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夜空に見えるのは青い地球  作者: 妃 大和


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30. 1位に追いつくぞ

 お嬢さん獣人を置いて走り抜こうとしたとき、ロン毛さんが何かにつまずいたのか前につんのめった。

 瞬発力だけは獣人に負けない私は思わず近寄りロン毛さんを受け止める。見た目のがたいの良さと違って意外と華奢でちょっとビックリ。地面に膝をつく前に間に合った。

 へへん、シェパードさんより早かったぞ。


「大丈夫?」《どこもケガしていないよね。》


 ニコッと笑いかける私。あ、私より年下っぽい。

 ちょっとビックリした目をしてロン毛さんは私を見上げる。


『あ、あの。ありがとうございます。』


 なぜか赤くなり私の目線から外れようとするロン毛さん。

 先を急ごうと走る出そうとしたら、ジャージの裾をロン毛さんに掴まれた。


『あの、私はファレン ダクスチェーンと申します。お名前を聞いたのに名乗らず先ほどは失礼しました。』


 私から話してもさっきはあまり反応が無かったが、今度は向こうからの語りかけ。ちょっと話をしてみれば、お父上からの情報となんか違う感たっぷりの私に警戒をしていて、名さえ名乗らなかったとのこと。はあ、様は深く関わりたくなかったと。それが今ので好感度アップして、警戒感が無くなったと。

 …なんかミケといい、急に親しくなるよね。言っちゃ悪いけど、単純かも。私には態度が豹変したとしか思えない。どんな情報が流れているんだか。信用していいのか不安は残るけど、こっちに知り合いが殆どいない現在の私には知り合いが出来るのは嬉しいことだ。

 ファレンさんが警戒をといたことで、もう1人のフワフワさんも私に名乗った。


『私はラチェ チワリャンネールです。先ほどは失礼いたしました。』


 にこやかなフワフワさんことラチェさん、彼女は単に人見知りと初めて会った人間に警戒していたようで。


 それにしても、ああ、名前が覚えられそうにない。皆して吃音だらけの名だし。

 それより、私は現在1位の獣人(ひと)のところに向かわなくては。

 あせる私に構わず従者の方まで名乗ろうとしている。何皆していきなり警戒といて自己紹介タイムになってんのよ。そんな余裕無いでしょ。名乗りをさせずに先に言う。


「じゃ、私今度こそ先に行くね。さっきは質問に答えてくれてありがとう。」


 手をバイバイを振って、更にブンブンと腕をふり足を大きく降り出して走り出す。地面を意識的に強く蹴る。おお、地球的感覚で思い切り蹴ると進行方向に跳ぶ感じで進むね。ただ、後でちょっと疲れるかも…という予感がする。

 うん、まだ足は上がる。きっと大丈夫。自己暗示をかけてと。


 ファレンさん達とラチェさん達は追ってこなかった。

 獣人が本気だせば十分私についてこられるはずだけど、やっぱお嬢さんで普段こんなに走ったりしていないってことかな?

 とっくに山道は終わり、街道に入っていた。コースは知らないけど、石畳をたどって行けば良いんだろうと思う。ただ石畳を思いっきり蹴っているとちょっと膝にくるんだよなあ。いくら地球製高性能運動靴を履いていても衝撃は足裏から伝わってくる。早いとこ、1位さんに追いつかなければ。どんな()か見極めなくちゃね。

 石畳の両脇には畑が広がっているが家は見えない。沿道で応援する人もいないんだよね。ここってすっごい田舎なのかな。旗とか持って振っている人がいれば頑張れそうなんだけど。


 ひたすら遠くまで続く石畳の先に、小さく獣人(ひと)の姿が見えた。

 そうだ。あそこに行かなくては!

 かなり頑張って走れば追いつけるだろう。私、よくやるよな。ここまでこんなに頑張っちゃって、いっそ1位狙っても良いんじゃない。乾いた笑いが顔に貼り付く。

 宇佐見君のことは好きだけど、彼から恋愛的感情が向けられていないことを分かっている状態で、義務からだけのフィアンセにはなりたくない気持ちがある。そりゃ、フィアンセってポジションは魅力的なんだけど。


 色々考えながらも手足はガンガン走っている。

 地球では考えられない速さだな。ホント、こんなに運動できる自分にビックリ。

 この速さでずっと走り続けるのは無理って言うのは自分で分かっている。1位に会って彼に相応しいと納得できるまでの我慢だよね。


 1位のお嬢さんの後ろ姿が見えてきた。100メートルほど先だ。

 肩先で切りそろえられた白灰色の髪。光りの加減で銀色に見える。あずき色の服はもんぺの様な形だ。腰の部分に大きなリボンが付いているのがお嬢さんぽい。おお、この人もお嬢さん感が溢れている。

 どんな顔? 声?

 期待にスピードが思わず上がる。おいおい私、短距離走じゃないぞ。それでも勝手に手足はスピードを上げて近づいて行く。

さっきのファレンさんとラチェさんで並んで走るコンプレックスは少し無くなった。それより好奇心が勝るのよ。


 肩で息をして、1位さんの横に並ぶ。あー、汗が眼に入る。(ーー;)

 反対の横にはレースの実況をするお兄さんがバイクに乗って走っているではないか。

 あ、絶壁登りの時に横でわめいていた青年だ。どんぶり型のヘルメットにアライグマみたいな顔…忘れられる訳が無い。毛なのか眼の周りのクマなのか、ちゃんと顔を見てみたいものだ。


 1位さん、ハッハッと規則正しい呼吸で前を見つめてしっかり走っている。フォームも綺麗。

 汗で額についている前髪がセクシーだわ。うん、凜としたキレイ系。耳もしっぽも見えない人型。でも、人間ではあり得ない琥珀色の光彩にネコのようにハッキリと見える瞳孔。眼だけネコ科ヒョウ属だね。イメージするならホワイトタイガーかな。優雅で威厳があってセクシー…見た目なら文句の付けようが無いお嬢さんだ。


 ここで気後れしちゃいられない。


「こんにちは。私は霧島 透子。貴女(あなた)が1位さん?」


 ちょっと息があがりつつ、笑顔を向けて敵では無いアピールしながら話しかけてみましたよ。







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