第4話 バットスライム
"今の……、一瞬の異質で良質な高位魔力は何なんだ"!?
これが、龍の国を統べる王を含めた、上層部が感じた魔力であり、それほど異質な魔力だった。
彼らは、その長い首を城から見える森や荒野ーーそして、その奥の方に向け、目を細めた。
龍王「“この目でも”‥‥分からぬか‥。ククク‥だが、中々上りきらなかった我の力が上がりきり、“更にその門を越えた”ぞ‥!」
長っかった‥、“永かった“ぞ!!
龍王は両手をそれぞれギュッと握り締め、龍王の身体からは魔力が滲み出し、そして‥龍王のその鋭い眼光は、城の一室に目を向けた。
ジャラ‥‥
そこには、壁に両手足が拘束され、磔になってる“囚人”がいた。ーー息はある。
しかし、囚人は下を向いており、口からは赤黒い血が一筋、顎に向かって垂れ落ちた。その身体には色の違う痣が多数あり、青紫色の濃い部分には、薄く血が滲んでいた。
龍王「ククク‥囚人よ‥。その頑丈な身体もいつまで持つだろうな?早く情報を吐かなければーーーそれはそれで、“今の我の力”で、火の海にしてやるぞ‥?」
囚人は無言のまま、龍王から顔を背けた。
龍王「フン‥、まぁ良い。我の機嫌を取ってくれたこの恵みに感謝せよ。」
今までなら、再び痣が増えていたが、今の龍王は上機嫌だった。
だがーーーー
龍王が振り向くと同時に、囚人から甲高くも重たい音が鳴り響いた。
一方、城から離れた荒野では、魔王がふとその足を止め、目線は地面の一点‥悪魔の翼が生えた小さな水色のスライムに釘付けになっていた。
魔王「何これ〜!!めちゃくちゃ可愛い!!スライムの赤ちゃん?!手乗りの大きさじゃないの!!」
グレンじゃなくても、めちゃくちゃ可愛い!!
悪魔執事は目に力を入れ、スライムを鑑定した。
執事「おや、これは生まれたてホヤホヤのバットスライムですね。ドラゴン族の魔力と、先ほどのダダ漏れ魔力が混じって、発生を誘発してしまったようですね。ちなみに、当然ですが、これは目的の“似た波長のモノ“ではありません。」
これは珍しいですね‥。確かに、魔界でも似た現象は発生しますが、あの一瞬で発生するとは‥。これは、ここのドラゴンをあまり侮らない方が良いかもしれませんね‥。
魔王は両手をバットスライムの方に差し出し、「おいでおいで」と手招きをしており、それを見ていた執事は、魔王のオフショットとばかりに、しれっと鑑定眼から記録眼に変更し、その光景を目に焼き付けていた。
バットスライムは、その透き通った水色の小さな身体で魔王の手を少しだけ警戒したが、「ピッ」と鳴き声を上げて魔王の手に擦り寄り、その小さな翼をパタパタと動かして魔王の手に飛び乗った。
ゾワッと魔王の全身の肌が反応し、傷ついた心を刺激され、魔王にとってはこのバットスライムは"癒し"の存在になっていた。
そして魔王のその目は、ウルウルとしながら執事を見つめた。
執事「フフ…、"名付け"をされてはいかがでしょうか?」
これは、駄目とは言えませんね…。正直個人的には"かなり"嫉妬をしてしまいますが、今回ばかりは多めに見ましょう。スライムなど、"最弱の魔物"なのに、それの産まれたて……弱過ぎる…はずですが、半分は魔王様の魔力で産まれているスライム…。"観察のしがい"もあるでしょう…。
魔王「!…名付けね…。あの魔力を持っていかれるやつでしょ?私が付けたら、この子、化け物になっちゃうわよ?」
この可愛いのが台無しじゃないの…。
執事「!…確かに…。魔王ですからね…。多少の成長は良くても、魔王様が望まれなければ意味がありません…。」
執事は右手を顎に当て、大真面目に思考を繰り広げた。魔王の筆頭執事が、産まれたてのスライムに頭を悩ませるーーーこれも前代未聞である。
執事「…スライムはそもそも擬態が出来る能力を持つ個体も多いので、無理に姿維持の魔法をかけると、そのスキルも発動出来ません。ですので、これを逆手に取りましょう。この姿を身体に覚えさせておき、同時に擬態スキルも魔法で無理やり覚えさせます。本来であれば成長とともに身につく事が多いですが、現時点で覚えさせた方が、後々役に立つでしょう。ですので、この方法なら普段の姿は変わらないかと。」
執事の言葉に、魔王の顔はみるみる明るくなっていった。
魔王「執事、それでお願いするわ!」
魔王は執事の手にそっとバットスライムを乗せた。
執事「承知致しました。ちなみに、今後はこの今のバットスライムの魔力をLv1として、他のモノを測定していきましょう。ちなみに、我々の魔力は測定不能としておきます。魔王様は情緒の変動でかなり変わりますしね…。あくまで、ここの世界のモノのLvです。それと、次いでに言葉も話せるようにしたり、我々の視野と共通出来るようにしておきましょう。そうすれば、“この散歩の更に有意義になる”と思いますよ。」
執事がバットスライムに紫の光を纏った魔法をかけ始めた。
魔王「!そうね‥。分かったわ。“痛みが出ない程度に、貴方の好きにしなさい”。」
もう、無茶苦茶ね‥。
魔王はやれやれと思いつつ、執事が楽しそうにウズウズしているのを見て、仕方がないなと考えていた。
執事「!おや、私にそんな珍しい事を許可して下さるとは‥。有難うございます。それで?なんと名付けるのです?」
これは、腕が鳴りますね。
魔王「ん〜‥、満月の夜に初めて出会ったから、“ルナ”にしようかな。」
魔王は右手をバットスライムにかざし、魔力の鍵を周囲に漏れなない程度に少しだけ開けて、“名付け”を行った。
【バットスライムの初期ステータス】
・名 前 なし
・種 族 バットスライム
・魔力レベル 1(この世界の測定基準)
・成長 段階 生まれたて
・大 き さ 両掌ほど
・体 力 6/6
・攻 撃 力 1
・防 御 力 2
・敏捷性 3
・魔力の性質 龍族の魔力と、魔王から漏
れた魔力が混在
・潜在能力 擬態への適性あり(未修得)
・言語能力 なし
・特記事項 魔王の魔力を含むため、通常のスライムとは成長の仕方が異なる可能性あり




