第1章 はじめまして、ノアです。
「ただいま」
「おかえり。コラ! 帰って来たら、手を洗い、うがいをしなさいって言ってるでしょ!」
「い、今からやるところだよ」
「グダグダ喋ってないで、とっととやりなさい! 新型コロナウイルス対策よ!」
「そうだぞ」
「行く行く」
料理をするお袋と、新聞を読むオヤジの横を抜けて、洗面所に行く。
チラッと新聞の一面を見たら、「全国で非常事態宣言! ステイホーム週間!」と書かれていた。
「俺も危機感を持たないとな」
俺は念入りに、手洗いとうがいをするのだった。
「オヤジ、お袋、ちょっといいか?」
「あん?」
「なによ? 今じゃないとダメ?」
ご飯を食べ終え、お袋が洗い物をしようとするタイミングで、俺は声をかけてしまった。
「あーいや、そんな急ぎってわけでもないんだけど・・・」
どうしよう、後にしとこうかなあ。
『マスター、お構いなく。私の紹介はいつでも結構ですので』
「( ゜Д゜)は?」
「( ゜Д゜)は?」
「わかった。お袋、引き留めて悪かった」
俺は自分の部屋に行こうとする。
「ちょ、ちょっと、さっきの声は何よ!?」
「そうだぞ!」
「あー・・・」
どうやら、話すという流れになった。
白いスマホをテーブルに置く。
「紹介したいヤツがいるんだ。ノア、テキトーに自己紹介してくれ」
『はじめまして、アーティフィカルインテリジェンスのノアと申します。以後、お見知りおきを』
「あーちきちき? え? なんて?」
「え? この電話、誰かに繋がってるの?」
俺は頭をかいた。
この2人には、AIの説明が必要みたいだ。
まあ、俺もそんなに、っていうか、あんまり、っていうか、全然、っていうか、むしろ知らないんだけど、知っている範囲で説明する。
「まあ、簡単に説明すると、コイツはノアっていうAIなんだ。そんで、AIっていうのは、学習や経験してどんどん頭が良くなっていくロボットのこと」
「へー( ゜Д゜)スゴい」
「へー( ゜Д゜)スゴい」
なんだと思う、あんまり知らないけど。
「まあ、そういうわけで、新しい家族が一人増えるみたいな感覚で、これからノアのこと、よろしく頼む」
『不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします』
「・・・あ、ああ」
「・・・え、ええ」
オヤジとお袋は見るからに、ノアに対して不安そうだ。
まあ、いきなり、よく知らないAIが今日から家族になるって聞いたら、不安になるのも無理はないだろう。
だが、気持ちの溝は、時間が埋めてくれるはずだ。
俺は3人だけの時間を作るため、あえて、白いスマホをテーブルに置き去りにし、自分の部屋に入っていった。




