26. 第2チェックポイントで昼食を
人助けをしたのに、すっきりしない気分のままバイクを飛ばすこと20分あまり。その間、シュア君と私はほぼ無言だった。
そして、このジャングル的森の終わりが見えてきた。終わりの向こうには明るい光が見える。
ひどいデコボコ道では思念貴石に思念パワーを通して空中を走り、すっかり地面と空中の乗り分けが上手くなったよ。実践あるのみとはよく言ったもんだわ。
シュア君、私の順で森から外へ飛び出す。思わず両手を離してバンザイポーズをしてしまった。おっと、危ない危ない。慌てて両手をハンドルへと戻す。
右手前方に再びゲートのようなものが見える。チェックポイントだな。
スピードは落とさず、障害物も無いので、むしろバイクを飛ばしチェックポイントへ。そして大きく曲がって急ブレーキ。
へへん、こんな芸当しても大丈夫なくらいにはバイク扱えるんですよ。ただ地面を走るのが苦手ってだけで。
メットを外し、テントのようなところに小走りで向かう。名前を馬系獣人さんに伝える。まさに馬面、長い長い顔が…歯をむき出して笑うと怖いです。かみつかれたら痛そうです。思わず俯いてしまった。
ここではバイクの整備ができるので、シュア君とバイクを整備場らしき場所へ運ぶ。自分で整備するのかな? やり方分かんないけど。
シュア君がキョロキョロしているけど、誰か知り合いを探しているのかな。
『よう、お二人さん。』
声のした方に振り向けば、油染みのついたつなぎを着たジョンさんが片手を挙げて立っていました。
『大サービスだ。国一番の俺が整備してやるよ。その間に飯食ってろ。そこにバイク置け。』
ジョンさんは顎をクイッとして場所を示す。
いつの間にここに来たの? 王都のスタート前に会ったよね。私の頭は疑問でいっぱい。
「僕たちの通ってきたルートはだいぶクネクネと曲がっているんだよ。最短距離で移動してくればずっと短い時間で来られるよ。」
ジョンさんがバイクをいじっているのがよく見える場所をシュア君は昼食の場所に決めたようだ。
話をしつつ、てきぱきと身体を動かして昼食の準備をしていく。今回、お湯は沸かさず、チェックポイントに常備してあるのをもらってくるそうだ。ついでに情報も仕入れてくるって。
その間に私は敷物の上にお弁当らしきものを広げていく。おにぎり、テンション上がるね! 唐揚げのようなのもある。シュリさんの心遣いがうれしい。肉パイはお屋敷のコックさんが作ったのかな。どれも美味しそう。
準備が出来て、私は敷物の上で足を伸ばしてしばし休憩です。
「お待たせ。」
小走りでシュア君が戻ってくる。
その姿にゆっくり食事はできない感じだなとふと思う。
「食べながら聞いて。僕達の前にはあとレース参加者が3組いる。ちょっとさっきので時間を取ってしまったから、一番近い参加者でも30分前にここを出発しているらしい。後続も続々とチェックポイント入りしているよ。」
淡々とシュア君は事実のみを私に伝える。表情を変えないことで時間をとる原因となったミケに対し怒っていることが伝わってくる。
私は黙々とおにぎりをほおばりながらうなずく。シュア君はお茶をいれ、オレンジのようなフルーツをナイフで切り分ける。
「それじゃ、ジョンさんの整備が終わり次第出発だね。さあ、どんどん食べなくちゃ。」
「ゆっくり食べられなくてごめんね。食事の片付けは僕がするから、少しでも霧島さんは身体を休めることを考えてね。」
そうそう、まだバイク乗るから思念貴石使うんだよな。地面走る時もブースターになるし。リラックスしなくちゃ。
のんびりとはいかなくても、しっかり昼食を食べ終わり、私はジョンさんの整備を横に座って眺めている。
スパナを持ち、機械油のにおいをまとうジョンさん、素敵です。肉食獣の真剣な目がちょっと怖いけど。
『おお、そうだ。皇子から預かってきたぞ。おやつだとさ。』
紙袋をポンと投げ渡される。袋の中を覗けばそこには受験生が愛するキット○ットのチョコレートの大袋が…。
…きっと勝つ?…だっけ。
宇佐見君、私に勝って欲しいのかな? 私、勝った方がいいのかな?
今のところ、私の目標であったミケに勝つことはかなっている。あとは優勝者が宇佐見君に相応しいと判断するだけ。判断するには先頭集団に私も食い込まないことには判断できないだろう。
ちょっと無理してでも前に行かなくては。
『整備終わりだ。ん? 難しい顔してるな。レースを楽しめよ。』
そう言って、ジョンさんは油まみれの手袋を外した手で、私の頭をくしゃくしゃになでる。ジョンさんの犬歯むきだしの笑顔が良い人過ぎて眩しい。
『思念貴石追加しておいた。飛ばせるぞ。ケガすんなよ。』
私も笑いかえす。苦笑いに見えなければ良いけどね。
そして私はシュア君に伝えた。「先頭に追いつきたい。」と。
シュア君と並んでゲートを出る。
今度は山に行くらしい。山の入り口まではシュア君先頭で空中を最短距離で飛ばしていく。
思念貴石追加のせいか、暴れ牛みたいな乗り心地なんですけど(泣)
120キロ出しているのに物足らないとバイクに言われているようで。まだ余裕でスピードアップ出来そうだわ。そう思っていたら、シュア君がスピードを上げた。追いかける。ひえ、140キロ出ているよ。もう振り落とされないようにバイクにしがみつくしかない。渾身の力でハンドルを握る。
前方に山が見えてきた。
はあ?
山の形していないよ。見えるところ、絶壁なんですけど。絶壁部分に木なんて生えていない。
例えるなら巨大なプリンの形だ。若干頂上が山裾より幅が狭い。
山の姿に圧倒されてスピードが落ちた私の横にシュア君が並ぶ。
「頂上が次のチェックポイントだよ。練さまもいる。頂上までがバイクランで、その後の下りからマラソンだよ。山裾からグルグルとバイクで登って行くからね。」
どんどん山に近づいていく。
山裾から絶壁を見上げて、思いついたことがある。それをしなければ先頭には追いつけない。後はそれをする度胸が私にあるかどうか。それをする能力を持っているかだけ。
「シュア君、止まって。」
私は覚悟を決めた。
空中から3組抜いて、ミケ抜いて、いつのまにかジャングルで1組抜いていたので、残り3組なんです。




