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34 グースの砦 ①

 一切の音も聞こえない、真っ暗な場所で目が覚める


 『照明』

 魔法で暗かった場所が照らされ、部屋の中だと分かる


 まずはトイレに‥‥


 トイレは地面に3メートルほどの縦穴が開いており、そこには土で出来た蓋をしている、使う時はその蓋を取りそこで用を足す、便器は和式で、表面を火の魔法で焼き陶器のような滑らかさを出している。


「‥‥ふぅ」


 『洗浄』

 

 元の世界に戻れる時があったら、この『洗浄』だけでも使えるようにできないだろうか? 便利すぎて、これが無いともう生活できない。


 部屋の鍵代わりの、土で出来たツッパリ棒を外し、これまた土で出来た引き戸を開ける


「おはようさん、何かあったか?」

 ノーム2号はナイナイと手を振る


「お疲れさん、戻っていいよ」

 その言葉でノーム達は光の粒になり、魔法陣の中に消えていく、続けて召喚するのは鳩のポッポ、鳩と言っても召喚獣だけど、ポッポの背中に全て天然の魔石で出来た、皿の形をした物を背負わせる。


「今日も頼むよ」


 クルッポーと言い残しポッポは飛び立って行った、ポッポに背負わせた天然魔石を通して『探知』を行う事により、範囲が格段に広がった。


 通常の『探知』は、常に相手の場所が分かるよう、リアルタイム式のレーダーのような使い方をする、その使い方だと相手の動きを手に取る様に分かるが、魔力の消費が激しい、それと1種類しか探知できない。


 俺が今実践しているのは、一瞬だけとらえるようにするやり方、水面に物を落とした時に出る波紋のように一瞬だけ『探知』を飛ばす。

 最初に魔物に反応する探知、次に生命探知、これは生きている全ての物に反応する、ただし、マシェルモビアの兵が持つ潜伏隠蔽には反応しない。

 

 次に『潜伏・隠蔽』解除、この解除の魔法は範囲は狭く、天然魔石を通しても範囲は50メートル、この魔法の範囲にいる者達の『潜伏・隠蔽』は解除される。

 そして続けざまにもう一度生命探知を行う、これにより最初の生命探知との反応の差でマシェルモビアの兵かが判断できる。


 そして最初の魔物の探知に戻る、以下繰り返し、3種類の魔法を1秒おきに4回、これで1セットになる、正直やりずらい所はある、感じ的にはチカチカ光る画面を見ているようだが、慣れてしまうとどうということはない、一瞬だけ反応させることにより、魔力の消費も抑えられた。


 その探知方法を、天然魔石を背負ったポッポを通じ、空から警戒をしている、背中に背負わせた天然の魔石の皿、あれで探知の距離は500メートルにまで伸びた、それにより広範囲の探知が簡単に出来るようになっている。

 別に皿の形でなくてもいいんだけど、何となく、地球の軍にある哨戒機なんかが背負っている、円盤な感じにしたいなーと思ったから、あの形にしただけである。

 ちなみにあの天然の魔石と、もう2つ別の魔石を買いたいと、その魔石の値段を首相に言ったらものすごく渋い顔をされた、首相から見ても結構なお値段だったみたい


「天然の魔石の欠片とかではダメなのか?」

 と言われたが

「駄目です、必要経費ですよ」

 と押し通した。直接会って直談判したのが良かったみたいで承認してくれた、欲しい物があったらまた直接来ますと言ったら、露骨に嫌な顔をされた、今度行く時は、この仮面はもちろん外して行く。


 この召喚獣ポッポを使った『探知』には一つだけ欠点がある


「‥‥ゴクッ‥‥‥‥ハッ!」

 ダダッ!


 覗いてた人がいたらしい、この探方法だと、ポッポから流れてくる情報に集中しすぎて、自分の周りの事がおろそかになってしまう、だから安全な場所でないと出来ない。


 ちらっと見えたけど‥‥あの頭の高さからして子供かな? ここに来ると親に怒られるぞ


 

「異常なしかな」

 村の周りを大きく一周、そして緩衝地帯とつながる村の北側10㎞魔物の確認、10㎞の理由は、そこまでしか『探知』魔法を中継出来ないから

 周囲の安全が確認されたらポッポを帰還させる、これを朝昼夕の3回行い、村の安全を確認する。 朝の確認が終わったらやっと朝食だ、部隊宿舎には寝泊まりせず、自分が土で作った砦で過ごしている、俺一人しかいないのでこうするしかないのだ。


「美味い‥‥」


 朝食での一言、ちなみにこの美味いは保存食にしたパナンではなく、首相から教えてもらったトロン茶だ、あのくどいパナンの甘さをすっきりと洗い流してくれる、この世の穢れを落としてくれるように、この世界で一番うまい飲み物を飲み干し一息つく


「あ、あの、おはようございます」


「おはようございます」

 

 一息ついていると、怯えた様子で挨拶をしてくる村人がいた

「あの‥‥、この柵とか、この櫓は何でしょうか」

 

 村人は俺の顔ではなく、俺の頭の上に乗っている物を見つつ聞いてくる


「魔物から楽に村を守るための物です」


「昨日は無かったと思ったんですが‥‥」


「ええ、昨日の夜のうちに作りましたから」


「そ、そうですか‥‥」


 ふふふ、驚いたでしょう? 秀吉でも驚くんじゃないですかね。


「それで、その‥‥これから薬草を取りに向かいますので‥‥」


「分かりました、この設置している柵は今日中に両端を2キロほど広げる予定なので、帰ってくる時もここを通る様にお願いします、あと一応、朝一でここから北側10㎞ほどを探知しましたが、魔物はいませんでした、ただ、分かっていると思いますが、魔物も移動しますので十分気を付けてください」


「へ?‥‥あ、ありがとうございます」


 村人はペコペコと頭を下げ、村の北方面に歩いて行った、こうして何人か送り出し柵の延長をすることにする、新しく作った柵のすべてに『硬化』と『耐壁』を掛け終わった頃には昼を迎え、昼食にする


「カレーが食べたい‥‥」

 日に日にこの世界に対する食の不満が溜まってくる




 昼食後、ポッポを飛ばして広範囲の探知を行った後は正直やることが無い、ただ、周囲の警戒もあるので『探知』魔法は欠かさない、しかしながら普通の探知魔法は50メートルが限度、なので広範囲に届くよう俺の頭の上には、首相に許可を貰い買ってもらった天然魔石が乗っている


 ウサギの耳の形をした魔石が二つ、うさ耳が頭の上に生えていた、この形になった理由は、元々フランスパンの形をした天然魔石であって、ただ単に加工がめんどくさかったから。

 そのまま頭の上に乗せたらこうなってしまった。


 ポッポ用を俺と兼用しても良かったんだけども‥‥頭に皿が乗ってるのってなんかカッパっぽいし、なので俺専用を作った。

 皿もうさ耳も、どちらにしてもアホっぽい、今となっては後悔しかない。


 本来魔石に触っているだけでも効果はあるけれど、兜のように頭に乗っけたら邪魔にならないだろう、と思い頭にのせるタイプにした。

 残念な所は天井が低いとよくぶつける、扉をくぐるときは要注意。

 

 しかし効果は素晴らしく、ポッポの時と違い、中継が必要ないので探知の範囲は周囲700mにわたる、しかし結構重いので、最近覚えた『重力』魔法を付与して軽さを軽減してある。

 ポッポを出していない時は、自分でも『探知』魔法を継続して掛けつつ、読書し時間をつぶすことにしている、その間は一応ノーム3体も出しておく、そして夕方になるとまたポッポを使い、広範囲の探知、寝る時はノームに見張りをさせる


 ・・・・・・


 俺が最初にまずやる事、村を守るための砦を作る


 ポッポに広範囲の探知を1日3回、周囲の安全確認、起きているときは自分でも常に『探知』魔法を掛け、寝る時はノームに見張りをさせる。


 俺一人で村に駐留する場合、こうすることで一人でもやっていけている、これまでの駐留では魔物など出ては来なかった。

 暇な施設の守衛さんみたいなものだろう、たまに見回りするくらいの楽な仕事です、広範囲の『探知』は、本来する必要無いのだけど、魔物の奇襲を受けないようにするためにやっている、いきなりだと一人では対処できないし


 暇っすね‥‥‥‥

 

 グースの威圧効果で、俺のいる場所にはほとんど寄り付かない、前の村の駐留では3週間、ほとんど誰とも話さずに過ごしてきた。

 ここクジュの村では薬草の採取の為、仕方なく俺の作った砦を通る人が数人いて、挨拶ぐらいはして行くが、話はしないというのは前回と同じだろう、小さな村は閉鎖的な所もあり、よそ者に対して心に少し壁がある、それがグースとなればなおのこと。

 最近分かったことが、人と話をしない時間が多くなると気持ちが何故だか落ち込んでくる、これだったらまだ都会の方が気持ち的に楽だったりする。


「早く交代してくれる部隊が来てくれたらいいな‥‥」

 こんなことをボヤキながら一日は過ぎていく


 しかしこの一週間後、クジュの村で一度だけだが魔物と対峙することになる、それで、この村での生活は大きく変わった。


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