⑬ 自称好敵手
そんな話を、4人でしている時だった。
エレベーターのドアが開き、亜空間レストランに、突然、見慣れない人物が現れたのだ。
やはり、ここのセキュリティは、考え直した方が良さそうである。
「やあ、伯爵、久しぶりだねえ。」
こちらに近づきながらそう言ったのは、青い眼をした金髪の、35歳くらいに見える男だった。
つまり、見た目の年齢が、サン・ジェルマンと同じくらい、という訳だ。
モスグリーンのスリーピースのスーツにエンジ色のネクタイを合わせて身に着けている。
中々の洒落者らしい。
ブラウンのスーツを着た、ロマンスグレーヘアの伯爵と、ちょうど対照的な着こなしに見える。
「どちら様ですか?」
真顔でそんな事を言う伯爵。
「嫌だなあ、長年の付き合いの、親友かつライバルを忘れたのかあ?」
そんな風に返す男。
「たかだか、50年くらいの事でしょう?それに、貴方と親友になった覚えは有りませんよ。」
「なんだ、なんだ。いつから、そんな冷たい男になったんだ、キミは?」
「あのう、伯爵。」
この遣り取りを見ていた香子が口を挟んだ。
「良かったら、コイツ、追い出しましょうか?」
「……ああ、それには及びませんよ。この方が、私の知り合いなのは確かです。ただ、このように不躾な男なので、つい冷たい態度をとってしまいました。」
「……そうなんですね。なら、イイですけど。」
「そうとも、お嬢さん。かつて我々は、半世紀もの長きに渡って、錬金術の技術を競い合った仲なのだよ。我こそは、この世界の最後の錬金術師、フルカネルリでありますぞ。」
「分かった、分かった。それで…随分ご無沙汰だったが、フルカネルリ卿。今頃、この私に、何の用向きかな?」
「いやキミが、密かに古代エジプトの神々を、コレクションしているとの噂を、小耳に挟んだのでな……私も好奇心が抑えられず、様子を見に来たのだよ。」
「……正しくは、我々の方が、神々によって、コレクションされているような、感じなのだがな。」
伯爵はそのように答えた。
「なるほど。因みに、この眼鏡のお嬢さんは……オシリスだな。そっちのメイド服の彼女は…アセトか。そして伯爵、キミ自身はジェフティという訳だな。」
フルカネルリ卿は、そう言ってニヤリと笑った。
「ちょっと、伯爵。何で彼は、チラ見しただけで、私たちのウチなる神々が判るの?」
由理子がサン・ジェルマンに、ヒソヒソ尋ねる。
「彼が身に着けている、あの片眼鏡。アレにそういう人外のモノを見抜く機能があるのですよ。鼻持ちならない男ですが、彼の実力とガジェットは、ホンモノです。」
伯爵も彼女に耳打ちした。




