第2話 散歩の準備
悪魔執事の情報提供に食い付いた魔王は、魔王が悪魔執事の思惑に乗った事を頬を赤くして少し恥じらいながら、食事の手を進めていた。
そして悪魔執事は、とある異世界に見つけた、グレンの魂の波長に似たモノの情報を伝えようと、漆黒の手帳を手に取り、その口を開いた。
執事「では魔王様、御報告させて頂きます。」
<報告内容>
・魔王国筆頭騎士団長グレンの魂の波長との照合率90%
・人間と魔物が沢山いる世界
・荒野の中にある独裁国家の中で発見
・この波長を観測した際、少しノイズあり。
・波長の個人特定までは至らず。
・その国には人間と異型人が出入りしている。
・国旗にドラゴン模様あり。
・波長の型を水晶に登録をしたため、近づけば反応する。
((※)グレンの魂であっても、記憶が無い可能性は十分に有り得る)
執事「以上にございます。なお、向こうに赴いた際、転移門の場所をその都度マーキングしておけば、その場所に何時でも転移可能でございますので、行き来は自由となります。また、私はアイテム収納魔法がありますので、お荷物をお持ちになる事はありませんし、何なら何時でも此処に取りに戻る事が出来ます。」
魔王は食事の手を一瞬止めて、目を大きく輝かせ、うっとりしていた。
魔王「90%だなんて…ステキ。しかも沢山の魔物と人間がいるだなんて…。ワクワクしちゃうわね。良いわ、貴方の言う通り、"散歩"に出かけましょう。」
思ったより、高い照合率なのね…。"期待は上げないで下さい"?…フフ、そんなの無理よ。
執事「かしこまりました。お供させて頂きます。もし、軍が必要になりましたら、何時でもお申し付け下さい。」
名目は人探し兼散歩ですが、魔王様の事ですし、今から行くのは異世界にある独裁国家です…。しかも"ドラゴン"…、これは確かに気分が御上がりになりますよね…。まぁ、執事もかなり楽しみですがね。
魔王は「フフ…」と微笑みながら、パンを口にした。
魔王「"軍"…ね…。まぁ、待機はさせておこうかな…。私が召喚んだら、他所に召喚されている連中も来るわよね?」
下の悪魔達なんて、ちょくちょく召喚遊びしてるしね…。
執事「"当然で御座います"。召喚で偽りの主従契約を結ぶとはいえ、我々魔族の"本当の唯一無二の主"は魔王様だけです。そんな当たり前の事を、今更聞かれるとは…。」
やれやれ…、これは相当期待していらっしゃいますね…。"期待を上げないで下さい"と強く申し上げましたのに…。
魔王「フフ…。だって、外に行くなんて数百年ぶりよ?私だって、期待と不安が入り交じるわよ。」
執事「そうで御座いましたね。そういえば、行先は荒野ですので、そのお気に入りのドレスは汚れてしまう可能性があります。ですので、宜しければ御着替えをされては如何でしょう?」
そのドレス、相当お気に入りですよね?
魔王はキョトンとした目で一瞬固まり、少し考えた。
魔王「そうね…。現地人が着ている服に似ている物で、動きやすい服を用意出来るかしら?まぁ、どうせ、用意しているのでしょ?」
流石にこれが汚れるのはちょっと…。
悪魔執事は優しい目でニッと口角を上げた。
執事「まぁ、念の為ですがね…。この場で先に私が着替えて、御見せ致しましょうか?」
魔王は左手を顎に当て、「んー」と悩んだ。
魔王「食べたら一緒に着替えましょう。あ、でも私は重いのは嫌よ?動きにくいし。」
執事「そこはちゃんと心得てますよ。見た目は現地、本当の素材は我が国最高の防御力を誇る布地と素材で用意を致しておりますので。」
執事は少しドヤ顔をしながら魔王を見詰めた。
魔王「フフ…流石ね。」
私が普段着ている物でさえ、彼は細かく知っているものね…。私が持っているモノで、彼が知らないモノなんてあるのかしら?
エドナはそんな事を思いながら、ケーキを食べ終わり、紅茶を飲み干した。
そして、執事が着替えの魔法をかけて、その姿を現した。
黒紫のメインの装飾は変わらないが、魔王は長い黒ブーツに軽装な衣装、執事は魔王の護衛として、同色生地の重戦士の鎧や盾と剣を持ち、2人ともドラゴンの国旗のデザインを取り入れた模様を装飾に加えていた。
魔王「あら、ステキじゃない?」
魔王はもうノリノリで、衣装の前後を確認をしている。
執事「御気に召したようで、何よりに御座います。ちなみに、その剣もしっかり斬れますので、御愛用下さい。」
魔王は腰の細剣をスっと抜いてみた。
魔王「あら、ホント。でも、向こうの硬さは分からないから、また試してみましょうか。」
"剣を使う"なんて…、いつぶりかな?
執事「ええ、そう致しましょう。では、転移の門を開きますね。御心の御準備を。」
魔王「ええ、"もう、準備万端よ"。」
こうして、執事の転移魔法により、現地のドラゴンの国の国境の壁が見える、人気の無いところに転移を開始した。




