30 私兵
とうとう4年間の学校生活が終了することとなり、卒業を迎えることになった.
「「「おめでとうっす先輩!」」」
「うん、ありがとう」
欧米ズの3人が俺の卒業を祝ってくれる、しかし俺の周りにいるのはその3人のみ、魂まで食い込んだ威圧の力は健在であり、結構な距離を置いて皆離れていた、俺は卒業式には気を使って出ることは無かったが、卒業証書だけを貰い、帰ろうとしている所をこの3人に呼び止められた。
ただこの3人も顔色はすぐれない、けっこう無理をしているようだ。
グラースオルグの威圧の事も世間に知られることになり、よくわからず怯えていた人達も、命に危険がある訳ではないことを理解してくれるようになった。とは言っても、恐怖することに変わりはないが‥‥
ただ、それと同時に天使ネクターが俺の前に降りてきたことにより、俺がグラースオルグだということが確定してしまった。
「あの‥‥先輩これからどうするんすか?」
「さぁ‥‥」
「まだ決まってないんっすね?」
「何にも言われてないしね」
今現在、俺には仕事が決まっていない、というか入隊出来る部隊がない、ヒュケイそっくりの召喚獣を持ち、なおかつグースという厄災そのものの自分を、入れてくれる隊は無かった。
これから自分はどうなるのか少しだけ不安だ、でもなる様になるだろう。
「そうだ‥‥、お前たち全員『探知』持ちだったよな?」
「ういっす、俺ら3人とも持ってます」
「そうか」
収納から一冊のノートを出す
「お前達にこれやるよ」
「ん? 何のノートっすかね?」
俺が渡したノートには、最初から最後までびっしりと細かく魔法陣を書き込んである、ミラと一緒に買った魔法大全集もそうだが、その手の書物には文字や絵ではなく魔法陣が書かれている、それは音楽の音符の様な物で、そこから読み解く様に出来ている、ただし、魔法を契約した者に限りだ。
自身が契約をしていない魔法の魔法陣を見ても、サッパリ分からないように出来ている
「あ、あの、先輩これって!」
「俺が改良したものと、新しく作った魔法だよ、特にノートの付箋を挟んであるページの探知の魔法は、慣れるまでは大変だけど、慣れると息をするのと同じくらい気にならなくなるから。
『潜伏・隠蔽』解除と、生物そして魔物の『探知』をまとめてやる方法だよ、多分これを最初から使えていたら、‥‥俺はもうちょっとは上手く出来たと思う、ま、良かったら参考にしてよ」
「「「うっす」」」
3人共カナル隊から4人の戦死者を出したのを知っているので、素直に頷く
「それと、お前たちって何で常に召喚獣を出さないの? まぁ多分忘れてるだけだと思うけど」
この3人が召喚獣を出している所をあまり見たことが無い、個人の魔力量は常に魔力を使っていることによって、体の中に蓄えられる魔力が増えていく。
そんな理由で召喚者は召喚獣を出し続けている間、勝手に魔力を消費するので、召喚獣を所持出来ない人に比べ、魔力量が異常に高い、ちなみに俺の頭には鳩に似た召喚獣ポッポが鎮座している。
「あ、そうだ、出してなかったっす」
「召喚獣同士の戦いの後忘れちゃうんっすよね」
「昨日の昼から出してなかったっすね」
3人共一番周りに邪魔にならない召喚獣を出した時
「ウエタケ ハヤト、お前に呼び出しがかかっている」
◇
中はこうなってるのか‥‥
軍学校の教師に呼び出され、そのままハルツールの政治の中心でもある建物に連れていかれた。
ハルツールの首都サーナタルエで、一番高い建物の中になる。
エレベーターでどんどん上昇し
「チン」
120階で停止、扉は開いた
この建物はハルツールの政治の中枢機関、日本だったら国会議事堂に当たるだろう、日本の国会はそこそこ古い建物にもかかわらず、古臭さがなくモダンだ、それでいて威厳を感じる佇まいでもある。
日本の国会よりも歴史の古いこの建物だが、象牙のような素材で出来ており、まるで新築のように外見も内装もキレイだった、魔法って便利ですね
「ウエタケ ハヤトをお連れしました」
緊張気味にとあるドアの前でノックし、俺が来たことを伝える職員の男性、緊張しているのは男性の魂に食い込んだ威圧のせい、案内されてる間、一度もこちらを見てはいない。
どうもウチの威圧がご迷惑をお掛けしてスミマセン
「どうぞ」
扉の中から渋い声がして中に通される、中にいたのは坊主頭の初老の男性
「よく来てくれた、ウエタケ ハヤト」
その初老の男性はゆっくりとこちらに向かって歩いてくる、少し顔色が悪い
「ワシはこの国の首相をしておる、ゴルジアという、会えて嬉しいよ」
ゴルジア首相と言った男性は、は右手を出し握手を求めて来た、なのでそれに応えて俺も右手を出した、しかし
「ん゛っ!?」
ゴルジアは出して来た手をサッと引っ込めた
「あ! あぁ‥‥すまない! 君の威圧の事は知ってはいるんじゃが‥‥」
「お気になさらず、他の方も皆そうですから」
「そ、そうか、すまんかった」
そう言ってもう一度右手を出して来た、顔から汗が噴き出している、大きく深呼吸をして恐怖を無理やり抑えているようだ
大丈夫かなこの人‥‥握手したとたん死んだりしないよね
もう一度俺も手を出すと、一瞬だけピクリと反応したが、そのままゴルジアは俺と握手を交わした
・・・・・
「そこに掛けてくれたまえ」
なかなか立派な椅子に腰を下ろす、深く沈むわけではなく丁度いい硬さになっている
「まずは謝らさせてくれ、あの時の映像を世に出さないよう厳命したのじゃが‥‥結果的には漏れてしまった、そのせいで君にはつらい思いをさせてしまった、すまなかった」
ゴルジアはその頭を深く下げた
それを慌てて否定する
「あ、いえ、そう配慮して下さったことに感謝しています、どうか頭を上げてください、どのみち天使ネクターが自分の前に降りて来たでしょうから、その内分かることだったんです」
一応は考えてくれていたみたいだし、恐怖されるのは別だけど‥‥
「そう言ってもらうと助かる」
「それで、自分がここに呼ばれた理由というのは?」
「そのことじゃが‥‥おっと、すまない! 茶もだしていなかったな、直ぐに用意する」
お構いなく、と言ったがゴルジアは
「なに、ワシの趣味の一つでな」
と言ってお茶を入れる準備をした、俺に対する恐怖を和らげるための、自分自身のためでもあるんだろう、
「あぁ! しまった」
「どうかされましたか?」
「いや、普通の茶を切らしてしまっていてな、今あるのはワシ用の苦い茶だけなんじゃ、直ぐに持ってこさせるから、ちょっと待っていてくれ」
苦いお茶だって!
「ちょっと待ってください! その苦いお茶を飲ませてもらえませんか」
「え、えぇ? これは本当に苦い奴なんじゃがこれでいいのか?」
「是非お願いします」
・・・・・・・
・・・・・
「美味い‥‥」
この世界に来て初めてまともなお茶を飲んだ、味は紅茶に似て余計な甘みは殆どない、ほのかで上品な甘みと渋みが口の中に広がった
「そのまま飲むとは‥‥よくそんな物を飲めるのぉ」
ゴルジアはそのお茶にダバダバと砂糖入れていた
よくそんなの飲めますね、そっくりそのまま返してやりたい
一息ついたところで、ゴルジア首相の話は始まった
「さて、まずは君から預かっているあの‥‥『ばいく』‥‥だったか、君の許可を貰ってこちらで色々と調べさせてもらったが、そろそろ君に返そうと思っての」
こっちの世界に、俺と一緒に来てしまった兄さんの大事なバイク、原型はとどめておらず、鉄の塊となっていた。
「役に立ちましたか?」
「いや、君の話を聞いて調べてみたらしいんじゃが、結局自分達との作り方や、やり方とは全く違うとなっての、ただ勉強になったと報告にはあった、研究所に飾ってあるみたいでな、必要になったらいつでも送ると言っておった」
「分かりました」
とは言ったものの、送られても置く場所がない、というのも住む場所が無いからだ、あと数日は学校の寮に住めるのだが、それ以降となると‥‥何故か俺の住む場所がまだ決まっていないし、他の基地の寮になるのか? 移転門付近の寮になるのか‥‥自分としては本部の寮に入りたかったのだが、すぐ隣だから引っ越しも楽だし。
「‥‥それでの、君も知っているだろうが‥‥君を受け入れてくれる部隊がないんじゃよ」
「‥‥ええ、知ってます」
「軍の上の連中は君の召喚獣が優れているのは知ってるんじゃが‥‥入れてくれる部隊がないと‥‥」
「仕方ないですよ」
「散々竜騎士の再来やら何やら持ち上げといて、こんな仕打ちはしたくないんじゃが‥‥君は軍に入ることが出来ない‥‥」
何となくは分かっていた、そうなるだろう‥‥と
「その上収容所にまで入れてしまった、あの時ワシも君を収容所に入れるのを容認してしまった。あの映像を見てしまったら怖くなってしまっての‥‥、ホントすまんかった」
首相はそう言い頭を下げた
「‥‥いえ」
「‥‥‥‥君にここまでしてしまった‥‥この国を‥‥恨んでおるか?」
「いえ、この国には一度命を助けてもらってますから、それに仕事だったら付与の魔法を覚えているし、何とかなるかもしれませんから」
「‥‥グラースオルグの威圧は相当な物じゃろ? 果たして仕事は上手くいくじゃろうか?」
「・・・・・」
まず無理だろう、映像が流れて国民のほとんどが見てしまったこの国では‥‥
「ワシはな‥‥この国を憎んでおる」
「‥‥え?」
「ワシの生まれた村は西側の緩衝地帯に近い場所での、強力な力を持つ魔物が常に脅威に晒されていてな、年に何人も魔物に襲われそして‥‥喰われた。
この国の保護を受けるには、この国の一員としての税を納めなければならない、しかしワシの村はその税を納めるだけの力が無くてのぉ、産業が無いんじゃ、だから軍による間引きや、村への部隊の駐在は一番後回しにされた、
そんな時、村の近くに魔物の集落らしき物が出来たと噂があって、国に要請したんじゃ、今すぐに部隊を駐留させてくれとな、
‥‥だが国は何もしてくれなかった、ワシが親父と、たまたま隣の町に出かけてた時、魔物が村に攻めてきての、ワシらが村に帰った時には村は荒らされ、生きている者は誰もいなかった‥‥
ワシには妹がいてな、当時10歳でよくワシの後ろをよく付いてきてた‥‥、荒らされた家の中にな、魔物の食い残しがあって、その中に小さい手の指が一本だけ落ちておった‥‥」
当時の事を思い出したのか、首相は深く俯き、小さくそして深いため息をついた
「この国に復讐してやろうと思ったが‥‥方法が分からん‥‥、だからワシはこの国で偉くなろうとした、偉くなってこの国を変えてやろうと‥‥だが、駄目だった。
この国は中から腐っておった‥‥外からは分からんが、中から見ると腐り落ちる寸前だ、映像の事もそうだ、ワシが止めたにも関わらず流出した」
首相は身を乗り出し俺の両手をグッ! っと掴んだ、さっきの握手の時とは違い迷いが無かった
「ウエタケ ハヤト! ワシに力を貸してくれないか?、ワシはこの国を変えたいんじゃ」
ゴルジア首相の体は震えていたが、彼の眼には確かな覚悟があった。
◇◆◇◆◇
そろそろニーアが来る頃でしょうか‥‥
タウロンは馴染みの店で来る予定のニーアを待っていた
「うぇいっすぅ! まったー?」
「いいえ今来たところです」
相変わらずニーアは元気ですね
「いやぁ、葬式以来だねぇー」
「ええ、そちらはどうですか?」
カナル隊に居た時と変わらずの態度に、タウロンはホッとする
「うん、今の隊にはまぁまぁ慣れたよ、ただ酒を飲まない奴ばっかりだからね、正直がっかりだよ、カナル隊のように酒豪だらけだった頃が懐かしいよ」
「いや‥‥酒豪はニーアだけでしたよ」
「またまた、相変わらず冗談が下手だなー、で? タウロンはどうなの? あ! ちょっと待って先に頼もう! すみませーん!」
ハヤトの仮入隊時に歓迎会を行った飲み屋で、タウロンとニーアは久々に会い、酒を飲み交わしていた。
・・・・・・
・・・・・・
「あたしの隊でハヤトを引き取らないかって、今のとこの隊長に言ってみたんだけどさー、駄目だったよ、名前が出ただけでビビっちゃって‥‥」
「私の方でも言っては見たのですが‥‥」
「そっかぁあ」
「ただ、噂なのですが‥‥」
「ん? 何」
「首相が面倒を見ることになった、らしい、ですよ」
つい先日、今の隊長がそんな事を話していた。
「よくあんなのを囲う気になったな」
と言っていたが、ハヤトの事を知らない人にとっては皆そう考えるのでしょう、私が言えた事では無いのですが‥‥‥‥
「えっ! まじ? やるじゃんゴルジア」
「噂ですよ?」
「はーぁ‥‥よかった‥‥」
ホッとしたとニーアはドサッとテーブルに伏せる、結構な勢いでテーブルに覆いかぶさったのに、手に持っている酒はこぼさなかった。
「運が良かったら、キャンプなんかでまた会えるかもしれませんね」
「そぉだねー! で、休暇が取れたらさぁ! 一緒に取れたらまた3人で飲み‥み‥あぁ‥‥駄目だ‥‥」
「どうしました?」
「ほら、あたし達あの時‥‥」
「ええ、刀を彼に向けましたね」
タウロンはコップの中に入った酒をくるくると回し、中に入った酒をじっと見ていた
「ただ‥‥彼の威圧の事聞きましたか?」
「聞いたけど‥‥でもそれとは違うし、その時そのことを知ってたら、少しは変わってたかもしれないけど」
「もう一度‥‥会って話がしたいですね、彼はあの時のことを許してくれるでしょうか?」
「ハヤトなら分かってくれるよ、多分‥‥だからタウロンお願い!」
顔の前で両手を合わせお願いするニーア
「え? その言い方だと私に何とかしろと聞こえるのですが‥‥」
「ん? そー言ってるじゃん」
「‥‥はぁ、分かりましたよ、ハヤトに会えるかは別として」
どの道、何とかするつもりですよ、ニーアも私に押し付けるような言い方をしましたが、機会があれば自分でも行くでしょう
「あーあ、こんな時ミラがいたら一発なんだけどなー」
「ハヤトはミラの事を姉のように慕ってましたからね、ミラから口添えしてもらって‥‥って何で私の服を引っ張ってるんです?」
「ねぇタウロン、ハヤトとミラの関係って知ってるよね?」
知ってるも何も‥‥
「え、義理の姉弟のようなものでしょ?」
「‥‥いや、出来てたんだけど‥‥」
ん? 何が出来て‥‥ん!?
「え! 出来てる?」
「はぁー? 何で知らないのよ! あんたあの時いたじゃん! あの後二人ともすっきりした顔してたでしょ? というか、ちょくちょくベッタリくっついて、常にすっきりした顔してたじゃん!」
「まってください! あの時っていつの時ですか!? すっきりって、え! 事をしてたんですか!? 任務中に?」
目の前のニーアは、もう一つ盛大にため息をつき、呆れた顔で私を見ている
そんな事よりも、え? えー? 任務中ですよ?
「だからあんたは嫁に逃げられるのよ!」
「ち、違います! 逃げられたんじゃなくて、実家に帰っているだけです」
「2年も?」
「そ、そうです」
「子供と一緒に?」
「そ、その話は別にいいでしょう? それに、そうだとしても、気づいてたのはニーアだけでしょう?」
「イヤ、隊長も知ってたよ、隊長は見て見ぬふりしてたけど、くっついてくれた方がー、この隊に残るって考えたんじゃないかな?」
し、知りませんでした、あの二人が‥‥仲がいいと思ってはいたんですが
「あたしも苦労したよー、二人の時間を作ってあげるためにさー、野営の見張りの時、「あっちの見えない方でやってきなって」って言ってあげてたからね、いやー笑ったよ、ほぼ毎日だったからね
最初はそのままだったのが、そのうち壁とか作っちゃってね、音も漏れないようにとかしちゃってんの、ハヤトの魔法なんだろうけど、段々手が込んできてね」
‥‥あれ?
「ちょっと待ってくださいニーア、‥‥見えない所でしていたのに、何で壁を作ったとか、音が漏れないとか知ってるんですか?」
ぎくぅ! と、ニーアが珍しく酒を盛大にこぼした
「‥‥‥‥ほら‥‥あたしあの二人と一緒の夜の見張りだったし‥‥周囲の確認とか‥‥ご相伴に預かるとか‥‥ね、あ、あはははは‥‥」
「ニーア‥‥最低ですよ」
私は少しだけニーアを軽蔑してしまいました。
少し変な空気になったので話題を少し変えてましょうか‥‥
「まぁ、いずれにしろそのことを知らなかったのは、私とオリバーとブライだけだったんですね」
「いや? オリバーも知ってたよ? ハヤトの事をいつも見ていたからね」
「なるほど流石オリバーですね、必ず守らなければならない召喚者を常に見ていたんですね、流石です
オリバーには頭が下がりますね、あの戦闘で、ハヤトの前に出てマシェルの兵から守ったのも彼ですからね」
「ん? いや、性的な意味でだよ?」
「‥‥?‥‥え?」
「オリバーの奴、こう‥‥なよっとした体格の子が好きみたいでね、ちなみにハヤトが来る前は、タウロンの事見てたよ」
「ちょ! ちょっと! ちょっと待ってください、どういうことですか!」
その日、私は悪酔いしてしまいました
◇◆◇◆◇
今の私の所属する部隊は、大陸中央後方において魔物の間引きの任務を遂行しています、カナル隊と同じ『探知』を担当する重要な役割です
ニーアと一緒に飲んだ朝、私は路上にて目を覚ましました、これだけ飲んだのはハヤトがカナル隊に所属が決まった時以来でしょうか? あの時は全員路上で寝てましたね、お巡りさんにお世話になりましたが
ニーアと一緒に飲んでからもう半年過ぎましたか、早い物ですね‥‥次はいつになることやら
「タウロン、悪いんだけどさ、司令部のテントにこれ届けてもらっていいかな」
今の隊長です、カナル隊長と比べると少し頼りない感じがしますが
「分かりました、他に司令部に用事はありますか?」
「いや、無いよ」
これから任務に当たるため、中央のキャンプ地でその準備に追われ、忙しく過ごしています
・・・・・・
よし、司令部の用事は終わりましたね、次は仲間の破損した装備の‥‥
その時でした、あまり見かけない装備を身に着けた人物を見たのは
あれは、特注品でしょうか? 変わってますねー‥‥え? ‥‥ハヤト!?
そこには元カナル隊所属のハヤトがいました、よく見ると、周りにいた他の軍人たちは、ハヤトを避けるように離れていきます
「ハヤト!」
あの時の事を謝らなければ!
「ん? あれ、タウロン?」
その言葉、そして、こちらをハヤトが見た時、心臓を握られた‥‥あの時と同じ感覚が蘇ってきました、彼の威圧の事はもう聞いてはいますが、やはり恐怖で中々彼に近づけません
少しずつ、彼に近寄って行きました、彼は少し苦笑いを浮かべ私を待ってくれています
「大丈夫? しんどいでしょ?」
「え、ええ、何とか大丈夫です」
「久しぶりだね、もう1年年以上かな?」
「そ、そうなりますね、あ、あの、ハヤト」
「ん?」
「あの時はすみませんでした」
私はそう言ってハヤトに深々と頭を下げました
「ああ、いいですよ、いいですよ、大体皆そうなるし、あの時は俺もよくわかってなかったから混乱したけど、今は理由もわかってるし、気にはしていませんよ」
ハヤトは笑ってそう言ってくれます、
「ニーアも同じであの時の事を気にしています、どうかニーアの事も許してあげてください」
「大丈夫、特に何も思ってませんから、タウロンは体はまだ大丈夫? よかったらニーアとかの事も聞きたいんだけど」
ハヤトと久しぶりに話をし、私やニーアのこと、そしてハヤトが、ゴルジア首相の私兵のような立ち位置にいることなどを話しました、ただ側にいるだけなのに、グラースオルグの威圧というのはかなりの物でした
「タウロンもう辛そうだね、脂汗とか出てるし、ごめんね長々と話しちゃって、俺も任務があるからそろそろ行くよ」
「はい、スミマセン」
「いいですよ」
ハヤトはニッコリとほほ笑みます、ただそこでふと、疑問が浮かびました
近くにいるだけでこれだけの負担があるのに、ハヤトの部隊の人たちはどう対処しているのでしょうか?
「あの、ハヤト?」
「ん?」
「ハヤトの隊の人たちは?」
「俺一人ですけど」
「え‥‥、あのハヤトの任務の内容は?」
「さっきまでは、前の歪みの場所の再々調査、この後は西側の緩衝地帯付近の、村への駐留ですね」
「え? ひ、一人でそれをやっているんですか?」
「ええ、いつもそうですから、じゃぁそろそろ行きます、タウロンも怪我とかに気を付けて」
そう言ってハヤトは私の前から去っていきました。
ハヤトは正規に軍に所属しているわけではなく、ゴルジア首相の私兵扱いになっている、なのでハヤトが何をしているのかという情報は入ってこない、軍があまり動かないような仕事を、ゴルジア首相は引き受けていた。
「そんなの‥‥一人で出来るような任務じゃありませんよ‥‥」
タウロンはこの時初めて、ハヤトの置かれている状況を把握した、そして無理を言っても今所属する部隊に、ハヤトを受け入れてもらえるようにするべきだったと後悔した。




