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夜空に見えるのは青い地球  作者: 妃 大和


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28. 次はマラソンです

 ヘルメットとプロテクターを外し、座り込んで周りに目をやる。

 山の頂上だってのに、公園みたいに整備された広場になっている。チェックポイントのゲート以外に椅子が幾つも並べられた場所があるのが他と違うところ。よく見れば、屋台みたいなのもある。

 単純に応援に来たって感じの獣人(ひと)もウロウロしている。

 レースに関係なくここに来ていれば観光だよなと思う。遠くまで見渡せるし、ソヨソヨと吹く風は気持ちいい。

 殺風景な断崖絶壁なんてどこにあるの?って景色だ。

 よく来たな私。


 穏やかな景色の中、私は「近寄るな」的オーラでも出していたのか、近寄ってくる獣人はいない。

 身体が疲れているとかは無いんだけど、無性に脳みそが気怠い。簡単に言えば寝ちゃいそう。

 消耗した感がハンパない。

 さっき宇佐見君の姿を見たと思ったけど見つからないや。残念。


 ちょっとボーッとして周りを見ていたら、慌ただしくバイクを置いて走り出そうとしている人達を見つけてしまった。

 …先に出発してくれていたら、諦めてゆっくり休めたのに。幸か不幸か絶壁を駆け上がってきた成果が出ていた。


「読み通り、先頭集団に追いついちゃったか。シュア君のお茶飲みたかったな。」


 シュア君も頂上到着したみたいだけどまだ雑事に追われているのか私の所には来ていない。

 ランに出発する人達に遅れを取るわけにはいかない。休憩時間がまだ足らないけど…


「よいしょっと。」

 バイクの荷物入れから水を取り出しゴクリと飲む。ちょっと考えて藤色の風呂敷のような布で水筒を包み背中に背負う。緑色の学年カラーのジャージと組み合わさると目立つ色合わせだなと思う。

 足首をグルグルと回し、膝の屈伸して、首も回してと。その場で腿上げ。

 うん、いける。足は軽い。


「さて、行きますか。」


 バイクを頂上に残して、私は一人で走り出した。

 宇佐見君の婚約者決定レース、最後のマラソン10キロの始まりです。

 ごめん、シュア君先に行くね。




 ゲートを通り抜けてマラソンに出発した獣人ペア2組に少し遅れて私もゲートを通り抜ける。

 私の前には3組居るはず。トップ通過の人はもっと先に出発したのか…

 岩ばかりの断崖絶壁の場所とは違い、今走っている道の周りには緑の木々が見える。普通の山道だ。はげ山じゃなかったんだ。

 見える距離にいる獣人さん達、下りのせいもあって結構なスピード出てますね。


 お嬢さんの一人は、ベージュのフワフワした肩下の髪、とんがった長めの耳が見える。しっぽはベージュのフサフサ系。オレンジ色のシンプルな服を着ていて後ろ姿は可愛い。犬か?

 もう一人は焦げ茶の柔らかそうな腰までの長い髪を青いリボンで結び、耳としっぽは見えない。人型獣人かな? 同じく青いつなぎの様な服に地球製らしきスニーカー。地球通か?

 どちらにも隙のなさそうな大柄な獣人が付き添っている。フワフワさんにはコリー犬みたいな人が。ロン毛さんにはシェパード犬みたいな人が。


 近くまで行かないとどんなお嬢さんか知ることは出来ないから近づかなくちゃ。

 話できるかな。

 それとも護衛さんに追い払われるかな。

 2組で固まって走っているから、私が行ってもそう邪険にはされないだろう。まあ、かといって仲が良いようにも見えないけどね。


 頑張って1メートルくらい近くまで寄ってみた。近づく私を避けようと距離を取られなかったのは助かった。

 うん、足は上がる。まだ走れる。

 付け焼き刃とは思ったけど、パワーリストつけて暇みて走った効果はそれなりに出ているみたい。努力が報われているのが分かるのは素直に嬉しい。 

 フワフワさんは私に気が付いて後ろを振り向き、目が合うとニコッとしてくれた。いい獣人(ひと)っぽい。

 ロン毛さんはひたすら前見て一生懸命手足を動かしている真面目さんだ。

 護衛さんは2人共「こいつなんだ?」って顔して私をチラ見してた。


 護衛もなしで、お世辞にもキレイとはいえないフォームの私は不審者だろうな。まして人間だし。

 今まで気が付かなかったけど、こっちのお嬢さん達も護衛さんも走るフォームが綺麗なんだよねえ。無駄の無い洗練された動きとはこのことか!って感じ。

 シュア君や宇佐見君もきっとそうだったんだろうけど、余裕が私に無かったのか気が付かなかったなあ。

 今も余裕があるわけで無いのだけど、お嬢様オーラがそう見せるのか、ホント綺麗で目がひきよせられるわあ。

 そんなお嬢さんが自らの身体で一生懸命走る。良いね。フィアンセ決定レースにマラソン組み込んだ人エライ!


 お嬢さん達には目が引き寄せられるけど、山のクネクネ道を曲がる時にはちょっと自分の進行方向と足下に注意を向けないと危ない危ない。

 遠心力と回転速度を更に上げようとする足に待ったをかけなくては転んでしまう。

 転んだらどう考えても大けがになるだろうな。

 そんなカーブも私以外は綺麗なフォームでサラッと通り過ぎていた。


 ううっ、なんか獣人ずるい。

 重力の恩恵でかなり有利になっているはずの私なのに思わずつぶやいてしまった。


 ◇◇◇


「練さま、一人に肩入れし過ぎてはいけません。」

「肩入れしているわけじゃない。純粋に絶壁を登ってきた奴が居るって言うから見に行っただけだ。あいつ、やるな。」

「近寄っちゃダメですよ。ここ貴賓席で威厳を持って座って居てください。」

「分かっているさ。ちっ、シュアを置いてきたな。だれか飲み物くらい渡してやればいいのに。…ああ、もう出発するのか? 何考えているんだ。ぶっ倒れるぞ。」

「練さま、にこやかにしてください。参加者全員がここのチェックを受ければ私達も移動出来ますから。」

「ラジェール、お前も顔怖いぞ。」

なんだかんだと心配している二人でした。


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