25. ミケ助けは命がけ
血出ます。切ります。襲われます。
ミケ、あんたは疫病神だったんだね。
ああ。そのツインテールは痛い象徴だったのか…でも人として見捨てるのは無しだよね。
わずかな時間に色々な思いが私の心の中を過ぎていった。
その間にシュア君は私の手を引き、ミケの護衛と並び野犬の群れに向かって剣を振りかざす。私達を襲おうとする野犬に対峙して護衛の2人は剣を切りつける。銀色の閃光と共に野犬からは鮮血が飛び散った。
しかし、悲しいかな切りつけられた野犬が撤退する前にその血の臭いで他の野犬が来るという有様だ。
「○●××!! zYu×▲!!」 《こっち来ないで!あっちに行って!》
あー、ミケあんた、騒がしすぎ。ちょこちょこ動きすぎ。あんたの護衛さんがあんたを守って攻撃ポジションを確立出来ないじゃん。
思念パワーで寄せ付けないようにするなら、そんなイヤンイヤン的言い方じゃ効果ないんじゃね? まさにニャーニャーにしか聞こえない。迫力ねえ。
あー、私、冷静だわ。優等生根性発揮してます。
血走った目をした一頭の野犬と目が合った。
恐怖より嫌悪感が勝って思わず叫ぶ。手をブンと振って。拒否の気持ちをぶつける。
「こっち来るんじゃねえ!!」
あ、使った事無い言葉言っちゃった。
野犬の身体がビクッとして、何かがぶつかったようにくの字に曲がりながら膝が折れたように地面に伏せる。あり得ない格好していないか? 泡吹き出したし…私のせい?
剣をふりながらシュア君が「ナイスです。」と私に声をかける。
今ので思念パワーの使い方、合っていたみたい。
何か人間ばなれしてないか?私。
シュア君とミケの護衛さんが野犬の数を減らして、私もたまに野犬にダメージを与える。怖いけど無我夢中。思念をぶつけるだけでも結構疲れるんだね。
身の危険は少し減ったけど疲労はたまってくるし、レースの途中でこんなに疲れていいのかあ?
「そこに転がっている肉って、野犬を引き寄せてない?」
『そうよ、獣をおびき寄せるエサですもの。』
「×××…」
シュア君と目があって、会話してしまった。
自業自得じゃね。
帰るか。
野犬の隙を見て、私とシュア君はそれぞれ肉の塊に近寄り、フンと持ち上げて木々の奥に向かってブン投げた。うわー、手がヌメヌメする。臭いよお。
残っていた野犬が数頭ブン投げた肉の方向へ走っていく。
めでたしめでたし。
な訳あるかあ!
腕組んでミケをにらみ付ける。
「エサまいて危険になるなんて何考えているの?」
『危険な獣をエサで集めて、食べている隙に安全に森を抜ける作戦でしたのよ。私より後の方々は獣がいて進むのが遅くなるという効果まで考えてましたのに。』
「こんなに獣集めちゃうエサ用意した時点でダメでしょ。自分だけ安全で他のひとは危険てダメでしょ。護衛が守ろうとしている時に邪魔しちゃダメでしょ。皇子が用意したレースで誰かが大けがするようなことあったら悲しむよ。悲しませちゃダメだよ。」
ぜいぜい、あー、一気に言って疲れた。こいつ脳みその程度もネコ並か。本気の説教はこいつに通じたのか?
はあ、と言っておもむろに両手をミケのスカートで拭く。
「助けたお礼ね。」
シュア君もうなずいて私と同様にミケのドレスのスカートで手を拭く。
固まるミケ。なんか顔が赤いじゃん。
ミケから漂う異臭。あー、離れよっと。
『こんなことで私を許してくださるのですね。こんなに心配して叱ってくれるだなんて…』
無視無視。
シュア君と二人、ミケの護衛に会釈してバイクにまたがる。
野犬と戦った今、もう怖い生き物はない。何が道に出てきても振り切る自信あるぞ。さあ、再スタート!!
Booon!!!!と走り出した後ろでミケの叫び声が聞こえる。
「○u×●○-、♡♥▲ee。」《お姉さま-、待ってえ。》
無視、無視。さあ、余計な時間取っちゃった。とばさなくちゃ。
幸い今度の道はバイクで十分走れる。森を抜けるまであと30分も無いって。
ドクドクしい色の二の腕サイズの蛇…轢いちゃえ。
サルみたいなのが枝からぶら下がってる…「あっち行け。」と叫べば地面に落ちる。
あんな怖い野犬見た後は、もう動じません。
あー、ちゃんと手が洗いたい。今思うのはそれだけ。森抜けたらお昼ご飯ってシュア君言っていたよね。食べる時間あるのかな。それが心配。
婚約者決定レース、このコース考えたやつに文句言ってやるぞと決意した。




