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宇宙の傭兵SF冒険譚  作者: 戦慄の大根おろし
紅白
138/139

135_豪華な檻の朝


 ―――カジノホテル・ベラシオン

 ―――東棟最上階スイートフロア



 ―――pipipi


 枕元に置いた端末から鳴る目覚ましのコール。三回目が鳴るころには意識が覚醒し、頭上にある携帯端末をタップ。寝ぼけた頭のまま上半身を起こすと、自動で部屋のカーテンが開いていく。


「……まぶし」


 立ち上がって窓際まで歩く。ベラシオンで迎えるはじめての朝だ。大仰なカーテンを開けた窓の外には、夜の名残を引きずったデミエルの街が広がっている。

 水平線の上には恒星が顔を出しているのに、高級ホテル群のネオンはまだ消えていないものがちらほらと。海沿いの大通りに目を向けると、自動運転のリムジンが銀色の魚みたいに流れていた。


 本島の歓楽街がどれだけ栄えているのか。昨日はそれを把握できていなかったが、こうやって街を見下ろすとどれだけ騒がしい場所なのかが理解できる。夜が終わったというより、朝という別の照明に切り替わっただけのように思う。


 ホテルが用意してくれている寝巻から、これまたホテルが用意してくれた室内着に着替える。

 スーツと街歩き用のアロハしか持っていなかった俺たちのために、ホテル側は着替えを用意してくれた。昼間のカジノ程度なら出て行っても恥ずかしくないカジュアルな服から、夜向けのインフォーマルな服まで全部だ。至れり尽くせりとはまさにこのことだな。


 俺は寝室から出ると、そのままスイートのリビングに足を踏み入れた。


 広い。昨晩は結局酒盛りになった場所だが、改めて見るとやっぱり広い。

 士官室やラビットⅡの自室に慣れた身からすると、ここのリビングだけで小型艇の格納庫くらいあるんじゃないかと思う。

 ふかふかの絨毯、壁一面のガラス窓。海が見えるバルコニーにはプールまである。部屋の中央には馬鹿みたいに長いソファと、磨き込まれた低いテーブル。テーブルの上にはホテル側が気を利かせたのか、果物と軽食、氷の入った銀色のバケットが置かれていた。


 その向こうで、ハイデマリーがソファに沈んでいた。

 いや、沈んでいるというより、クッションの海に遭難している。


「ふ……朝からええ景色やなぁ」


 小さな体を大きなバスローブに包み、ハイデマリーは窓の外を眺めていた。風呂上がりなのか、頭をタオルで巻いている。

 隣に控えているシズがコーヒーカップを手渡している。受け取ったハイデマリーの顔は、昨日カジノの一角でチップの山を作っていた人物とは思えないくらいフニャフニャになっている。


「おはよう、ハイデマリー。いい朝だな」


「ああ、おはようさん。よう寝れたか?」


「いつも通りだ。ハイデマリーは? 疲れ取れたか?」


「ふへ……まだ無理やなぁ」


『燃え尽き症候群です。ミス・ハイデマリーは本日使い物になりません』


「うへへ……」


 されるがままにシズに頭を撫でられ、だらしのない顔を晒している。どうやら本当に駄目なようだ。


「反動すげぇな。豪運を引き寄せるのも楽じゃないんだな」


 俺がそう言うと、ハイデマリーはカップの縁に口をつけたまま、にんまりと笑った。

 結果的に作戦通りホテルスイートを勝ち取り、俺たちはそれを笑って受け入れたが、全員が本気で浮かれていたわけではない。全員が役に徹して警戒していたし、作戦の要だったハイデマリーは見ての通りの有り様。

 俺たち全員で勝ち取った豪華な部屋とはいえ、見方を変えると豪華な檻だ。鍵が俺たちの首にかかった賞金で出来ているだけで、閉じ込められていることに変わりはない。


 とまあ、そんなことを気にしていては楽しむのも楽しめない。目的がバカンスなのは変わらないんだし、気にし過ぎるのも身体に毒だ。


 俺はテーブルの上に置かれていた果物を一つ摘まんだ。名前は知らない。見た目は桃に似ているが、皮は青く、切り口は薄い金色をしていた。


「う、うまい……さすがスイート、果物一つでこれか」


 口に入れると、甘い果汁が爆発した。甘すぎるくらいだが、喉を通ったころには寝ぼけた頭をすっきりさせる後味だけが残った。


「おはよう、オキタ、シズ。マリーはそこで寝てるの?」


『いえ、先程眠気覚ましのシャワーを浴び、コーヒーも入れたのですが』


「ねむい~」


『御覧の通りです』


「そこまで弱ってるのも珍しいね」


 扉の開く音が聞こえたあと、声をかけてきたのはリタだった。

 窓際の椅子に座り、同じように置かれている果物を一つ、口に運んで固まった。

 ああ、これは美味くて驚いているな。もう見慣れた無表情だからか、何を考えているのかがだいぶ分かるようになっている。


 リタも昨日のスーツではなく、動きやすい服に着替えている。机の上に端末を置き、ホテル周辺の簡易マップと人流の推定データをホログラム上に表示していた。朝から熱心なのは感心するが、気を張り詰めすぎるのも良くない。


「朝から仕事熱心なのは感心するけど、お前は大丈夫なのか? ちゃんと寝たか?」


「……」


 リタが視線を合わせようとしない。やっぱこいつ、寝てないな?


「ダメだぞ、睡眠は取らないといざって時に行動が鈍る。今日は俺が警戒しておくから、昼間は俺に任せて寝とけ」


 リタの隣に座って、端末を取り上げる。リタは視線をこちらに向けたり逸らしたり、口を少し開いては閉じたりしている。


「おい、マジで調子悪いのか? 早く寝ろって。抱っこして連れて行くからな」


「ごめん、そうじゃなくて……ぐっすり寝たの。だから、その……ちょっと焦ってる」


「え? ……熟睡? お前が? マジで?」


「だから、そうだって言ってる……悪い?」


『おやおや』


「いやいや、別に責めてる訳じゃない。むしろちゃんと休めたことに安心した」


 リタが珍しくばつの悪そうな顔をしている。俺も驚いてはいるけどな、あのリタが敵地で安心しきって寝るなんて、絶対にあり得ないと思ってたから。


「大丈夫ならそれでいいんだ。

 話変わるけど、周辺に不審な動きはあるのか?」


「今のところ露骨なものはない。夜から朝にかけて、デミエル本島の人の流れが分かって来たくらい。

 面白そうなのは、昨日マリーが大勝した様子がベラシオン公式から配信されたことくらいかな」


「うへへ、遂にウチも銀河系デビューかぁ」


『ミス・アリアドネからラビットⅡの返済についてのご相談が来ておりますが』


「嫌や! 前返しは絶対にせんで!」


 ジタバタと手足を動かして駄々っ子になっているハイデマリーは置いておいてだな。


「なあリタ、結構デカい動画サイトに上がったのか?」


「まさか。まかり間違っても中央の人間が見るようなサイトじゃないよ。向こうにどれだけ娯楽があると思ってるの」


「だよなぁ……」


 ハイデマリーのことが好きすぎるあまり、行く先々でチェックでもしているのではないか。それってストーカー……いや、何も言うまい。


「だいたい義姉やんも義姉やんやねん。あの人、自分がちっとも勝たれへんからって毎回ウチに嫉妬して来んねん。社長職やからクレジットだけは有り余っとるのに、毎度全部溶けるんやから世話ないわな」


「アリアドネと一緒にカジノにも行くんだな。商会の仕事で宇宙飛び回ってるから、一緒に遊びに行くイメージは無かったけど」


『ラビット商会立ち上げの資金調達に行かれたのが最後ですね。ミス・ハイデマリーはそれ以降、中央のカジノは出禁になっています』


「どんだけ勝ったんだよ……」


 ジトっと視線を向けてみると、にやぁと笑い返された。まさか商会の立ち上げ資金がカジノから得たものだったとは思いもよらなかった。


「ま、義姉やんは負けるために行くんやから、最初から寄付箱にでも入れときゃええねん」


「マリーと社長って仲良いね」


「良くないわ! ウチよりチビのくせに、年上ってだけでいびりよってからに」


『喧嘩するほど仲が良い、ということですよ。お二人供そこはお間違いなきよう』


「そりゃもう」

「言われなくても分かってる」


「分かってへんやんけ~」


 言葉とは裏腹に、身体がふにゃふにゃになっているハイデマリー。バスローブ姿でごろんと横になっている姿は、商会主の威厳というより朝食を要求する小動物だな。


「ふわ~ぁ、朝からみんな元気だねぇ……」


 これまた気が抜けそうな声が聞こえて来た方へ視線を向けると、エリーがゆっくりと歩いて来ていた。

 身支度をせずに出て来たのか、寝間着姿のまま下ろした髪は少し跳ねている。収まりが良いのか、腕の中には昨日取ったウサギのぬいぐるみを抱えている。目元をこすりながら歩いてくる姿は、自称大人の女には見えない。


「おはよ~……」


「おはよう。よく寝たか?」


「うん。ベッドすごくなかった? 横になったら沈むんだよ……ボク、飲み込まれるかと思った」


「無事に戻ってこられて何より」


 シレっと言うがリタ、お前もエリーのこと言えないからな。

 エリーはふらふらとソファまで来ると、ハイデマリーの隣に座った。ぬいぐるみを膝に置き、その頭をぽんぽんと撫でている。

 昨日のクレーンゲームで取ったやつだが、そんなに気に入ったのか。デミエルの土産物屋なら数百クレジットで買えるようなぬいぐるみを抱き締めて、エリーは嬉しそうな顔をしている。


「それ、気に入ったのか?」


「うん。オッキーと一緒に取ったからね」


「……まだ寝ぼけてるな。シズ、コーヒー淹れてやれ」


『ミス・エリーはコーヒーが苦手なはずでは』


「いいから。寝坊助の頭を覚ますにはそれくらいでいい」


 素でああいう顔をされると反応に困る。


「……なんだよ」


「別に。オキタはエリーに甘いなって思っただけ」


 うるせー、んなことは俺が一番よく分かってるんだよ。


 ったく、気が緩み過ぎてここがどういう場所なのか忘れそうになるじゃねーか。

 金と欲望と暴力が、香水と高級酒で薄められた街。そう分かっているのに、朝の光を浴びたエリーがウサギの耳を撫でていると一瞬だけ、本当にただの旅行に来たみたいに見えてしまう。


 その錯覚が、この街の一番危ないところなのかもしれない。


「そういえば、アンドーと双子はどうした?」


 俺が聞くと、シズが視線だけを動かした。


『ミスター・アンドーはお部屋で睡眠中です。昨晩はかなりお酒を飲まれていたようでして、ふらつきながら戻っておいででした』


「あのオッサンはマジでさぁ……何時ごろに帰って来たんだ?」


『夜明け前です。具体的に言うと、1時間ほど前ですね』


「飲みすぎだろ。そんなに楽しかったのか?」


「昨晩はお楽しみでしたねって伝えよう」


「いやいや、リタが言うとアンドーも反応に困るから」


「何故? お約束なはず」


「淡々と言われると心にくるものがあるんだって。そういうのは俺の役目だから」


「むぅ……アンドーの好感度が足らないのが原因かも」


 本当にやめてやれ、マジで困った顔するだけだから。


 それは置いておいて、アンドーは大丈夫だろうか。

 昨日ホテルを出る時、いつも通り馬鹿なことを言っていた。酒だの女だのと、いつもの調子で軽口を叩いていたし、戻ってきたのも夜明け前。話だけ聞けば単なる酔っ払いにしか見えないんだが……どうにも引っかかる。

 出掛ける前にほんの一瞬だけ覗いた視線が、いつもとは全然違っていた。

 思い返せば、ホテルに入る前からアンドーはどこか違っていた。俺が軍で何度も見た、陸戦隊の人間が仕事に入る時の気配に近かった。


 何かを見つけたのだろうか? それを俺たちに細かく報告してこないということは、まだ自分の中で整理しているか、あるいは俺たちに言うべきではない何かを抱えているのか。


 どちらにせよ、急かしても仕方ない。

 アンドーはだらしない奴だが、肝心なところで線を踏み間違える男じゃない。


「アレンとエレンは?」


『まだお休みですが、本日は隣の部屋で通信環境の確認すると仰っていました。

 ミス・エリー、眠気覚ましにどうぞ』


「ありがと。ねえ、安全な休暇ってどこいったの?」


「昨日で終わった」


「今日からはスリリングな休暇の始まりやで~」


 エリーの問いに、リタとハイデマリーの返事は早かった。


「別に良いんだけどさ、せっかくボクとオッキーが一緒に考えた休暇なのに……~~~ッ! これコーヒーじゃん! シズ!?」


『私は甘い紅茶を淹れようとしたのですが、ミスター・オキタの指示です』


「眠気覚ましには丁度いいだろ」


「良くないよ!? なんでこんな苦いのに、みんな飲めるの!?」


 エリーはぎゃーすか文句を言っているが、ようやく目が覚めたようだ。

 隣にいるハイデマリーがコーヒーを受け取り、代わりにフルーツをエリーの口に投げ込んでいる。それを噛んだエリーが顔を輝かせている。うんうん、苦味とか吹き飛ぶくらい美味いよなそれ。



 その時、俺の個人端末が短く震えた。


 朝早くから誰かと思い確認すると、着信じゃなくてメッセージだった。

 その送り主を見た瞬間、俺は少しだけ眉を上げた。


 送り主に表示されている表記は”ヴァルツ”だった。


 少し前、デミエルへ向かう途中で臨検を受けた時に顔を合わせた帝国軍時代の知り合いだ。昔は中尉だったが、今は大尉になっている。俺が帝国軍にいた頃、何度か同じ宙域で任務に出たことがあった。


 ヴァルツはクレジットの話になると、急に耳が良くなる男だった。

 危険手当、特別任務手当て。そういう単語がでた瞬間だけ、ブリーフィング中の居眠りをやめる。口は悪いし金にも細かい。上官にはあまり好かれていなかったけど、不思議と仲間内で嫌われていなかった。


 誰かが昔、”あいつは嫌いになれない”と言っていたのを覚えている。

 それは俺も同じだった。

 

 俺やクラウディア少尉が今よりもガキだった頃、飯を奢ってくれたのはだいたいヴァルツだった。本人は”若い奴に恩を売っておけば、いつか高く売れる”と笑っていたが、たぶん半分くらいは本心で、もう半分は照れ隠しだったと思う。


 パイロットとしては、特別上手いわけじゃない。

 少なくとも化け物揃いのメリダの中に放り込めば、目立つ腕ではなかった。


 それでも生き残った。


 撃たれて追われて墜ちかけて、そのたびに俺の射線の近くへ転がり込んでくる。何度助けたかは覚えていないし、この間伝えたのも適当だ。向こうもたぶん、正確には覚えていないだろう。そういう男だ。


 俺は思い出を振り返りながら端末を開いた。


『よう、オキタ中尉。

 無事デミエルに着いたみたいで何よりだ。

 色々と派手にやってるみたいだな? 懸賞金の件はこっちでも話題になってるぞ。

 こっちは駐屯軍との連絡調整で本島に降りたところだ。

 前に言った酒の件、覚えてるか? 今夜空いてるなら一杯奢らせろ。

 場所は任せるが、高すぎる店は勘弁してくれ。俺の財布が戦死する。

 ヴァルツ』


 メッセージの最後に添付されている認証情報は本物だ。帝国軍の巡回任務、デミエル駐屯軍との連絡調整、一時降下許可。一般人の俺に明かしてもいい必要最低限の情報だけが、きっちりと付いている。

 私用の誘いに見せかけて、軍務上ここにいることも示している。こっちの状況もある程度把握していると書いてあるだけに、やっぱ律儀な男だよお前。


「誰?」


 エリーがぬいぐるみ越しに訊いてきた。


「ヴァルツだ」


「ああ、この前の軍人さん?」


「そう。酒を奢るって言ってたやつ」


「オッキー行くの?」


 エリーの耳が、ぴくりと動いた。

 俺は端末の画面を見つめたまま少し考える。ヴァルツは顔なじみで貸しがある。けど今の俺はラビット商会の専属で、このデミエルでは何が誰の目に触れているか分からない。


 旧友からの酒の誘いだけなら、乗ってもいい。


 だがこのタイミングで、宇宙にいるはずの巡回部隊がデミエルに降りている。駐屯軍との連絡調整とあるが、何か警戒を強化せざるを得ない状況にでもなったか?

 無いとは思うが、俺たち関連じゃないだろうな。こじつけに近いが、ハイデマリーと俺が帝国の”リスト”に載っているから、懸賞金に浮かれたレッドギルドから守ろうと動いた……なんてのは流石に考えすぎか。


 考えていても仕方ない。身一つで飛び込んだ方が、話が早い時だってある。


「今夜あたりにでも行ってくる」


 そう伝えると、寝転がっていたハイデマリーが起き上がってカップを置いた。


「ええんか? 止めようと思ったけど、オキたんが行くなら諸々任せたいと思とるけど」


「断る理由もないしな。向こうが何を知ってるかも聞きたい」


「昔の知り合いやからって、気ぃ抜いたらあかんで」


「分かってる」


 俺がそう言うと、リタが端末から顔を上げた。


「同行する?」


「いや、たぶん一人の方が話しやすい」


「単独行動は危険だと思うけど」


「位置情報は共有しておくし、定時連絡も入れる。十五分遅れたら好きに動いてくれ」


「分かった」


 スっ、と目が据わった即答だった。その即答が怖い。

 エリーがソファの上で少し身を乗り出した。


「あー……じゃあボクも行こうかな? 知らない仲じゃないし?」


「やめとけ。お前、俺の居た連隊以外の奴と話す機会無かったから、ヴァルツのことも苦手だろ」


「うぐ……」


「お前は付き合い薄いだろうけど、ヴァルツとは帝国軍時代の知り合いだ。昔話も出るだろうし、話に付いて来れないのに付いて来ても面白くないだろ」


「それはそうだけど」


 エリーは不満そうにウサギの耳を握った。

 その顔を見て、俺は少しだけ笑いそうになった。いや、笑ってはいけない。エリーからすれば真剣に不満なのだ、たぶん。


「心配しなくても、ただ酒を飲んでくるだけだ」


「その言い方、すごく信用できないんだけど」


「俺の日頃の行いが良すぎるせいだな」


「逆だと思う」


 エリーの返事に、ハイデマリーがけらけらと笑った。


 気付けば朝の光が強くなっている。気付けば、シズがカートを押しながら高級ホテルの朝食を運んで来ていた。


『さあ、皆さん席に着いて下さい。朝食を頂きましょう』


 シズが配膳する間に端末にメッセージを書き込む。


『覚えてる。

 今夜なら行けるぞ、場所はこっちで探すから気にするな。

 財布を戦死させるかどうかは店の酒次第ってことで。

 オキタ』


 送信、と。

 短い電子音が鳴ってメッセージが飛んでいく。


「送った?」


「ああ。店も俺が選ぶことにした」


「じゃあさ! 夕方ぐらいまでは遊べるよね? 昼のカジノで遊んでようよ」


 目を輝かせるエリー、隣からは期待の籠った視線を向けるリタ。


「……朝メシ食って、身支度整えてからな」


 店を探すために開きかけていた端末を閉じて、シズが配膳してくれたフォークを握った。


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