第5話 魔王の瞳
悪魔執事の作業が終わり、バットスライムのルナは身体から紫色の発光をし始め、1分ほどで光は収まった。そして、魔王の希望通り、見た目は変わらずにいた。
だが、魔王が鑑定眼でルナを解析鑑定すると、そのスキルの多さに唖然としてしまった。
魔王「いきなり多過ぎよ…。」
【バットスライムのステータス】
・名 前 ルナ
・種 族 バットスライム
・魔力レベル 25(この世界の測定基準)
・成長 段階 成体
・大 き さ 両掌ほど(絶対固定)
・体 力 36/36
・攻 撃 力 18
・防 御 力 10000
・敏捷性 10000
・魔力の性質 龍族の魔力と、魔王から漏れた魔力が混在
・スキル 擬態、無限分裂、捕食、吸収、収納、構造組み換え、回復魔法、水魔法、防御魔法、念話、転移、魔王と執事への絶対帰還転移、影移動、共通視覚、記録眼、暗視眼、音源記録、透視、
・言語能力 あり。
・特記事項 魔王のペット兼筆頭執事の補佐
・加 護 魔王の絶対的加護
・絶対的主 魔王エドナと、その筆頭執事ルード
執事が得意気にドヤ顔をした。
執事「フフフ……、なんせ"魔王様の側に居れる"のです。故に、護衛・密偵・荷物持ち・構造組み換えによる玩具作成・回復役・我々への絶対服従をその魂に刻まさせて頂きました。これで、少しはお役に立てるかと。さぁルナよ、魔王様にご挨拶をしなさい。」
ルナは目線を下げ、体を前のめりにする様に頭を垂れた。
ルナ「は、初めまして!こ、これからは宜しくお願いします!」
ルナは少し甲高い声で言葉を発し、少し照れくさいのか、その頬はやや赤みがかっていた。
魔王「ええ、こちらこそ宜しくね、ルナ。」
魔王はニコッとして、右手でルナをツンツンと突っついた。
空は完全に夜になり、星々や月光の明かりが荒野を薄暗く照らしていた。
ドスン!ドスン!ドドスン!!
?「グォオオオオオオ!!!(待てコラァアアア!!)」
男「だ、誰か!!助けてくれーー!!!」
女「ひぃーー!!何なのこの化け物は!!」
夜の静寂を切り裂いたのは、大きな足音に魔物の鳴き声、そして、誰かの声だった。3人が振り向くと、2人の人間?が紫の眼光を纏わせた大きな緑色のゴブリンに追われていた。
魔王「へぇ、本当に人間がいるのね…。執事、あれ、どうする?」
人間なんて、沢山いるしね…。あんなの、直ぐ食べられるわよね…。
執事「御判断は委ねますが、今回は助けた方が良いかと。彼らの言葉が聞き取れましたし、あの国の方から来ているので、多少の情報は持っているかもしれません。死なすのは、その後でも良いかと。」
グレン様の直接的な情報が得られなくても、我々よりは情報を持っているかもしれませんしね。
魔王「そうね…。執事、助けてあげなさい。」
執事「承知致しました。」
執事は魔王に軽く頭を下げると、スっと目に見えぬ速さで移動し、人間達の方に向かった。
そしてーーー
大きなゴブリンがこん棒を人間に振り下ろした瞬間、ガキッィィンと鳴り響いた。
大ゴブリン「グガ!?(なに!?)」
執事が剣を抜き、ゴブリンのこん棒を防いでいた。
そして、執事が殺気を含んだ目でギロッとゴブリンを睨み、その重く低い声で大ゴブリンに口を開いた。
執事「"私は貴方と殺り合うつもりはありませんが、貴方がこれ以上手を出してくるのなら、私が相手になりますよ"。」
これでLv35程ですか…。先が思いやられますね…。私の言葉が伝わるかは分かりませんが、この大きなゴブリンの言葉は理解できますね…。
人間の2人は肩で息をしながら、顔を真っ青にしていた。
男「そ、そんな化け物に言葉なんて通じませんよ!!」
女「そ、そうですよ!人間でも亜人様でもない冒険者ギルドの狩猟対象"です!!」
このお方は何なの?!
大きなゴブリンは執事に怯み、こん棒を下ろした。
大ゴブリン「グガッ…、ゴフッ。(クソッ、今回は見逃してやる。)」
大きなゴブリンはそっぽを向き、森に入って行った。
執事「ふぅ…。"なんとか"、追い払えましたか…。」
まぁ、思ったよりは余裕でしたが…。
執事は剣を鞘にスっと収め、追われて腰を抜かしていた2人の方にしゃがんで向かい合った。
執事「お二人とも、ご無事ですか?怪我はありませんか?」
執事は悪魔の微笑みを見せ、極わずかに情緒安定の魔法も人間達にこっそりとかけた。
男「た、助けて頂き、本当に有難うございます。け、怪我はありません。」
女「私も大丈夫です。本当に有難う御座いました。」
執事「いえ…、礼には及びませんよ。私は"我が主"魔王様の執事であり、主の命令に従ったまでですので…。」
執事がチラッと魔王の方に向き、それにつられて2人も魔王の方に向いた。
魔王とルナは3人より少し高い位置から、3人を見下ろしたーーー
その目は冷徹で、先程までのルナに対する表情や態度とは全く異なっていた。
この瞬間、人間達の安堵した表情は絶望に変わり、その目は大きく、顔は先程よりも蒼白になり、今にも気を失いそうになっていた。
執事は主の表情を見て、2人に見せ付けるようにその場で魔王に向かって片膝を着いて跪き、静かに右手を胸に当て、深く頭を垂れた。
魔王「フフ…、執事、御苦労様。初めまして、私は"異世界である魔界から来た魔王エドナ"よ。私達はね、ある者を探す為にこの世界に来たんだけど……、お前達は何故、あのゴブリンの化け物に追われていた?お前達は…"あの国の民か"?」
魔王の声は重低音のように響き、その瞳は魔力に鍵をかけているとはいえ、魔王のそれだった。
そして"当然"ーーー
バタンバタンッ…!
人間の2人は気を失った。




