どこかへ雲隠れしていたため、皆に忘れ去られていたのです。」
伯爵は、やはり詳しく知っていた。
「そして彼は、他の物質から金……即ちゴールドを生み出す手段を、本当に見つけてしまった、ホンモノの錬金術師なのです。」
「ええっ?」
その場に居た3名は、皆、ビックリした。
「まあそんな事よりも、私が彼について唯一買っている点を挙げるなら、核エネルギー開発の危険性を、1937年の時点で、いち早く世間に訴えた事ぐらいですけどね。」
最後に伯爵はそう言ったのだった。




