82 サイズ
「デュラ子、サイズを図るぞ」
首相から借りている家の庭にある鍛冶部屋、首相にお願いして俺がいない間に作ってもらった場所だ。
これでいちいち本部に行かなくても修理などが出来るようになった。
「私の体のサイズなら━━」
「待て待てデュラ子、お前が自分のサイズを把握しているのは分かる、でもな、俺の楽しみを取らないでくれ」
「あっ! 私としたことが、差し出がましい事を言って申し訳ありません」
「いやいや、いいんだ分かってくれさえすれば」
「はっ、ではどうぞ主よ」
「うむ!」
・・・・
・・・・
デュラ子の軽鎧の装甲アタッチメントを作る為に、体のサイズを図ったのだけど、図った瞬間に気が付いてしまった。
軽鎧の上にアタッチメントを付けるのであって、軽鎧の上からサイズを図らなければならない、頭のどこかで全裸にしてサイズを図る事を想像し、それを勘違いしていた俺は初手でガッカリしてしまった。
思い起こせば前回もそうだったのに‥‥
「主よ、先程と違って何やら元気がないように思えるのですが」
「うん、俺の勘違いだったんだよ、デュラ子は悪くないから気にしないで‥‥」
「はあ‥‥」
その後は淡々とサイズを図っていく、唯一の救いはお腹周りを図った時、念入りに丹念にそして慎重に、ゆっくりと時間を掛けて図らせてもらった。
「はいおしまい、所でデュラ子、兜は今の状態を強化するのと、フルフェ━━」
「フルフェイスでお願いします!」
「‥‥ああ、そう? ならそうしておくよ、じゃあノーム達と変わってくれる?」
「分かりました、では兄上達と交代してきます」
兄上?‥‥
デュラ子が魔法陣に戻ると同時に、ノームが入れ替わりで出て来た
「よお! 大将、鍛冶仕事ですかい?」
デュラ子はこいつらの事、兄上って呼んでるのか‥‥まぁどっちでもいいか
「ああ、レールガン用の弾と、そこにある新品の鎧3つををバラして欲しい、ばらした奴はアタッチメントとして使うからな、バラし方は前回俺がやった奴と一緒だから、前と同じようにやってくれ、それとお前たちが消費した消耗品も作れる所まで作っておいてくれ」
「分かりやした、さっそく取り掛かりまさぁ」
ノーム達にレールガンの弾と鎧のアタッチメント、そして自分達が使った消耗品づくりをさせる、一方の俺は、まずは自分の刀の修理に取り掛かる
今日は夜から飲み会があるから、作業が出来るのは夕方までだな‥‥効率よくやれば15日程で終わるかな?
そして、刀から魔鉱石を剥がしている最中だった時
「大将、お願いがあるんですがね」
「何?」
「俺達の武器なんですが、急に使いづらくなりやしてね、ちょっと調整してもらえませんかね」
俺の後ろには銃剣を持ったノーム達が立っていた。
「そっか、お前達大きくなったから合わなくなってきたのか‥‥なら新しいのを作るか? 明日にでも別の大きめ銃を‥‥47式でいいかな? 明日貰ってくるからそれで作ろうか、銃剣の方も変えた方がいいから‥‥全部作り替えだな‥‥‥
「全部作り替えかよ‥‥しかも3丁も」
「へへっ、お願いしやす」
ノーム達はそう言って頭を下げてきた
益々やる気が減少していくが、やらなきゃしょうがない、刀の魔鉱石を剥がし終わり刀の刃自体もばらし終えた。
溶かして打ち直すのは今日は時間的に無理なので、俺の軽鎧の修理に入った。
・・・・
・・・・
「大将、もう時間なんじゃないんですかい?」
「え!? もうそんな時間か、じゃあ今日はこれで終わりだな、片づけに入って‥‥そっちは片付け終わっているのか、よしお疲れさん、戻ってもいいぞ」
「今日は酒を飲みに行くんでしょ? 俺達にも土産なんかあったら嬉しいんですがねぇ」
口の所でクイッっと酒を飲む仕草をする
「分かったよ、持って来てやるから」
「うす! お願いしやす!」
魔法陣に帰って行ったのを確認し
「さて、着替えてから行きますか」
◇◆◇◆
「おいっす! まだ来てないのは誰? あれ? 俺が最後か、悪いね待たせちゃって」
家で着替えてから出発し、時間5分前に到着したがどうやら俺が最後だったらしい
「いえ、早く来すぎても予約の時間までは入れませんから」
その時丁度‥‥
「ご予約のお客様~、お時間になりましたのでお席に案内しま~す」
お店の店員さんから声が掛かる
「丁度良かったみたいですね、では行きましょうか」
店員さんの後をぞろぞろとついて行く隊員達、休暇中ということもあって皆軍の鎧姿や制服ではなく、それぞれ私服姿になっている、タクティアはしょっちゅう見えているから真新しい物は無い、どちらかと言ったら、まとまった感じのいつのも服装
ライカとエクレールは、その性格からかピシッとした感じで、普段からそれだと疲れませんか? と聞きたくなる
ベルフはダボッとした感じで、ジャージっぽい服装だった。俺の今の服装もベルフに近い
ただここまでは普通だったが、一人だけ場違いの様な服装の人がいる
「これから夜会ですか?」と言いたくなるような恰好の女性、ソルセリーだ。
煌びやか、というよりは‥‥‥‥ゴージャス! と言った方が合っている、他の人はそれを見ても何も思わないのか、ソルセリーのその姿を見ても特に関心は無いようだ。
もしかしたら俺が来る前に「そのゴージャスは何?」とか聞いているのかもしれない、ただ単にソルセリーが怖いから聞けない、という考えもあるとは思うけど
こちらの世界では、こういったお酒を提供するお店は大体、醸造所(お酒を実際に作っている所)が直接経営している所が多い、そういった所はチェーン店を展開して幅広く経営をしている、直接販売することにより、安く提供することが出来るし、自分の所で作った酒を宣伝することも出来る、移転門のおかげで、ハルツール国の大体の場所に1日以内で行けるのも大きい、そういった事でお店の中には自分たちの酒造所で作られた酒が瓶詰めされ、所せましと並べられている。
もちろんそれらを購入することも出来る。
「店員さんちょっと待って」
「どうされましたか?」
「先に酒を買っておきたいんです、酔っぱらって忘れるかもしれないんで」
「はい、でしたらコチラに‥」
そのまま店員さんに販売専用のレジに案内され
「購入される銘柄はお決まりですか? 何でしたら試飲も出来ますが?」
酒の味なんて俺にはよく分からないし、俺が飲むわけではないので
「各銘柄3本ずつお願いします」
「‥‥全部で30本程になりますが、持ち帰りは‥‥あっ『収納』持ちの方でしたか」
「いえ、本人たちに持って行かせますから」
「ご本人ですか‥‥?」
店員さんはチラリと後ろにいるタクティア達を見た
違うそっちじゃない
「おい、取りに来い」
「待ってやしたぁぁぁぁぁ!!」
ノーム3体が勢いよく飛び出して来た
「さっすが俺達の大将! 必ず約束を守ってくれると思ってやしたよ!」
3体はパンパンとハイタッチをし大興奮している
「ほら、ねえちゃん、さっさと持って来てくれ!」
「は、はい‥‥‥‥」
突然飛び出して来たノームに、あっけに取られながらも急いで酒を準備してくれた、それを自身の収納にセッセと仕舞うノーム
「タクティア殿、あれは本当にハヤトの召喚獣だったんだな‥‥‥」
「ええ、そう言ったじゃないですか」
「そう言われても、俺の知っているハヤトの召喚獣はもっと子供みたいに小さかったし‥‥顔はアレだったが、言葉も話せなかったぞ」
「私も最初は目を疑いましたけど、魔法陣から出てくるところを見ていましたし、本人たちが言ったようにちゃんとハヤト隊長のお世話もしていましたからね」
「そうか? 俺が見舞いに行ったときは必ず部屋で酒盛りをしてたぞ?」
「そんな事もありましたけど‥‥大体は酒盛りをしていましたけど、ちゃんとハヤト隊長のお世話もしていましたよ、オシメとか取り換えるのも彼らが全部やってましたし、その時に丁度エクレールもいましたからエクレールも知っているはずですよ、そうですよね?」
「えっ! え・・・それは‥‥」
「あれ? エクレールもいましたよね? いたはずですよ」
「タクティア殿、そ、その話は、ここでは‥‥‥‥」
なんという事でしょう‥‥‥‥男ならまだしも、というか男に見られるのも辛いのに、女のエクレールにもオシメの交換を見られてしまっていた。
その時意識が無かったことが幸いだが‥‥‥
ノームはエクレールが来ている時にオシメなんか交換するなよ、タクティアもその時居たんならもっと気を使ってよ
酒を回収しノーム達は魔法陣に帰って行く、これからあっちも酒盛りをするんだろう
ここで少し気になったのが、ノーム達3体の中で1号しか話をしない、残りの2号と3号は今まで声を発していない、もしかしたら1号しか話せないのかもしれないと思った。後で詳しく聞いてみる事にしよう
「それではご案内します」
店員さんに案内され今度こそ部屋に案内される、俺達が案内されるのは個室で8人程が入れる部屋だそうで、真ん中には長いテーブルがあり、両脇には椅子が3脚ずつ用意してあった。
テーブルの中央には魔道具が置いてある、これはコンロのだろう、これで煮たり焼いたり出来るようだ。
俺は右利きなので何となく右側の席の方に体が向く、そして右奥の椅子に座ろうとすると‥‥
「ハヤト隊長がそこに座ると、私がハヤト隊長の右側に座れなくなるので、真ん中の椅子にに座って下さい」
と、タクティアに言われた
「お、おお‥‥」
『右腕』と言う言葉がある
その言葉は、「重要な」とか、「信頼置ける部下」とか、そういった意味がある、それを以前『今日の寝る前のお話』の時にタクティアに話すと、タクティアは甚くその言葉に感銘を覚え、それ以来俺といる時は必ず俺の右手の方にいる、『右腕』だからと言って右腕の方に居なくてもいいんだけど、タクティアにはこだわりがあるらしい
「私がハヤト隊長の右腕だとすると、ハヤト隊長は私の左腕になりますね」
にこやかに言って来たこともある
「お、おお‥‥」
としか返せなかったけど
しかしながら、別にタクティアが隣に来るのは嫌じゃない、この隊の中で一番付き合いが長いのはタクティアだし、実際話をしてて楽しい
となると、俺の隣の席が空くことになるが、出来ればベルフに座って貰いたいな~と思う、別に隊員達を好き嫌いで見ている訳ではないけど、何となく話しやすいというか、大陸深部を一緒に苦労して通過した仲というか、なので左の席に座って欲しいな、と思ったのだが
俺の左の席に向かって来たのはソルセリーだった
あ、ソルセリーが来たか、ま、いっか、そういえば俺が目が覚めてから碌に話もしていないし、前回の作戦で一番頑張ったのはソルセリーだから、ここは隊長として‥‥
と思った矢先、一瞬で黄色の魔法陣が現れ‥‥
「痛っ!」
ソルセリーの声が聞こえた、そしてソルセリーの前に立っていたのが、真っ赤なドレスを身に着けたデュラ子だった。
「「 おお~ 」」
ライカとエクレールが感嘆の声を上げる、今のデュラ子の来ているドレスは、一着ぐらい持っていた方がいいだろうと思い買ってあげた物で、背中がざっくりと腰の方まで空いており、そしてスカートの部分には大きく開くスリット、そして袖が無く、な、なんと! 横からお乳が! 要するに横乳が見えるとても大胆な物になっている
そのままレッドカーペットを歩いてもいいようなドレスだった。
「主よ、酒という物を私も飲んでみたいのですが、兄上達に分けてもらおうとしたら拒否されまして」
セコイ! ノームセコイ! あんなに渡したのに分けもしないとは
ただ、それにしてもデュラ子も飲む気まんまんらしく、最初から頭を抱えず首の所に装着している、つまりぱっと見普通の女性にしか見えない
「これが隊長の召喚獣ですか‥‥」
ライカがぽーっとしたような真っ赤な顔をしデュラ子を見つめ
「何と美しい、同じ女性の私でも見惚れてしまいそうだ‥‥‥‥」
同じく少し赤い顔でエクレールが見つめ
ギリギリギリ
と、歯ぎしりが聞こえてきそうな憎々しい顔でデュラ子を睨む
ソルセリーがそこにいた。




