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「あー済まないが、もう1人追加でも構わないか?」


「はい、今確認してきます」


 ベルフが店員さんに、もう1人増えてもいいか確認してくれた。その横ではデュラ子を見てウットリするような表情のエクレールと、ふろ上がりの様に真っ赤な顔をしたライカ


「申し訳ありません主、急なお願いで」


「うん、今ベルフが店員さんに聞いてくれたから、店の方でいいよってなったらデュラ子も飲めるからな」


「そうですか」

 デュラ子はベルフの方に向き直り

「感謝いたす」

 と言って頭を下げた


 ゴトン!

「痛っ!」


 頭を下げると同時にデュラ子の胴体から首が外れ、床にゴロゴロと転がっていた。


「「 ぎゃややややややややややややや!!!!! 」」


「ど、どうしました!お客さ‥‥きゃややややややややや!」


 デュラ子を始めて見たライカとエクレールは悲鳴を上げ、その悲鳴を聞き、駆け付けた店員さんもデュラ子を見て悲鳴を上げた。

 それを聞きつけた他の店員さんが駆け付け、更に‥‥‥‥


 既にデュラ子の普段の姿を知っているベルフ、ソルセリー、タクティアも少し引きながらそれを見ていた。




 隊員達との飲み会はその後、大いに盛り上がった。とても楽しくというか、別の意味も含まれるが


「主よ‥‥今日は帰りたくありません‥‥‥‥」


 真っ赤でセクシーなドレスを着たデュラ子が俺にしだれ掛かる、酒に酔ったのか? その表情はトロンとして、言葉遣いも少し艶っぽい

 自分の右手を、俺の左腕に絡むようにくっつき、俺の左腕にサイズアップしたデュラ子胸が当たる


「あなたは帰る以前に、召喚魔法陣に戻るだけじゃないかしら」

 

 その場にいた誰もが分かる位、ソルセリーは機嫌が悪かった。

 飲むスピードも半端ない、さっきからこちらをずっと睨んでいる気がする、もし俺とソルセリーの間にデュラ子がいなかったら、怖くて酒も喉を通らなかっただろう


「まぁまぁソルセリー、その‥ぱっと見女性に見えても一応、隊長の召喚獣なわけだら‥‥あまりそう‥‥怒らないで」

 遠慮がちにエクレールがソルセリーをなだめてくれるが


「はぁ! 別に怒って何かないわよ!」


「そ、そうか、そうだな、ハハハ‥‥‥‥」

 効果は少ない、こういった場合は下手に話しかけない方がいいかもしれない


 さっきから我関せずのベルフと、真っ青な顔のライカ、戦場で死体を見慣れているライカだったが、そんな彼でも、胴と首が切り離されても話す事の出来るデュラ子には恐怖を覚えるらしい、さっきからこっちを見ようとはしない


 その時俺は、デュラ子の横乳の感触を味わいながら後悔していた、何故今日に限って袖のある服を選んでしまったのかを、タンクトップでくれば直接横乳の感触を全力で味わえたものを‥‥今度買っておこう


 しかし、そのデュラ子に少し疑問を持つ

「デュラ子、何でお前はそんな言葉を知っているんだ?」

 

 教えてもいない知識、そして言葉をデュラ子は知っている、もしかしたら召喚獣達の持つ知識は、俺の知っている事から引っ張り出されているのでは? もしそうだとしたら大きな発見になる、召喚獣を研究している人達は大いに喜ぶことになるだろう。


 デュラ子は俺からパッと離れ、自身の『収納』から雑誌を一冊取り出した。

「それはこの雑誌に殿方が喜ぶと書かれているからです」


 デュラ子が見せてきたのは、女性専用の雑誌だった。

 デュラ子には勉強の為にファッション誌を買うことを許可し、書店に行くときは自由に買わせていたけど、こんなのも買っていたのか‥‥


「それで主よ、このページにその事が乗っているのです、私は武以外は疎いため、とても参考に成ります」

 パラパラとページをめくる


 さっきまでのトロンとした表情も、酔った様な話し方もどこにやら、ハキハキと話すデュラ子。どうやら酔ったふりをしていたようだ。

 ちょっと‥‥残念に思う


 その後も飲み会は続いた。前回の作戦の話や他愛もない話し、この世界には無い雪、その「雪山」で遭難したらどうするか? 俺の居た世界の事など

 

 タクティアには今日のお話で「竹中半兵衛」の事を少々話した。

 ゲームで得た「諸葛亮孔明」の知識尽きて来て、半兵衛にシフトチェンジ、半兵衛が尽きてもその後「黒田官兵衛」があるから大丈夫、でももうちょっとだけ小出しにしようかな?


 ・・・・


 ・・・・



 朝

 目が覚めると俺は自分のベッドに昨日と同じ服装で寝ていた。

 うーん記憶がない、途中までは覚えているんだけど、自分の足で帰ったのかな?


 開けっ放しだったカーテンから窓の外を見てみるとまだ暗い、時計を見ると起きるのには早すぎるくらいだった。

 二日酔いで頭が痛いって事は無かったが、まだ酒が残っている感じがする、眠気は無いしこれ以上寝たいとも思わない


「クオルシでも飲んでから今日の事を考えるか‥‥」

 コーヒーに似た味のクオルシを飲んでから考えることにした。


 フラフラした足取りでキッチンに向かう、一応休暇は俺の準備次第でいつまでも取れることにはなっているが、かと言っていつまでも休む訳にはいかない、ただ、武器防具の修理もあるし、既に許可が出ている魔法の習得するために現地に行かなければならない

 ちなみに今許可が出ている魔法は『保護』、危険な場所や危険な箇所にこの魔法を付与すると、不慮の事故などがあった場合に怪我などをしなくなる、これは軍学校で使った練習用の刀などに使われる、他にも子供用の遊具などいろいろな場所に使われている


「クオルシクオルシ」

 戸棚を開け、クオルシが入っている袋を取りカップにクオルシを入れる


 サラッ‥‥


「あれ? 無いや」 

 もう少し入っていると思ったら一杯分すらない

「予備ー予備ー、よー‥‥無い、最悪だ‥‥」

 もう一袋あったと思っていたが予備も既に無かった。

 

 別に毎日クオルシを飲んでいる訳ではないので飲まなくてもいいのだけど、飲もうと思っている時に飲めないと何となく気に障る、クオルシはここサーナタルエ処か、国中で流通して無く、コンセの村でしか入手できない、オヤスの店でも扱っているから行けば譲ってもらえると思うけど‥‥‥‥


 「どうぞどうぞ、お代はいいですから持って行ってください」とか言って気を遣われそうだし、オヤスにも悪いし直接買いに行くか


 移転門は許可さえあれば1日中使う事が出来る、それでコンセの村に一番近い移転門まで移動して、コスモで飛んで行けば太陽が昇る前に家に戻れるだろう、コンセの村の人達も今の時間は起きてはいないと思うけど、マークを無理やり起こして買うことにする。


 さて出発と行きたい処だが、体の中に酒がまだ残っているためバギーの運転が出来ない、この世界にも飲酒運転は取り締まりを受けるし、俺自身もちゃんとした運転が出来るとは思わない

 「郷に入っては郷に従え」

 ちゃんとその国の法律は守るべきである、これは社会の常識だ。

 となるとバギーは無し、公共の移動機関は今の時間帯は動いてはいない、なら召喚獣で移動することにしよう


「コスモは‥‥落ちたら怖いし」

 少し頭がくらくらしている部分もあるのでコスモは止めにする、空を飛んで落下は危ない、落ちても魔法があるから普段は大丈夫だけど、今の状態では加減が難しい、サーナタルエ内で落ちて魔法を使って加減を見誤り、住居や公共の物を破壊となると、迷惑どころか逮捕されてしまう

 となると、地上を走る事になるが地上を走った場合、コスモよりもデュラハンのハン子の方が安定感があって早い


「よし、ハン子で移転門に行くか」


 昨日と同じ服装だったけど、着替えるのが面倒で『洗浄』を掛けキレイにする


 ・・・

 

 ・・・


「良し、しゅっぱーつ」

「ひひーん」


 『照明』魔法を使い、車で言うヘッドライト代わりにしまだ日が昇らない道を走る、コスモと違いやっぱりハン子は走りに安定感がある、走る時の揺れもほぼ無いし乗ってて疲れない、デュラ子と一緒に成長したハン子は更に走りに磨きが掛かってきたようだ。

 ハン子は鞍のみの簡単な姿でいる、よく考えたらハン子の重鎧も作らなきゃならないんだなと気づく。

 帰ったら俺とデュラ子とハン子の装甲パーツを作るべきか、それとも魔法を先に契約しに行くべきか悩んでいると


 ウウゥゥ!!


 後方からサイレンの音が聞こえた、この音はお巡りさんの乗る巡回車だろう


「おっと珍しい」


 治安のかなり良いサーナタルエではお巡りさんの活躍がかなり少ない、「税金泥棒」なんて呼ばれ方もたまにある位だ。

 後方を確認するとかなりのスピードを出している、よほどの重大な事件なのか?

 

 俺は邪魔にならないように道路脇にハン子を寄せた








 ・・・・・


 ・・・・



「ハヤト隊長、ちょっと‥‥これは困ります」


「すみません‥‥‥‥」


  


 サーナタルエの都市条例

 

 『サーナタルエ内での召喚獣を使った移動および飛行を禁ずる』


 もちろんその事を知っていた。俺を狙い撃ちにしたこの条例、知っていたにも関わらずハン子を召喚し道路を走った。正直暗いからバレないだろう、こんな時間に見つかる訳ないだろうと思っていた。


 今いる場所はお巡りさんの職場、要するに捕まってしまった。太陽が真上を通り過ぎ、時間的には昼過ぎ、もうすっかり酒も抜けている

 俺の目の前にはお巡りさんと、本当に困った顔のタクティアがいた。


「軍やゴルジア首相に迷惑が掛かるのはもちろんの事、他の隊員達にまで迷惑が掛かるんですよ」


「はい‥‥‥‥」


「隊員の誰かがお巡りさんのご厄介になった。って言うならまだ分かります、ハヤト隊長が頭を下げればいいだけですから、ですがハヤト隊長自体がそうなってしまっては、他の隊員達に迷惑どころか示しがつきませんよ」


「そうですね‥‥‥‥」


 無表情で事務的な話し方をするタクティア、声に抑揚が無く淡々と話してくる、その話は5分ほど続き俺は「はい」「そうですね」を繰り返していた。永遠に続くと思われたこの会話も、お巡りさんによって終止符が打たれる


「ま、まあ、本人も反省している事ですから、私共もこれ以上事を大きくすることはありませんし、なにせ初犯ですから今回はコチラも多めに見るという事で」


 いえ、初犯じゃなくて2回目です、前回は街中で魔法をまき散らしてました


 お巡りさんの顔を見てみると、前回捕まった時と同じ人の様な気がする。前と違うのは、タクティアの代わりがナタルさんだった位だろう



 ・・・・


 ・・・・


「ご迷惑をおかけしました」


 タクティアと一緒に頭を下げ、その場を立ち去る事が出来た


「ふぅ‥‥助かったよタクティア、ありがとう」

 一気に肩の力が抜ける


「いや~、捕まったって聞いたのでびっくりしましたよ」

 今までの無表情から一転、いつものにこやかな顔のタクティアに戻る

「ふふふ‥‥それにしてもハヤト隊長が捕まるとは、コレを聞いたらベルフ達は大笑いするでしょうね」


「あんまり変な事言わないでよ?」


 今回捕まったことに対しては、警察は逮捕も罰金も無しという事になった。本人も反省しているからという事になったみたいだ。しかし、次は無いよとも言われた。

 前日とはいえ酒を飲んでいるので、飲酒運転に当てはまるかと思ったが、ハン子は車ではないのでそれは当てはまらないと言われた。


「所でハヤト隊長は、なんであんな時間に出歩いていたんですか?」


「コンセの村にクオルシを買いに行こうと思っていたんだよ」


「クオルシ? ああ、ゼリーの?」


「そう、あれに使う原料だよ」


「そうだ、ハヤト隊長はあのお店に顔を出しましたか?」


「あっ! まだだった、忘れてたよ」


「特に急ぎとは言われてませんでしたけど、時間があったら行って見て下さい」


「そうだね、今日はもう遠出する気は起きないから今からでも行ってくるよ」



 ・・・・


 ・・・・


 やってきましたオヤスの店、そしてなぜかタクティアも一緒に来た、カランカランと店のドアに付けている鐘が鳴りオヤスがいるか尋ねてみると


「社長は今、工場の方に出向いております」


「工場?」 社長?


 オヤスはいつの間にか会社を設立、長い間放置されていた工場を買い取り、そこを改装し今試運転の最中らしい


 ・・・・


 ・・・・




「ここがその工場か‥‥‥‥」


 規模は小さめだが、工場と言える大きさだった。工場の横には小さな事務所らしき建物も存在している


「あっちの事務所にいるのではないですか?」


「いや、試運転中って言ってたから工場の方じゃないかな?」

 少し音の漏れる工場の方にタクティアと移動する


「ほらいた」

 工場ではオヤスが真剣に、技術者らしき人と話をしながら魔道具製の機械を調節していた。


「こんにちは、オヤス」


 俺の声で気づいたオヤスは

「これはハヤト顧問待ってましたよ、体が完治したみたいで何よりです」


 やっぱり顧問なんだ‥‥


 いつの間にか顧問にされていたことに戸惑いながらも

「所で、何か話があるみたいだけど、何の用だったの?」


「はい、その事でですね‥‥‥‥」


 オヤスが言うには、工場の方を長男のモラン、喫茶店の方を次男のウエールに任せるという、オヤス自身は会社の社長兼、商品の研究に携わると言っていた。そして


「これが機械で作ったチョコレートなんですが、味の確認をして欲しいんです」

 四角い形をした板状の物を差し出してくる


 わーい! と喜んで手を伸ばしチョコレートを食すタクティア、多分ついてきたのはこれが目的だろう、俺も一つ手に取ってそれを食べてみる


 うん、俺の知っているのとは違うけどいいんじゃないかな? 俺的にはあの「大正チョコレート」が好きだったので少し微妙だったけど、隣で子供の用に喜んでいるタクティアを見ると、まあいいか、と思う


「これでいいと思うけど、出来ればもっと甘くないチョコレートも出してほしい、お年寄りだとちょっと甘すぎるんじゃないかな」


「ふむ」

 オヤスは少し腕を組んで考える

「なるほど、そう言われますとそうですね、喫茶店の方のグースセットを頼む人もチラホラと出てきていますから、そちらの方も出す必要があるでしょう、ですので‥‥‥‥はいどうぞ、コレが甘くないチョコレートです」


 何!‥‥もう既に用意してあるだと‥‥‥‥


 オヤスがニヤリと笑う、お前の考えていることは分かっているんだぞ、と言わんばかりに。どこか負けた気分を味わいながら甘くないチョコレートを食べてみる‥‥


 うん甘い、やっぱ甘いわ、これで甘くないって言うんだからこっちの世界の人の味覚は可笑しい、ただ、これ以上甘さ控えめにとか言ったら売れなくなるだろうし、オヤスに迷惑が掛かるかもしれないので


「うん、これでいいんじゃないかな、俺的にはもう少し甘くない方が好きなんだけど」

 一方タクティアの方は「うわっ‥」と、言っていた。こっちは合わなかったらしい


「なるほど分かりました、ありがとうございます‥‥‥‥では、こちらもどうぞ」

 もう一種類オヤスは出して来た、それは出された2つのチョコレートと違い、本当に真っ黒に、しかも輝いていた。まさか‥


 恐る恐る出されたチョコレートを口にして見ると

「美味い‥凄いよオヤス、今までオヤスが作ってくれたものの中で一番美味いよ」

 

 ニヤリと更に笑うオヤス、その笑いはニヤリを通り過ぎ不気味に、そして欲深い人間が悪い事を考えるような笑いになっていた。

 

 その横でタクティアが「げー」と、チョコレートを吐き出す、体が受け付けなかったみたいだ。


 オヤスが最後に作ってくれたのは、地球で言ったらビターチョコレートに当たる、俺自身ビターチョコレートが好きだった訳ではないけれど、これだけ甘い物だらけの世界に居たら、甘い物以外が全て美味しく感じられる

 オヤスが言うには流石にこれは商品として売り出すことが出来ない、なので俺だけの受注生産になると言っていた。ただ、それでも構わない作ってくれるならとてもありがたい


 結局、先に売りに出すのは最初の2つだけにし、軌道に乗ったら「ういろう」などの生産も開始していくとの事だった。


 あとポスターの写真を撮らせてほしいと言われたけれど、やっぱりお断りしておいた


 帰り際、オヤスにお土産を貰う、中身は俺の為に作ったチョコレート、それを氷で囲み溶けないようにし、『収納』に入れておく、オヤスに「頑張ってね」と言い残し工場を後にする


「それでは私もこの辺で失礼しますよ」

 同じくお土産を貰ったタクティアはニコニコ顔で帰って行った


「今日はありがとうね」

 タクティアにお礼をし、その場で別れる



「さて、この後どうするか?」

 今日はもうコンセの村に行く気も起きないし、魔法の契約に行くのは遅すぎる、となると武器防具の修理かな?


 取りあえず家に向かって歩いていると


「やあ」

 聞いたことのある声が目の前から聞こえる、俺は瞬間的に間合いを詰め、声を発した者の手を握る


「会いたかったよネクター、俺がどれほど君の事を考えていたのか知っているかい?」

 俺に声を掛けてきたのは麗しい声のネクターだった。


「近いんだけど、それに今僕は男の姿なんだけど」


「そんな事はどうでもいいんだよ、ネクターなら男でも女でも構わないよ、出来れば女の姿の方が嬉しいけど、それで今日はどうしたの? 俺に用事があるから来たんだよね? いや、絶対用事が有るはず、所で前に一度グースに変身することが出来たんだけど、その時は何で来てくれなかったの?  ずっと洗面所の前で待ってたんだよ? 色々我慢するのが大変だったけど━━」


「あーちょっと待って! ちょっと」


 まだまだ聞きたいことは山ほどあったが、ネクターに止められてしまった。そのままネクターはスッと俺から離れてしまう


 ちょっとだけ傷つく‥‥


「今日はね、またあのお店に一緒に行かないかなと思ってね」


「行くよ! ぜひ行こう! さあ、今すぐ行こうか」


「う、うん、お願いだからあんまりがっつかないでね‥‥それと今日は僕が奢るから、今までずっと奢られていたからね、今日こそは僕が奢るよ」


「分かった! さあ行こうか!」


 ネクターと一緒にオヤスの喫茶店‥‥あれ? 次男に店を譲ったから次男の名前になるのかな?  まぁ、いいか、どっちでも


 道行く人たちがネクターに気付き、その場で膝まずくのを尻目に、オヤスの店に向かい移動する。その向かう最中にふと疑問に思った事がある、ネクターは奢ると言っていたけど、どこからそのお金を出すんだろう? 収入源はなんだろう? もしかして魔法かなんかで作るのかな?


「ねぇ、ネクター」


「何かな?」

 機嫌がいいのか、その表情はにこやかだ


「ネクターはお金をどこから手に入れているの? 不思議な力とかで取り出すの?」


「お金は教会に行くと貰えるよ」


 教会で貰う?

「教会で何かしたら貰えるって事?」


「違うよ、行くだけで貰えるんだよ」


 女神を祀る教会は、企業や個人の寄付で成り立っている、その額は結構な物で、教会はそのお金で孤児院を開き、身寄りのない子供や様々な理由で生活の出来ない人達の支援などを行っている。ネクターは行くだけでお金を貰えると言うが、そのお金はそういった所から出ているのだろう


 いけませんね‥‥これはいけない


 その時、俺の頭の中には一つの悪だくみが浮かび上がった


「ネクター、君は結構ひどいことをしているんだよ」


「えっ、なんで?」

 いきなり真面目な声でそんな事を言われネクターは驚く


「ネクターが貰っているお金は、企業や、個人からの寄付で出来ているんだよ」


「そ、そうだね」

 ネクターはもちろんその事を知っていたらしい


「世の中にはまともに食事を取れない人や、住む家すら無い人達がいる、それを教会はその寄付金で手助けしているんだ」


「う、うん‥‥」


「要するに、ネクターはその恵まれない人達が使うべきお金を、自分の欲を満たす為に横から掠め取って行っている訳だよね」

 実際はそうでもないとは思うけれど、教会も多分いつネクターが来てもいいように、ネクター積立金みたいなのを渡していると思う


「い、いや、でも、これはずっと昔から‥‥」


「食事も出来なくて、つらい思いをしている人が目の前にいてもそう思うかい?」


「そ、それは‥‥‥‥」


 よし! 俺の勝ちだ!


 俺はゆっくりとネクターの肩に手を回し


「だからさぁ~ネクター、俺と一緒に働いてみないかい?」




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