↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/260

32 エクレール


「落ち着きましたか?」


「え、ええ」

  

 最悪だ‥‥


「キャンプの司令部の方に連絡するので少し待っていて下さい」


「分かった」

  

 男に漏らしたのを見られた‥‥


 救助に来た男はそう言って少し離れた場所に移動した、


 死にたい‥‥


 こんな姿レオに見られたら幻滅していただろうな‥‥『洗浄』魔法まで掛けられて‥‥


 あの男はニーアと同じ隊に入った召喚者だったな、ニーアがやたらと自慢して鬱陶しかったな‥‥‥‥



 ◇◆◇◆◇



「おーバリスじゃないか! 奇遇だなこんな所で」


「‥‥同じ地域担当で、しょっちゅう顔合わせてるのに、久しぶりみたいなこと言うなよ」


「そうか? 忘れっぽくてな、すまないなハハハ!」


「はぁ‥‥鬱陶しい」


 我が部隊バリス分隊は、大陸中央緩衝地帯を担当しており、そして同じく中央を担当しているカナル隊ともちょくちょく顔を合わせることが多い、バリス隊長とカナル隊長は同期であり、仲は悪くないけど色々と競い合っている所があった。


「バリスよ、最近困ったことがあってな、少し相談に乗ってもらえるか?」


「‥‥何だよ」

 言いたいことは分かってるぞ、と言いたげな顔をしている


「ウチにもとうとう召喚者が入ることになってな」


「‥‥知ってるよ」


「部隊の隊列をどうしようか悩んでいるんだよ、通常の召喚者用の隊列にするのか、今流行りの新しい隊列にするかでな、いやはや参ったよ」


 参ったよ、とは口では言っているが、あれは参ってない、ただ自慢しに来ただけだ、バリス隊長もうんざりした顔で話を聞いている。


 と、そこへ


「よっ! エクレール、元気してた?」


 ああ、ニーア‥‥五月蠅いのがまた‥‥

「いつも通りだが‥‥」


「そっかぁ、そりやー良かったよ、でさ、ちょっと聞いてよ! 凄いんだよ!」


「何よ‥‥」


「ウチにね、とうとう召喚者が入ることになったの!」


「知ってる‥‥」

 もう既に軍全体が知ってる‥‥


「竜騎士みたいな召喚獣を持ってるんだって、凄いよねー、それに合わせてさー、うちの隊の装備もいい物に変わるらしいんだよ、武器だってさー‥‥」


 ニーアがいつまでも自慢している時、ニーアの後ろに、この拠点では見たことのない女性が歩いていた


「ニーア、あそこにいる女性ってここに来るの初めてよね? どこかの隊で補充された人だろうか?」


「うん? あーあれはミラだよ」


「み、ミラ? あれが!」

 ミラと言えば、前髪が両眼を覆っているほど伸びており、後ろもただ単に後ろで結っているだけ、どちらかというと、モッサリした感じがする女性隊員だったはず‥‥それが‥‥


「うん、竜騎士みたいのが入るって聞いてから気合が入っちゃってね、何でも天使ネクターの追っかけはもうやめたんだって、それで、今度入隊予定の召喚者一本で行くらしいよ」


 あ、あんなに変わるものだろうか? 変わり過ぎだと思うけど、別人では?


 え? でも待って、他にも変なこと言ってた。


「ねぇニーア、天使の追っかけって何?」


「さぁ? 何だろうね」





 ◇◆◇◆◇



 カナル隊長が戦死したとの報告があった時、バリス隊長はかなり落ち込んでいた、言い争っていてもやはり仲は良かったのだろう。


 そして、目の前にいる男が、カナル隊に所属していて、ミラの狙っていた召喚者でもあり、グースと‥‥


 私もあの映像は見た、そして彼の威圧の事も聞いている、しかし聞いていても尚、私は恐怖してしまった、ここまで酷い物だとは思わなかった。


「司令部には連絡しました、2日もすれば別の隊が来てくれるそうです、俺はそのあと別の任務があるのでそこで分かれることになります」


「そ、そうか、それにしても助かった、ありがとう」

 彼がどうやってここに来たのか疑問に思ったが、そういえば、空を飛べる召喚獣を持っていたな‥‥それに乗って来たんだろう


「それで、バリス隊の遺体や、もしくはタグの回収は出来ていますか?」


「いや、出来なかった、奇襲されてな、それどころではなかった」


「では回収に向かいましょうか」


「‥‥いや、待ってくれ、回収と言ってもかなりの数の魔物に襲われたんだ、まだその場所に魔物がいるかもしれないし、あれだけの数がいたとなると‥‥、多分あの辺りには魔物の集落が出来つつあると思う、だから‥‥回収はもう不可能だ」


 そこで私は自分で言って、すこし疑問に思った。私を追って来た魔物はあれだけだったのか? もっといたはずだったと‥‥


 男は少し考えてから

「襲ってきた魔物は、オスの個体でしょうし、あそこの林の中にいた魔物は全部処理できました、集落にいるのはメスか、子供がほとんどでしょうから何とかなると思いますよ? それとも、仲間の回収はしたくありませんか?」


「したいに決まっている! ‥‥あ! あぁすまない‥‥」

 思わず大声で怒鳴ってしまった、男は怒鳴った私の顔を見てニコリと笑い


「決定ですね、場所を教えてもらえますか? それと回復魔法は使えます? 俺も一応は使えるんですが、効果がなくて」


「ああ、使える、もう既に掛けてあるから、しばらくすれば動けるようにはなるだろう」


「なら問題ないですね、動けるまではこれに乗っていて下さい」


 そ男は魔法陣から真っ白な召喚獣を呼び出した。


 純白の‥‥なんてキレイな召喚獣だろうか、あの映像にも映ってはいたが、実際に見るとさらに‥‥


「こいつは一人乗りでね、二人乗れたらそのまま飛んでいけるんですけどね」


 私はこの純白で、角の生えた召喚獣に乗せてもらい、腰にベルトをして固定してもらった、まだ手も足も踏ん張ることができないからだ。

 私をのせた召喚獣は、そのまま今来た場所を引き返し林の中へと入っていく、林の中は私が通ってきた時とは違い、木が砕かれ、地面に穴が多数空いていた、ここで一体何があったのか? 先ほどの光と音が原因だろうが、もしかして私を追って来た魔物を全て討ったのか? かなりの数がいたと思ったが‥‥‥‥そもそもこれをやったのはここにいる‥‥と、そこで気づいた。


「貴方の隊の人たちはどこにいる?」

 そう、さっきから姿がみえないのだ


「俺は隊に所属してないので一人ですよ」


「えっ‥‥」

 一人でこれを? 召喚者はここまでの者なのか? バリス隊長が欲しがる訳だ‥‥


「そうだ、俺、軍に籍は置いてるんですけど、軍とは今無関係なんで、この件の報告書はそちらでお願いします」


「あ、あぁ、分かった」

 周りには大量の魔物の死骸が散乱している、これはどう報告書に書いたらいいやら‥‥




 ・・・・・・



「俺から目を反らすようにすると、少しは楽になれますよ」

 そう言って男は、私の乗っている召喚獣から少し離れた場所を歩いている、威圧に対する私の負担を考えての行動だろう


 名前もその時聞いた、ハヤトと言うらしい、ニーアがそう言っていたな‥‥

 ハヤトの行動には少し不思議な所がある、わざわざ通りにくい場所を通ったり、大きく回り込むような進路を取ったりしていた。

 理由を聞いてみると


「あの先に魔物が結構いたんで」

 と答えた、本当にいたかは分からないが、この間に魔物との遭遇は無かった、よほどの『探知』魔法の使い手なのだろう。


 その後も一度も魔物との遭遇は無く、その日は野営をすることにした。


「こ、これは‥‥」


 そこに出来た建物は小さいながらも砦だった、土で出来た柵に、見張り台まであった、見張り台の下には建物が2つある、見張り台の上は小さな人が辺りを監視し、柵の後ろにも小さな人が2人控えていた。


 野営時に土で壁を作る人がいると聞いたことがあるが、砦を作る人は聞いたことが無い、それに砦を囲むのは土で出来た柵だ、しかも、『硬化』が付与してある

「壁にすると、外が見えないですよね」

 と、言われた、なるほど‥‥あの小人も銃を持っているしこっちの方がいいのか?


 見張り台を見てみると、恐ろしく細部までこだわっている、台の上には敵襲を知らせるための鐘まで付いていた。

「鳴るのか?」


「鳴りませんよ、土ですから」

 

 じゃあ何で作った。


 見張り台の下にある四角い建物が2つあり、それぞれに、ハヤト、エクレール、と表札まで付いている、中は狭いながらも、壁には土で出来た絵画や花瓶、そしてトイレまで付いていた。

 そしてこの砦全てに『硬化』が掛けられている


 ハッキリ言って、ここまで魔力を無駄にする人は初めて見た、でも結構凄い


「『照明』とか使えます?、使えないと真っ暗な状態になりますけど」


「この中で寝るのか?」


「ええ、結構頑丈に出来るので大丈夫ですよ、見張りもいるし、この土で出来た部屋は防音もしっかりしてますから」


「そ、そうか‥‥しかし頑丈にしたり‥‥は分かるが、防音とかは意味があるのか?」


「ええ、覗きに来る人とかいますからね、頑丈にしないと乗り込んできたり、聞き耳を立てたりとか」


「そ、そうか‥‥」

 覗きとは何だろうか? 何を覗くのか? 『照明』魔法が使えない私はその日、真っ暗な土で出来た部屋で一夜を過ごした、真っ暗で全く音が無い部屋は意外にも安心して眠ることが出来た。


 

   ・・・・・・・・



 次の日、出発する前に砦は魔力に戻され、跡形もなく消えた


「今日もコスモに乗っていてください」

 動けるようにはなったが、まだ普通に歩けない私は今日も召喚獣に乗せてもらっていた、そして私はその場所に付いた‥‥私たちバリス隊が襲撃された場所に‥‥


「何も残っては無いですね、血の跡があるくらい」


「ああ」

 何か残っていればと思ったけど


「多分魔物の集落に持ち帰られたんだろう、もう回収は‥‥無理だな」

 バリス隊の遺体はもう回収できない、私の愛したレオの遺体も‥‥


「それなら集落を探しますか」


「は?」


「ここまで魔物が来たってことは、集落もこの近くにあるはずですからね、集落があったらの話ですが」


「探すと言ってもこの広い場所をどうやって?」


「空から探しますよ」


「空と言っても、木が死角になって発見できるかどうか分からないぞ?」


「そのための用意もありますよ」


 乗っていた召喚獣から降ろされると、ハヤトは小さな白い鳥を呼び出した、この鳥も召喚獣なのだろう、その鳥に収納から取り出した、全て天然の魔石で出来た皿のようなものを取り出し、鳥に背負わせる、鳥と同じくらいの大きさがある魔石だ。


「天然の魔石なのは分かったが、その皿の形の意味は?」

 あの大きさの天然魔石、一体どの位の価格なのか?


「この皿がこだわりでね、かっこいいでしょ?」


 背中に皿を乗せた鳥のどこがかっこいいのか? さっぱり分からない、ハヤトはその鳥を飛ばすと‥‥、というかよく飛んだな。

 

 ハヤトはその場に腰を下ろし、焦点が合っていない目で一点だけを見つめていた、20分ほど経った頃だろうか?


「見つけましたよ、魔物の反応多数あり」


 なるほど、あの鳥を通じて『探知』をしていたのか、そんなことを出来る人はいるらしいが、結構高等な『探知』魔法の練度と、召喚獣の力が必要なはず


「バリス隊の遺体の場所も発見しました」


「そうか!」

 良かった‥‥これで回収できる!


「集落は袋小路のような場所に構えているので、これなら集落を全滅させることが出来るでしょう」


「そうだな、集落に残っているのはメスと子供位だから‥‥いや、それでも2人しかいないのだぞ、難しくはないか?」


「何とかなりますよ」


 やけに自身のある態度に少し考えたが

「分かった、足はまだ完全ではないが、魔法で尽力しよう」


「ええ、お願いします」


 ハヤトは召喚者、あの魔物の大群を退けたんだ大丈夫だろう、私は回復が得意だし、少しぐらいだったら攻撃魔法も‥‥


 ・・・・・・・・・


 と思っていたが‥‥私は何もすることが無かった。

 先ほどからハヤトがあの野営の時、砦を守っていた3体の小人と一緒に、永遠と魔法を放っている。


パン! パン!

 小人が銃を使い撃ち続け、ハヤトはひっきりなしに魔法を放っていた、たまに、魔法と銃弾の中を突っ込んでくる魔物がいるが


 パアァァァァァァン!

 甲高い音が聞こえ魔物の上半身が吹き飛んでいた。


 私は、邪魔にならないように、後ろに控えているだけだった


 何だろう? この状況には覚えがある、仮入隊の時だったろうか? 何をすればいいのか分からず、オロオロしてたな、懐かしい‥‥そして何だか寂しい。


「後は頼む」


 自分の召喚獣にまだ息のある魔物のトドメを命じ、「こっちです」遺体のある場所に案内をしてくれた。

 そこは、言ってしまうと解体所だった、狩ってきた獲物を解体する場所だった。

 武器以外、装備などは一か所に集められていて、タグもそこにあった、武器は魔物が使うために無いのだろう、装備は体に合わないからまとめてある、その場所には5個のタグがあった、名前は全てバリス隊の物。


 バリス隊5人のタグがここにあったことで、私の仲間は生きていないことが確定された、実は少しだけ、もしかしたら‥‥という気持ちはあった。


「エクレール‥‥こっちに遺体が、もう解体されているから判別は付きにくいと思うけど、一応確認を‥‥」


「分かった‥‥」

 遺体はほぼ骨だった、もうどれが誰の骨なのかも分からない、骨だけが散乱していた、この骨はバリス隊の物とは断定できないが、タグはバリス隊の5人の物だ、ここに転がっている人の頭蓋骨も5つ、だから‥‥間違いないのだろう、ここにある骨は‥‥



 そこで一つの頭蓋骨に目が留まる、その頭蓋骨には少しだけ髪の毛がまだついていた、赤茶けた髪色で癖っ毛の髪が‥‥


「‥‥覚えが?」


「ええ、‥‥‥‥私の婚約者のレオ」

 私はその頭蓋骨を抱え、まだ少し湿っている頭の部分を撫でる


 レオの頭蓋骨を抱きしめていた私を、ハヤトは暫く見ていたが


「‥‥少し周りを見てくる」


 そう言ってハヤトはこの場を離れてくれた。



 


 そして私は、その場で泣き崩れた。



 ・・・・・・・・・・・・・



「棺桶は今6個あるから、遺体は全て入れられるよ」


 6個あるということは、私の分も含まれていたのだろう、ハヤトが実際に使ったのは4個だった。 私が持っていいた棺桶にはレオの骨が仕舞われている、実際他の隊員の骨も混ざっていると思う、しかし、バリス隊全員の遺体を回収出来て良かった、諦めていたから尚更


 ハヤトが救助に来てくれて3日目、ようやく他の隊と合流出来た、色々あって合流した隊もなかなかこちらに来られなかったそうだ、ハヤトを見た時


「ヒッ!!」


 と驚いていたが、私の時と比べたら大したことない‥‥


 ‥‥あぁぁぁぁぁー! 思い出してしまった‥‥漏らしたことを、ハヤトはどうかこのことを内緒にしてほしい。


 ハヤトは合流した隊に、自分が持っていた棺桶を渡し、次の任務があるからと召喚獣で飛び去って行った、大陸西側の村への駐留らしいが‥‥一人で大丈夫だろうか? 普通はいくら召喚者と言えども無理だと思うのだが、でも、ハヤトなら大丈夫な気がする、3日間だけだったが、一緒にいたことでそう感じた。


 さて報告書にはどう書こうか?


 どう書こうかと言っても、そのまま書くしかないんだが‥‥




 これまでのハヤトは、報告を首相だけにしていたので、何をしているか? までは軍に伝わっていなかった。

 

 しかし、今回エクレールの報告で、ハヤトの今の状況、そして成果が軍に広まることになった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。