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依頼人  作者: AIAMAAI
11/18

-11-

 翌日の昼。

 昼食を済ませた志音が、ダイニングルームからホームにやってきて、階段を上っていった。

 少しして、ひふみが弱った足腰を庇うようにしてダイニングルームからやってきて、備え付けの住宅用エレベータの乗場操作パネルの上昇の矢印タグのボタンを押した。

 その後、瑰と美里と一成が、昼食を済ませてダイニングルームから出てきた。

 エレベータの箱に乗り込んでいるひふみの目前で、ドアが閉まった。

「エレベータか……」

「おばあさん専用のエレベータだぞ」

「永承は乗るなって言ってたが、俺達は客だ」

「電話したのか?」

 エレベータに行こうとしている瑰を制止するように、一成が言った。

「永承に」

「うん、昨夜遅くにな」

 立ち話をしている二人の背後に忍び寄ってくる、黒い人影。

「何か言ってたか?」

「通じなかったよ」

「徹夜で突貫作業をしてるんだな」

「だろうな」

 腕が伸びてきて、魔の手が美里の尻に触れようとしたその瞬間!

「いててて」

 目にも止まらぬ早業でその魔の手が掴まれ、捩じ上げられた。

「誰だ貴様!」

 英雄の息子・伊織が痛そうに顔を歪めて叫んだ。

「聞きたければ、先に名乗るんだな」

 と言って、伊織の背中で締め上げているその腕に、更に力を加えた。

「この家の主だ!」

「俺は客だ!」

 瑰が、怒鳴り返した。

 伊織が、黙視している一成と美里を睨みつけて、

「おい!貴様ら!こいつを何とかしろ!」

「俺達も客でな」

「何だとッ!」

「主なら客に対する礼儀を弁えろ!」

 と、瑰は突き飛ばすようにして伊織の腕を離した。

 前のめりによろめく、伊織。

 そこへ騒ぎを耳にした執事が、慌てたようにダイニングルームから飛び出してきて、

「お坊ちゃま!」

「何だこいつらは!」

 伊織が、痛む腕を摩りながら怖ろしい剣幕で怒鳴った。

「お帰りのご予定は、明日ではなかったのでございますか?」

「親父はッ?」

「外出なさっております」

「仕事かッ?」

「はい、さようでございます」

「昼は?」

「すぐにご用意いたします」

 伊織、感情を剥き出しに興奮状態でその場を立ち去り、ダイニングルームに飛び込んだ。

 執事が、その後を追って立ち去った。

 冷静沈着に二人を見送っている、瑰と一成と美里。

「庭でも散歩しましょう」

 そう言って、美里は開け放たれたままの正面玄関の扉から外へ出て行った。

 正面玄関の前に、ボディカラーがイエローのフェラーリ488GTBが駐車されてあった。

「お坊ちゃまの愛車のようね」

 美里が、フェラーリを舐めるように見回しながら言った。

「ターゲットは父親じゃなく」

「倅のようだな」

 同じように愛車を見回している瑰と一成が、言った。


 固定電話のベルがけたたましく鳴った。

 藍華が、洗い物をしていたキッチンから出てきて、電話の送受話器を手に取った。

「もしもし」

「祖母さん?俺」

 瑰からの電話だった。

「どうしたの?何かあったの?」

「永承は?」

「作業部屋で仕事をしてるけど」

「電話するように言って来て」

「ええ」

 と電話を切って、藍華は部屋を出て行った。

 廊下の壁に取り付けられたブラケットライトが、人の動きを感知して点灯した。

 その下を、藍華が通り過ぎていった。

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