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依頼人  作者: AIAMAAI
15/18

-16-

 夜明けの空に、有明の月が薄っすらと浮んでいる。

 東の空が、徐々に白みかけていく。

 日の出とともに太陽の光が大地を眩しく照らす。

 屋敷の正面玄関の前には、十台の高級車がズラーリと横付けして駐車されてあった。


 白衣にコック帽を被った数人のコック達が、一際高いコック帽を被った白衣姿のコック長代理の深冴が、眼の回るような忙しさでただただ只管寡黙にパーティー用の料理を作っていた。

 入れ替わり立ち代り執事の大橋やメイド服姿の家政婦達が、厨房に入ってきては料理をダイニングルームへと運んでいた。厨房の中は騒然としていた。

 ダイニングテーブルの上座に英雄が、その真向かいの下座の席には、志音が座っている。

 英雄の斜め横にはひふみが座り、向かい側には伊織と凛が並んでいる。凛の横には招待された伊織の三人の友人達が座っていた。

 瑰と美里と一成は、志音の斜め横の末席に並んで座っている。

 二十席の残りの椅子には、小奇麗に着飾った英雄の招待客達で埋まっていた。

 部屋を満席に埋め尽くした二十人は、ワイワイガヤガヤと賑やかに談笑したり雑談したりしていた。

「永承君とは」

 志音が訊いた。

「仕事仲間です」

 瑰が答えた。

「どんな仕事をしてるの?」

「依頼されればそれが仕事です」

「どんな依頼でも?」

「はい。と言いたいところですが。出来ない仕事もありますので、一応、我々が出来る範囲内であれば、どんな依頼の仕事でも」

「ここでの仕事のことは内密にお願いできる?」

「もちろんですわ」

 美里が、口元に笑みを湛えて言った。

「ありがとう」

「奥様もご存知なのですか?」

 一成が言うと、志音がコックンと頷いた。


 深冴は、大皿に載せたデザートに丸カバーで蓋をして、ワゴンを押して厨房を出て行った。


「ハッピィバースディ、ディア、伊織」

 誕生日の祝賀歌が唄われている中に、深冴がワゴンを押してやってきた。

「ハッピィバースディ、トゥ、ユー」

 歌が終わってすぐに深冴が、

「お坊ちゃま、お誕生日おめでとうございます。今日のバースディケーキは、趣向を凝らしてご用意させていただきました」

と、持ち手を握って丸カバーを取った。

「イギリスのクリスマスケーキ、プディングでございます。このプディングは蒸し上げる前に」

 生地に指輪やコイン、指貫などの小物を混ぜ込む儀式が行われる。この儀式は十二夜でケーキの中に護符を入れる習慣に由来しており、切り分けられたとき当たった小物を見て将来の運勢を占う。

「皆様の運勢を占う12個の誕生石が、このケーキの中に入っております」

 部屋の中にざわめきが起こった。

「どなたに当たるかは……。私にはもちろんわかりません。誕生石が当たった方はラッキー。当たらなかった方は……」

 がっくりと肩を落す、深冴。

「おいおい、脅かすなよ」

「当たるも八卦、当たらぬも八卦」

「占いなんて気にしない」

「出来れば当たりたい」

 と、皆が口々に言って笑った。

「それではお願いします」

 深冴が言うと、大橋が窓のカーテンを閉めて、部屋の明かりを消した。

 プディングにブランディをかけて火を点けた。

 仄かな灯火が暗い部屋の中を照らした。

 灯が消えて、深冴はケーキを人数分切り分けた。

 大橋と家政婦達が、小皿に載ったケーキを客の前に置いた。

 英雄がプディングを口にしたが何も入っていなかった。ひふみの中にも、伊織のも、そして、凛と志音のケーキにも誕生石は入っていなかった。

 フォークに載ったプディングの一欠けらを口に運び入れて噛んだ瞬間、

「あッ」

 美里が、声を漏らした。

「入ってたの?」

 志音が言った。

「はい」

 美里が言った。

「見せて」

 志音に言われて、美里は口の中から取り出した。

 指と指の間に挟まれた誕生石は、燃えるような真っ赤なルビーだった。

 そのルビーを見た志音の顔色が、変わった。

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